小泉農水相が16日午後4時ごろ、米の重要な指標について、大きな転換点となる決定を表明しました。
小泉農水相：
農水省として毎年、米の出来不出来を示す指標として約70年前から毎年秋に実施してきたコメの作況指数を廃止することにした。
15日、米の生産者らと意見交換を行った小泉農水相。
小泉農水相：
生産者の皆さんからしても、作況指数とかって実感は違いますか？
生産者：
違います。違います。
この場でも、生産者らから米の収穫量の調査やその年の米の出来具合を示す作況指数が実態と大きく異なると指摘されました。
さらに、「サンプル調査の限界」や「調査方法が古いのではないか」という声も。
また、収穫量の調査も問題点が指摘されています。
収穫量の算定に使う米粒の大きさの基準。
多くの農家が基準にしているのは1.8mmから1.9mmです。
一方、農水省の調査では1.7mmで選別を行っています。
このため規格外の米が増え、農水省の統計と農家の実態の間に収穫量のずれが起きるという問題が指摘されていました。
会見で小泉農水相は選別のやり方を見直すと発表。
そのうえで、「今後は人工衛星や人工知能などの最新の技術を活用しながら、農業政策の新たな基盤を確立していきたい」としました。
日本の農政の基本になっている統計を大転換させるという“小泉改革第2弾”ですが、何が問題で何が変わっていこうとしているのか、米の流通に詳しい宇都宮大学の松平尚也さんと見ていきます。
青井実キャスター：
作況指数を廃止すると先ほど出ましたが、今改革というのは必要ですか？
宇都宮大学 農学部 助教・松平尚也さん：
やはり実際の生産量と統計の誤差があるということはずっと指摘されていましたので、見直しは必要だったと思います。
では詳しく見ていきます。
今回、小泉農水相が見直そうとしている統計には、その年のお米の出来具合を示す「作況指数」、そして、作付面積などをもとに計算される「収穫量」などがあります。
まず「作況指数」に関して詳しく見ていきます。
「作況指数」は、全国で無作為に抽出した約8000カ所の水田10アール、1000平方メートルあたりの収穫量について、一定程度以上の粒の大きさの玄米を選別して算出するものです。
平年を100として比較し、「良」や「平年並み」などレベル分けがあります。
数値が100を上回るほど豊作、下回るほど不作を意味するものとなっています。
ちなみに2024年度米は101ということで、「平年並み」ということです。
青井実キャスター：
去年の米不足、当初、政府は足りているとしていましたが、こういった統計をもとに言っていたということでしょうか？
宇都宮大学 農学部 助教・松平尚也さん：
作況指数は農作物の出来の良しあしを示すもので、大きな収穫量等を考える時の基本的な指標となりますので、まさに参考にしていたと思います。
なぜ足りなくなってしまったのか気になりますが、この作況指数の調査の問題点もあるわけです。
先ほど無作為に選ばれている約8000カ所のサンプル調査に基づいているとありましたが、例えば、猛暑や豪雨など気候変動による地域差が十分に反映できないなどの問題点もあります。
青井実キャスター：
そういう意味では、作況指数が101だったのに今年足りないなんてことが出てきちゃうわけですか？
宇都宮大学 農学部 助教・松平尚也さん：
まさにご指摘のとおりでして、気候変動によって等級が下がったり、くず米が多くなったりした場合、ちょっと統計でとりにくいという問題もあったと思います。ただ一方で、行政改革の中で安倍政権時代に大体7～8割ほどの統計職員が削減されたという状況で、そのあと主食についての統計がしっかりとれていないという指摘もあります。
青井実キャスター：
農水大臣は米の出来具合を示す作況指数を廃止することを表明。収穫量調査の精度を上げていくとして、人工衛星・AIなどを活用しながら精度を向上させるということですが、この見直しはどう見ますか？
宇都宮大学 農学部 助教・松平尚也さん：
見直しが必要なところではあるのですが、この新しい収穫量調査、精度を上げていくということですが、しっかり人間も配置し調査に関わる必要があると思います。特に地方で、農業の現場でしっかりと何が課題になって統計がしっかりとれてないか課題も洗い出す必要がありますので、両方、その中身を検証していく。やはり主食の統計ですので、そこはしっかりとれるように改善していってほしいところです。
青井実キャスター：
岩田さん、新たな小泉改革が出てきましたがどう見ますか？
SPキャスター・岩田明子氏：
やっぱりデータとか統計は政策の基礎となるものですから、ここを見直すというのは改革に向けた初めの一歩なのかなと思います。
青井実キャスター：
松平さん、日本の農政にとってこのあとどんなメリットがあるんでしょうか？
宇都宮大学 農学部 助教・松平尚也さん：
やはり主食の統計の需要と供給は食糧安全保障にとっても非常に重要な統計、データになりますので、そこをまず基本的に見直して、検証して、“令和の米騒動”のような原因を作らないようにしていってほしい、今後の糧としていってほしいです。
