住民の移動手段に課題を抱える下蒲刈島。来月から始まる県内初のマイカーを活用した公共ライドシェアを取材しました。

呉市の南東に位置し安芸灘大橋で本州と繋がる下蒲刈島…。
人口1000人あまりの島でいま”県内初”の取り組みが行われようとしています。

【県公共交通政策課・中和恵一 主任】
「一般ドライバー、自家用車、運賃、この3つがキーワードになります。できるとき、できる範囲で支え合うという考え方で仕組みを作った」

下蒲刈島は県内でも少子高齢化が特に進んでいる地域で、人口は、30年前と比べておよそ30%減少し、平均年齢も30年でおよそ17歳あがり今年3月時点で63.2歳となっています。
また島内では、生活バスが走っているもののダイヤや停留所の数が限られ移動手段の確保が喫緊の課題です。

【参加した住民】
「人情的に縦横の繋がりができているから金をもらわずに連れて行ってあげますという人も多いんですよ」
Q:ちょっと乗せてってもらえないかとか声をかけられたことは?
「大いにあります。やはり病院とか郵便局とか市民センターとか、知った人ばっかりだから…だけど事故があったら大変だと思うから…」

近所の助け合いで日々の生活を送る住民たち…。
そうした実情をより持続可能なものにしていくため、県が主体となって来月からはじめるのがマイカーを使った公共ライドシェア、「ノッカル下蒲刈」です。

まさにマイカー移動する住民の車にお金を払って”乗っかる”仕組みで、利用したい日の前日までに電話かLINEで乗車場所と時間を予約し、料金は1人片道300円を事前に購入したチケットで支払います。

タクシーのようにどこでもいけるわけではなく、乗り降りする場所は既存のバス停に加えて事前アンケートなどから決めた「島内」50か所。バスが入れない細い道もカバーできるのが大きなメリットの1つです。

また、ドライバーとなる住民は「登録制」で基本的に80歳以下であることやスマートフォンを持っていることなどが条件。事前に講習を受け、運行当日にはアルコールチェックも行います。

運賃のうちの100円が報酬で、万が一の事故には専用保険も適用されます。

【住民女性】
「できたらいいですよね。足がないことはすごい心配ですからね」

一方で、利用希望が多くてもドライバーをする住民がいないと成り立たない仕組みでどれほど確保できるかがカギとなります。

【県公共交通政策課・水本全彦課長】
「まずはしっかりと町内のみなさんの移動を確保していく。そこで得られた成果や知見をほかの県内市町の地域に波及させていきたい」

試験運行は来月5日から来年1月末までで運賃や仕組みなど本格導入に向けた課題を探ります。

■スタジオ

公共交通だけではなかなかこうカバーしきれない範囲を、助け合いというところの視点、新しいですね。

【コメンテーター:元カープ・山内泰幸さん】
そうですね。隣近所ですごく知り合いの人に「乗せてってくれないか」ということが大きいでしょうけれども、そうじゃない方も多いでしょうから、バス停まで行くのに時間がかかる人というのは、「ノッカル」を利用するのはいいかもしれないですね。

当然、高齢化も進んでいく中で、ますます例えば自主免許の自主返納の話もありましたし、いかに交通手段を確保するかというところは、下蒲刈島だけに限った話ではなさそうですね。

【コメンテーター:JICA中国・新川美佐絵さん】
そうですね、ちょっと表現が合ってるかどうか分からないんですけど、日本だと、とにかく周りに迷惑をかけないという暮らし方になると思うんですけど、アジアとかアフリカとかだとみんながちょっとずつ頼りながら社会をつくっていくみたいな、頼るのが当たり前みたいなところがあるんですよね。だから、こういった小さなコミュニティーだからこそ、その支え合いで地域を生かしていく、ひとつの絆の復活というところにもつながるのかなと思います。

そうですね、それから個人的にいいなって思ったのは、この助け合いにこうがんじがらめになるんじゃなくて「できるときできる範囲で支え合う」という形を考えたということで、この言葉というはすごくすてきだなというふうに感じました。

テレビ新広島
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