PBL=プロジェクト型学習の現場を取材
来年から文科省肝いりの教育大改革が始まる。目指すのは、「主体的・対話的な深い学び」だ。今後日本の学校は、先生から生徒へ一方通行の授業から脱皮し、生徒が主体的に考えを深めていくようになる。
この改革に向けて、いま注目されているのが「PBL=プロジェクト型学習」だ。生徒が自ら社会課題を見つけ、その解決方法を探るPBLは、欧米の学校教育で積極的に取り入れられており、若き起業家を輩出する原動力にもなっている。では日本のPBLの現状はどうか?小学生向けにPBLを英語で行っている週末スクールを取材した。
面白い教科書を自ら作る

「Let’s create a fun English textbook!(さあ、面白い英語の教科書を作りましょう)」
都内・中目黒で行われている「ドットスクール」では、子どもたちが社会課題の解決策を探す授業が行われている。2017年10月に開校し、現在小学校1年生から5年生の子どもが通っているが、日常会話以上の英語能力が求められるため帰国子女が多い。
取材した20日、子どもたちが見つけた社会課題は、「日本の学校の教科書はつまらない」。そしてこの課題解決のために選んだのは、「面白い英語の教科書を作る」ことだった。
市場リサーチからビジネスプラン策定まで

子どもたちは教科書を作るのにあたって、まず図書館に行き、どんな本が置かれているのか、価格設定はどのくらいなのかといった「市場リサーチ」を行った。そして、リサーチ結果をもとに商品の収益性など「ビジネスプラン」を策定。「製品デザイン」を行って、「販売戦略」を練り、最終的に製本したものを保護者に「プレゼンテーション」する。
こう書くと物々しい感じがするが、当日の授業では子どもたちが楽しそうに、教科書に登場させるキャラクターのイメージづくりをしていた。
起業家精神を養う

この授業では、小学生のうちからアントレプレナーシップ=起業家精神を養うことを目指している。運営する教育ベンチャー「セラン」代表の樋口亜希さんによると、「授業はスタッフが準備しても、子どもたちの発案で内容をどんどん変えていく」のだそうだ。

また、このスクールは、「グローバルコース」と「マネーコース」に分かれていて、「グローバルコース」では人権や貧困など国際的な時事問題を扱い、「マネーコース」では金融教育を行っている。金融教育ではフィンテック企業と連携し、まずは子どもたちが紙幣に親しむために、その紙幣はどの国のものなのか?紙幣の肖像は誰なのか?通貨の単位は?といったクイズも取り入れている。今回の授業は、「マネーコースの発展版」(樋口さん)だ。
コミュニティーのボーダレスが必要

こうした教育を小学生に向けて行うことには、まだ早いのではと感じる保護者も多い。
しかし、こうした懸念の声に樋口さんは、「コミュニティのボーダレスが必要」だと言う。「いま日本の学びのコミュニティでは子どもと大人に分かれていて、子どもが学ぶのは国語算数理科社会、大人になって初めて人権問題や国際問題を学んでいます。しかし私たちは、この境界線は要らないと思っています」
日本の学校教育では人権や難民など国際問題について触れる機会が少ない。そのため海外留学をした日本人学生からは、「他国の学生に比べて国際問題を語れず、とても悔しい思いをした」という声をよく聞く。
「貧困や人権問題など子どもにとって難しい概念は、子どもが分かる言葉で説明すればいいのです。そうすれば子どもにもきちんと伝わるということが、このスクールを開始して証明できました」(樋口さん)
子どもたちが難しい課題にも自然に入れるよう、ドットスクールでは、「学びと遊びのボーダレス」にも取り組んでいる。「最近はキッザニアのように、遊びと勉強が組み込まれるものがあります。私たちも子どもが知らず知らずのうちに学んでいるような環境を作りたいと思っています」
「受験戦争が障壁」を乗り越える

来年の改革に向け、教育現場ではPBLへの期待感が広がっている。しかしPBLの普及にとって、これまで最大の障壁となってきたのは「受験勉強」だ。ドットスクールでも、小学校4,5年生になると中学校受験のために徐々に遠ざかる子どもが多いという。
今回の教育改革では入学試験が見直され、記憶力偏重から課題解決力重視に変わる。つまり穴埋め試験が減って小論文や面接、AO入試が増える。欧米に比する人材を育てるスタートラインに、日本の教育はやっと立つことになる。

