山形県によると、2025年のサクランボの収穫量は平年の7~8割程度と、大幅に少なくなることが予想されている。しかし佐藤錦の収穫を始めた生産者は、「例年の2割しか採れない」と厳しい現状を口にしている。

脱サラしてサクランボ農家に転身し4年
山形・山辺町にあるお天道農園。
6月13日からサクランボ・佐藤錦の収穫が始まるということで、生産者に話を聞きに行った。

代表の安孫子陽平さん(33)は、かつて祖父母がサクランボ農家をしていたことから5年前に脱サラし、サクランボ農家に転身して4年目。
現在、サクランボ・佐藤錦や紅秀峰など、計80本のサクランボを育てている。

安孫子さんは「2025年の不作は、これまで経験がないほどにひどい」と言う。
特に被害が大きいのが佐藤錦。佐藤錦の実はかなり少なく、平年の2~3割かそれ以下という状態。

約600キロの収穫が120キロと2割程度
画面左が、同じ園地にある紅秀峰。
通常、サクランボはひと塊でたくさんの実をつけるが、画面右の佐藤錦は塊になれず1つしか実がついていない。

平年なら園全体で約600キロの収穫が見込める佐藤錦だが、2025年は120キロ、平年のわずか2割程度。
これは春先の天候不順や強風で、佐藤錦の実がなるのに必要な他品種のサクランボからのハチによる受粉がうまく進まなかったことが大きな要因。

安孫子さんによると、「佐藤錦に受粉樹となる紅秀峰の花粉を人の手で付ける作業がある。それを6回、対策をしたけど実がならない。とにかく受粉樹を多く植えることが一番の対策になる」と。
しかし、人工授粉などの対策を十分に行っても、佐藤錦の不作を防ぐことはできなかった。

対策をしても不安がぬぐえない高温障害
さらに安孫子さんの頭を悩ませているのが、15日の週から収穫を迎える紅秀峰の収穫期と重なる「異例の高温」。
お天道農園代表・安孫子陽平さん:
17日(火)から33℃、33℃、32℃。この状態だと実が熟する前に高温で柔らかくなったり、表面が焼けたりする果実がでる可能性が高い。

安孫子さんの園地では、暑さをさけるため雨除けビニールに直射日光を遮るペンキを塗ったり、スプリンクラーで水をまいたりと高温対策を行う予定だが、ここ数年、相次ぐ高温障害への不安がぬぐえない。

対策をすれば大丈夫なのかどうか聞いてみると、安孫子さんは「わかりません。大丈夫になるかもしれないし、それでもダメになるかもしれない。そこはやれることはやってあとは何とかするしかない」と話してくれた。
自ら望んで農業の世界に飛びこんだ安孫子さんでも、その大変さに心が折れそうになることもあるという。

お天道農園代表・安孫子陽平さん:
(Q.やめたくなることは?)あります。ずっと赤字、3年間栽培してきてずっと赤字。これがサクランボじゃなかったらやめている。木も全部切ってほかのものに変えている。
自分の祖父母がやってきたものであったり、友だちに祖父のサクランボを食べてもらって「すっごくおいしかった」と言ってもらえたり、すごくうれしくて簡単に諦めたくない。なるべくできることは何でもして続けたい・残したいと思っている。

県は15日からの週の気温が非常に高く、サクランボに高温障害が発生するおそれがあるとして、緊急に注意をうながした。
暑さに弱い品種や日当たりのよい部位の実を優先的に収穫するようすすめている。

(さくらんぼテレビ)