【スタートアップ】 North Greenation 合同会社(ノースグリーンネーション・札幌)は、海外企業の道内進出に際し、法人設立やビジネス開発を支援している。CEOの三浦世子さんに北海道、札幌と世界をつなぎ、未来を切り開く取り組みについて聞きました。BOSS TALK #99
――子どものころは、どんなお子さんでしたか。
「江別出身です。おばがロサンゼルスにいて、近所に海外の方が住んでおり、語学、英語、海外のキーワードに近い子ども時代でした。母が北欧のペンフレンドを探し、幼稚園の後半か小学1年ごろ、海外から手紙が届き、英語の辞書を引きながら手紙を返した記憶があります。つたない英語だったのでしょうね。大学は1年間の留学制度がある北星学園大文学部の英文科に進学しました」
英語を通じて広がった世界 次第に関心は外国人とのコミュニケーションに
――そこで英語に没頭されたわけですか。
「英語より、海外のいろんな国の人と対等に話すことに関心が変わり、留学したアメリカのマンチェスター大学ではコミュニケーション学と哲学を学びました」
――英語をきっかけに世界がどんどん広がった感じですね。
「大学時代にコンピューターの発展を目の当たりにし、次はコンピューターの時代、プログラミング言語をやろうと、システム関連会社に就職しました。ただ、プログラマーの仕事は(進みたい方向とは)ちょっと違うかなと。プログラミング言語が全く分からないお客さまにコンピューターが不調などの原因を説明する仕事をしていました」
人と何かをつなぐ楽しさを実感 北海道から世界に広がった仕事
――通訳者みたいな仕事ですね。
「3年間ぐらいやらせていただき、何かの言語を介して、人と物、人と何かをつなぐことに、興味を持つようになり、夢見ていた翻訳、通訳、マーケティングを手掛ける会社に転職し、海外マーケティングの仕事を7年間やらせていただきました」
――海外マーケティングの仕事とは?
「日本に進出したい企業さんに日本市場と、日本、北海道、札幌市の地域情報を伝え、理解を手掛けるお手伝いをしていました。本当におもしろくて一生、この仕事をやりたいと思うほど、大好きな仕事でした。マーケティングを通じ、海外の視点から日本への理解が深まる一方、地元・北海道の魅力や課題は意外と知りませんでした。ちょうど北海道コカ・コーラボトリングがマーケッターを募集しており、転職しました」
――北海道に根差した具体的な取り組みは?
「北海道の産業のメーンは一次産業なのに、農家さんが物流で非常に苦労していることが分かり、「やさいバス」という会社と連携し新規事業「やさいバス北海道」を立ち上げました。北海道コカ・コーラの物流と顧客のネットワークを通じて、地域の農家さんの野菜を物流網に乗せてスーパーに運ぶ新しい流通の仕組みです。北海道の農家さんの課題、希望を深く知ることができました」
海外ではイノベーションで新規事業が相次ぐ 道内にも広げるため、独立
――独立のきっかけは?
「新規事業が次々と立ち上がるイノベーションを海外で目の当たりにし、北海道、札幌でも広げたいと思っていました。その時期に北海道コカ・コーラが副業の制度を導入しました。そこで、副業として、スタートアップ・エコシステムの構築を目指す『スタートアップ北海道』のイベント『北海道イノベーションウィーク』のコアメンバーとして運営に携わりました。海外に行くことが増え、副業として取り組むのが難しくなり、2024年3月に独立しました」
――今、どんなことに力を入れて取り組まれていますか。
「日本、北海道、札幌で事業を展開したい海外の企業さんの進出のサポートです。法人設立のサポート、ビザ取得のサポート。北海道内で事業を展開する基盤づくりのため、銀行口座の開設、取引先との橋渡しなど、事業開発のお手伝いもします」
――仕事はどう進めるのですか。
「海外で誘致イベントを開き、出合った企業を北海道イノベーションウィークのイベントに呼び、ビジネスマッチングを展開していく。サイトに問い合わせが寄せられ、そこからお話を進めることもあります」
「何を伝えたいか」に絞れば完璧な英語は不要 言葉の壁を乗り超えて
――道内に興味を示すのはどういったジャンルの企業ですか。
「IT、半導体、バイオテクノロジー、フード、アグリが多いです」
――海外企業は確実に関心を持っているのですね。
「ただ、ヨーロッパでは『北海道って何』『札幌ってどこ』という知名度の低さです。PRして(道内進出を検討する)企業を探します。マレーシア、シンガポールなど、近いアジアの国でも日本にはなかなか進出しないのが現状。言語の壁が高いからです。日本人は英語を話さないと言われますが、私は『話せるのに話さない』と思います。 間違う恐怖心が大きい。いろいろな国に行くと、完璧な英語を話す方って本当に少ない。何を伝えたいかに100%フォーカスし、英語で話すこと(が重要)ですね。そうした会話や対話するステージをみなさんたくさん作りたいと考えています」
――今、どういうことに力を入れていますか。
「2024年10月に札幌市さんが設立した札幌海外企業受入ワンストップ窓口『ステップ』の(運営業務を受託し)窓口の統括責任者をさせていただいています。仕事内容はノースグリーンネーションとほぼ同じです。北海道でのビジネスチャンスが広がるよう、(取引拡大に向けて)ビジネス開発のお手伝いがメーン業務です」
魅力的な事業が活発な北欧が目標 「北の大地」で事業推進
――北海道で仕事をされている思いや、この先については?
「社名の『ノースグリーンネーション』は北の緑の国という 意味を込めました。例えばデンマークなど北欧の国々もグリーンネーションと呼ばれることがある。(北海道は)良い事業をたくさん作っている(北欧の)国々とほぼ同じ人口サイズです。そんな国を目指しながら、北海道のためにやっていきたいと考えております。