G7が日本時間の17日、開幕します。
開催国のカナダは今、トランプ政権と関係が険悪になっていますが、その原因の1つがアメリカへの違法薬物の流入です。

北米最大とも呼ばれるカナダの薬物汚染の現場を取材すると、その深刻な実態が見えてきました。

カナダ西部の都市・バンクーバー。
比較的治安が良く、大勢の観光客も訪れる北米有数の大都市です。

その中心部から車で10分ほどの場所にあるダウンタウン・イーストサイド地区へ向かうと、街の雰囲気が急に一変していきます。

路上で前かがみになり動かない男性に、座り込み、パイプのようなものを吸い込む人。
路上に倒れ込んだまま動けなくなってしまっている人たちもいて、街の至る所には使用済みの注射器が転がっています。

イーストサイド地区は、“北米最大の麻薬汚染地域”と呼ばれるエリア。
約5000人の薬物中毒者が生活していると言われています。

住民は「人が死んでいる。路上では何一つまともなことが起きていない」「私はフェンタニルを吸っています。私は悪い人間ではありません。ここに来てから人生は進歩しかしていません」などと話します。

こうした人たちが主に使用しているとされるのが、ヘロインの50倍作用するともいわれる合成麻薬・フェンタニルです。

2016年以降の10年間で、5万人以上が薬物の過剰摂取で死亡しているカナダ。
特にこの地区では、フェンタニルの流通とともに、一気に中毒者が増加しました。

こうした現状に怒り心頭なのが、アメリカのトランプ大統領です。

トランプ大統領:
カナダは非常に悪質な違反国で、大勢の人々がアメリカに入国し、フェンタニルも流入している。

トランプ氏は、フェンタニルの原料が中国からカナダを経由してアメリカに持ち込まれていると強く非難しています。

問題視される薬物汚染の対策としてカナダ政府が取り入れたのが、薬物使用者の非犯罪化などの措置。

薬物使用を完全にやめさせるのではなく、健康や社会的な被害を最小限に抑えることを目的とした「ハーム・リダクション」と呼ばれる政策です。

この政策の一環として、州政府は、監視下であれば自宅などでも少量の薬物を使用することを認めています。

そのため、街には違法薬物でも合法的に摂取できる、自治体による施設もできています。
FNNはこの1つに、海外メディアとして初めて取材を許可されました。

監督付き薬物使用サービス セーフ・ポイントのギブソン マネージャー:
利用者は手洗いを行い、ブースの一つに案内されます。ブースは1から7まで番号が振られていて、利用者はそのブースに座ります。

8年前に国の認可を受けたこの施設。
薬物中毒者が、看護師などの監視のもとで違法薬物などを摂取できる場所を提供しています。

薬物を摂取できるブースには清潔な空気が常に循環していて、新品の注射器なども用意されています。

設置には1000万円以上の費用がかかったといいます。

監督付き薬物使用サービス セーフ・ポイントのギブソン マネージャー:
このようなサービスは、人々が薬物の使用を監視できる場所であり、規制されていない薬物による死亡を減らす重要な手段の一つです。

また、薬物中毒者などの回復支援活動をしている別の施設では、現在、1日100人近くの薬物中毒者がケアを受けています。

バンクーバー地域 薬物使用者ネットワーク・ハーレーさん:
フェンタニルが初めて登場したとき、私たちは対抗する手段がありませんでした。

ここでは、過剰摂取を防ぐため「バディシステム」と呼ばれる対策を取り入れました。
薬物を摂取する際に2人組になり、過剰摂取に陥らないよう、お互いが見守ります。

それでも過剰摂取した人が出た場合には、訓練を受けたスタッフが医薬品などを投与することもあるといいます。

監督付き薬物使用サービス セーフ・ポイントのギブソン マネージャー:
3本の容器があります。3本の注射器も付属しています。万一の場合に備えて、酸素タンクもご用意しています。

こうした薬物使用の非犯罪化政策は、かつては一定の効果をもたらしました。

しかし、フェンタニルなどの強力な違法薬物の登場で、公共の場での使用増加や治安悪化への懸念が高まり、政策の見直しを求める声が相次いでいます。

元警察官で、薬物対策を担当していたドゥセット氏は、薬物使用を止めなければ問題は解決しないと政府を批判します。

カナダ薬物防止ネットワーク・ドゥセット会長:
唯一の解決策は薬物を未然に防ぐか、使用後に治療を受けて薬物から離脱させることです。薬物使用を容易にするという考え方は、ばかげているとしか言いようがありません。

かつてない強力な違法薬物にどう向き合うか。
カナダでは試行錯誤が続いています。

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