雨の日、帰宅したら玄関先にぬれた荷物が置いてあった。横殴りの大雨で段ボールはびしょびしょ。持ち上げたら触った所に穴があいた。
宅配ボックスの一番上の段に、24本入り飲料ケースが入っていたこともある。自分の身長より高い位置から10キロ超の荷物を取り出すのに苦労した。

ドライバー不足が深刻化する中、再配達を減らすために「置き配」利用が増えている。 利用者にとっても便利な反面、トラブルも少なくない。
こうした時、通販会社や配送業者は対応してくれるのか? 法的な責任はどうなるのか?鳥飼総合法律事務所の本田聡弁護士に話を聞いた。
配送トラブル…連絡先は「配送業者」ではない
鳥飼総合法律事務所・本田聡弁護士:
ネットショッピングなどを利用し、荷物の配送にトラブルがあった場合、『消費者』が連絡する相手は『配送業者』ではなく『通販業者』となります。
なぜなら、消費者(荷受人)の契約相手は通販業者であり、配送業者は通販業者の『履行補助者』にすぎません。あくまで補助という立場ですから、基本的には、履行補助者のやったことの責任は、通販業者が負うことになります。

通販業者は、商品が消費者の手元に届くまで責任を持つ義務があります。 ですから、破損や紛失が補償されることになった場合、消費者へは通販会社が補償を行い、(場合によっては)配送業者が通販業者に損害分を払うことになります。
置き配で荷物が破損 法的責任はどうなる?
配送業者(通販業者側)に法的責任があるかどうかは、『荷物を破損させないで、指定場所へ“適切な状態”で格納(配達)したか』がポイントになります。
例えば、『玄関前への置き配指定』だった場合。大雨が降っていて「(玄関前に)置き配したら雨にぬれて破損すると分かった上で配達した」場合は、配送業者に注意義務違反があったとされる可能性があります。 『荷物を適切な状態で送り届ける』という、配送業者(通販業者側)の義務に違反したとみることができるからです。

普通に考えれば「指定場所に置いたのだから、配送業者に責任はないでしょ」ということなのですが、「ぬれると分かっている」ような『指定場所が不適切な場合』は、例外的に『通信販売の売買契約の配送業者の“本来の債務”の履行ではない』として責任を問われる可能性があります。(『そのような状態の置き配の指定の合意があったとは言えない』とも考えることができます)
もしくは、もともと消費者の置き配の指定に問題があった場合、過失相殺(消費者の落ち度を考慮して、損害が減額される)可能性もあります。
宅配ボックスから取り出す時にトラブルが起きたら…
一方、『宅配ボックスへの配達指定』で、重い飲料ケースなどを上段へ入れ、消費者が取り出す時に荷物が破損したり、けがをしたとしても、配送業者に責任を問うことはできません。
なぜなら『指定された場所へ、破損のない状態の荷物を配達した』、『適切な配達をした』として配送業者(通販業者)の責任は完了。宅配BOXから荷物を取り出す行為は、例えば、自宅内で物を動かすのと同じように考えられ、破損やけがなどは消費者の責任となるのです。

もし「飲料ケースは宅配BOXの下段に入れて下さい」といった指定をしていれば話は変わってきますが、通常はそこまで細かく設定するのは難しいと思います。
なお、段ボールは売り物ではないので、破損していても法的な責任は問えません。 とはいえ、大きく破損していたら、気になる方も多いと思います。 その場合は、通販業者に相談をしてみて下さい。
通販の『利用規約』にも注意
消費者と通販業者の間で『置き配の明示的な合意があるかどうか』で状況が変わりますが、多くの場合、通販業者の利用規約で「置き配のリスクを受け取り側(消費者)が負担することも含めて」合意がなされています。
明確な合意がある場合は、通販業者側は、指定場所への配達が完了したことを証明できれば、紛失の責任を負う必要はありません。

通販業者は、商品が消費者の手元に届くまで責任を持つ義務がありますから、配送業者(通販業者側)は、指定された場所への配達が完了したことを証明できるよう、例えば写真を撮っておくなどの必要があります。
高額商品は『対面受け取り』も
法的には通販業者側の責任がないことがほとんどですが、実際には柔軟に対応してくれる場合も多いでしょう。しかしこれも、購入した商品の金額によって対応が変わってくる可能性があります。
*置き配を利用する場合は、宅配ボックスなどの鍵がかかる場所を指定する
*高額な商品は対面受け取りにする
*監視カメラを設置する
など、消費者側も十分な注意が必要だと思われます。
インターネットショッピングや置き配は消費者にとって便利なシステムですし、ドライバー不足解消のための有効な手段でもあります。
しかし現状、ケースバイケースで考えなければならない部分も多くあります。 その点を踏まえ、十分な注意をした上で、上手く利用して下さい。
(鳥飼総合法律事務所 本田聡弁護士)
取材:高知さんさんテレビ