競馬で得た利益を申告せず、約1億3000万円を脱税した疑いで男2人が刑事告発された。

東京国税局から刑事告発されたのは、不動産会社元代表の谷強(たに・つよし)氏(57)と酒販売会社代表の徳中棟梁(とくなか・とうりょう)氏(71)。

谷氏は2021年までの2年間に、当たり馬券の払戻金など約3億1000万円を申告せず約1億3600万円を脱税した疑い、徳中氏も約3億200万円を申告せず約1億2600万円を脱税した疑いがもたれている。

関係者によると、2人は海外に住む男とともに、共同出資した資金をもとにして、親族や知人ら60人以上の名義を借りて馬券を購入していたという。

男らは「回収率100%以上」とも言われる損失が出にくいシステムを構築していたという
男らは「回収率100%以上」とも言われる損失が出にくいシステムを構築していたという
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彼らが行っていたのは、国税関係者が「回収率100%以上」と言う”儲ける”競馬だ。
1レースに数百通りの組み合わせで網羅的に馬券を購入し、損失が出にくいシステムを構築。多い時には1ヵ月で20億円分の馬券を購入していたという。

当たり馬券の払戻金のうち、名義を借りた親族らに渡した報酬は、多い人で年に10万円ちょっと。残った巨額の利益は3人で分け合っていたという。

谷氏と徳中氏はFNNの取材に対し、修正申告と納税を済ませたとしたうえで、「国税局の指摘を真摯に受け止め、今後は適正な申告納税をしていく所存です。心よりお詫び申し上げます」とコメントしている。

一方、谷氏を誘い、最も多く利益を得ていたとされるのが海外に住む仲間の男だ。しかし、この男は課税されていないという。

男が住んでいる国と日本との間には「租税条約」が結ばれている。「租税条約」とは、二重課税の回避や脱税の防止のための国同士での取り決めだ。

関係者によるとこの条約では、海外に住んでいても日本で事業活動を行う拠点があると確認された場合、日本での課税対象となるが、そうでない場合には課税できないという。

海外に住む男は日本で事業活動をしているわけではなかったため、競馬で多額の利益を得ていても日本での課税はできないと判断されたということだ。

東京国税局は相手国の税務当局に男の情報を共有し、日本ではなく、その国で課税されることになる見通しだ。

また日本中央競馬会=JRAは、他人の名義を借りて馬券を購入することを禁止している。

国税関係者は、「当たり馬券の払戻金には、原則50万円を超えた分に課税がされることを知らない人もいる。一般的な競馬愛好家も追徴されるおそれがあることを知ってほしい」と注意を呼びかけている。

【取材・執筆=フジテレビ社会部 小溝茜里】

小溝茜里
小溝茜里

フジテレビ報道局社会部記者。
司法・国税を担当。