介護の司令塔、ケアマネージャーの現場は昨今、人材不足が叫ばれるとともに新たな問題が浮き彫りとなりました。
6日の「ソレってどうなの?」は、「ケアマネージャーの4割がカスハラ被害」をテーマにお伝えします。
茨城県内でケアマネージャーとして働く廣川真知子さん。
ケアマネージャーとは、利用者にあった介護サービスを提供するため聞き取りや分析を行い、それぞれのケアプランを立てるなどして要介護者やその家族を支援する専門職です。
そして、“介護の司令塔”といわれるゆえんは、行政や病院などさまざまなところと連携を取るということです。
月に一度、利用者の自宅へ訪問し、記録を取りながら各所と情報共有してケアに当たっています。
こちらの事業所では、廣川さんを含め2人で90人の利用者を受け持っているそうです。
かなり大変な業務だということが分かります。
そんなケアマネージャーに関するある問題が現在、浮き彫りとなっています。
それはカスタマーハラスメント、いわゆる“カスハラ”です。
日本介護支援専門員協会の調査によりますと、過去1年間にカスハラを受けたことが「ある」と答えた人は33.7%で、無回答を除くと約4割に上るといいます。
では実際にどんな“カスハラ”があったのか、協会のヒアリングに同席しました。
業界歴16年・Nさん(仮名):
10年前の話なんですが、高齢の独居の女性でずっとお仕事を続けてきたキャリアウーマンだった方。1人で寂しかったということもあり、個人への連絡が頻繁にあった。(体の痛みで)あれができなくてつらい、これができなくてつらいって話を1時間くらい延々と伺っていた。結果、「あんたに分かるわけない」「若い人には年寄りのつらさなんで分かるわけない」って、ガチャッと(電話を)切られることが割と頻繁に続いた。
このカスハラは利用者からだけではなく、その親族や関係者などからも多いそうです。
業界歴13年・Jさん(仮名):
ご利用者の息子さんなんですが、とにかく高圧的。体格もいいし、(身長)180cm後半あるぐらい。「介護度を上げろ」「これじゃサービスが足りないだろ」「とりあえず主治医のところ行って(介護度を)上げるように言ってこい」とにかく高圧的で、すぐ手が出てきそうで、私も恐怖感があって。とりあえず主治医のところ行くフリをして、夕日を見ながら途方に暮れた。
業界歴18年・廣川さん:
おじさまをめい御さんが介護されている状況の方で、1人暮らしのおじさまを24時間在宅で見るのはサービス的に困難で、お話を進めていく中で「紙を持ってくるだけの人には分からないわよね私の気持ちは」と言われた。紙は毎月お届けする“利用票”に当たるものですが、それをビリビリッと破り、クシャッと丸めてポイッと捨てられた。紙を広げてのばして「今日は帰ります」と置いてきた。次に行くときすごくしんどかった。
さらに、ケアマネージャーが「カスハラを受けやすいか」という質問には「受けやすい」「やや受けやすい」と回答した人が合わせて約8割に上りました。
その理由について、現場の環境が要因の1つだという声も。
日本介護支援専門員協会・山田剛常任理事:
主な相談場所が利用者の自宅だということ。(利用者が)自分たちのテリトリーで、自分たちが優位に立っているようなことを感じやすいのでは。そういう錯覚に陥りやすい。これダントツで多かった。
今回、ケアマネージャーが一体どのように利用者と接しているのか、月に一度の自宅訪問にフジテレビ・青井実キャスターが同行しました。
イレギュラーなことも多く、この日は80代の男性のもとに急きょ向かうことに。
地域を飛び回るという廣川さん。
気持ちの切り替えも大事だといい、車に乗っているときは「(仕事のことを)つい考えちゃうんですけど、いったん切り離すように歌を歌っています」と話しました。
今回の訪問先では、いつもは同居する人がケアを行っていますが、この日は看護師が医師と連絡を取りながら薬を投与。
こういった看護師の手配調整もケアマネージャーの仕事です。
仕事の原動力は利用者の笑顔だという廣川さん。
実際に、協会の調査では、約6割の人が「利用者に必要とされている」から「仕事を続けたい」と回答しています。
日本介護支援専門員協会・七種秀樹副会長:
本当にやりがいのある仕事ですし、本当に多くの方から感謝いただいてますので、感謝の心いただくだけでも我々はやりがいを見いだせるかなと感じてます。
介護現場でのハラスメントの問題の本質、そして難しさは、利用者側が相手の善意と優しさに甘えたままだと解決しないのではないのでしょうか。