北九州市小倉南区で職場の上司をダンプカーでひき殺したとされる男の裁判員裁判。福岡地裁小倉支部は、男に懲役23年の判決を言い渡した。
「上司の態度を“パワハラ”と…」
6月12日午後、福岡地裁小倉支部で開かれた殺人などの罪に問われている福岡・築上町の無職、高橋博行被告(62)の判決公判。

事件があったのは2024年10月。高橋被告は、北九州市小倉南区の採石場で勤務中、上司の山崎雄二さん(当時51)を重さ約72トン、タイヤの直径が2.7メートルもある大型ダンプカーでひき殺したほか、同僚の男性作業員や現場責任者の男性もひき殺そうとして逮捕され、殺人と殺人未遂の罪で起訴された。

現場に止まっている大型ダンプカーは、タイヤだけでも捜査員の背丈を優に上回っている大きさだ。

5月2日に開かれた初公判で、起訴内容を認めた高橋被告。検察側は冒頭陳述で「職場内のトラブルから極めて巨大な大型ダンプトラックで突っ込み、1人をひいて殺害。車両を切り返し、逃げた男性作業員らに目がけて突っ込んだ」と指摘した。

一方、弁護側は「上司の口調の激しさや無視をパワハラと悩んでいた。動機も突発的」などとして情状酌量を求めていた。

「頭に血が上ってかっとなり…」
5月4日の被告人質問で、高橋被告は「頭に血が上ってかっとなり、そのままアクセルを踏み込みました」と証言した。

▼弁護側「ダンプトラックにひかれてしまうとどうなるか分かりますか?」
▼高橋被告「死亡する可能性があります」
▼弁護側「山崎さんの遺体は見ましたか?」
▼高橋被告「はい。『大変なことをしてしまった』という気持ちがこみ上げてきました」

検察側は論告求刑公判で「人命を意に介さない強固な殺意があった」などとして高橋被告に懲役28年を求刑。一方、弁護側は「被告が反省していて、計画性がなく、強固な殺意もなかった」などとして懲役13年が妥当だと主張した。
「被告を懲役23年に処する」
そして、開かれた判決公判。福岡地裁小倉支部の三芳純平裁判長は、「本件ダンプトラックは巨大で、これで人をひけば死亡させることは必至。上司や同僚へ不満を有していたことと殺人行為に及ぶこととの間には飛躍があり、正当化する事情は見当たらず、非常に悪質」と断罪。

「事実関係を認め、謝罪の言葉を述べている点を考慮しても、刑事責任は重大」として、高橋被告に懲役23年の判決を言い渡した。
(テレビ西日本)