鹿児島県の口永良部島の大規模噴火から5月29日で10年です。

当時、島にいた137人全員が島外に避難し、全国的にも大きなニュースとなりました。

活火山が点在する鹿児島で、改めて火山と生きる怖さを感じさせた大規模噴火から10年、島の風景はどうなったのか、そして、住人たちは何を思うのか?

井上キャスターが取材しました。

屋久島から北西に約12キロ。

島を形成する幾重もの地層が噴火の歴史を物語っています。

井上彩香キャスター
「着きました」

口永良部島。

10年前、この島に暮らす人々の生活は一変しました。

2015年5月29日、口永良部島の新岳で大規模噴火が発生。

噴煙は火口から9000m以上、上がります。

「逃げろ、逃げろ!わしは大丈夫」

気象庁は口永良部島の噴火警戒レベルを最高の5に引き上げ、島にいた137人全員が島外避難を余儀なくされました。

あれから10年。

島の消防団長を務める山口正行さん(56歳)。

当時、住民の避難に奔走し、島のまとめ役もしていました。

島の西側にある、ここ「番屋ヶ峰」は避難所として島民が身を寄せた場所です。

島の消防団長・山口正行さん(56)
「ここはもともと沖縄まで電波を中継する建物だった。それを解体直前に避難所として使えるよう町にお願いして。そのときはまだ改装中だった、避難所として。まだ完成はしていなくて。一応、島民は避難してきたんですが」

当時、島外にいた山口さん。

噴火の一報を受け屋久島から消防や警察と一緒に船で島に戻ってきました。

井上キャスター
「不安の中、口永良部島に到着して、その後の足取りは?」

山口さん
「町から“全島避難”という指示が出たので、消防団員とともに皆さんを説得したり」

あの時、島では噴火と同時に火砕流も発生。

その爪痕は今も残されています。

前田集落から向江浜地区に続く道路です。

井上キャスター
「ここは通常だと入ることは?」

山口さん
「一応規制されていて、火山のレベルが下がっても道路が落ちたりしてるので、危険なので通行止めをかけています」

屋久島町の許可を得て特別にカメラが入りました。

山口さん
「スギはほとんど熱でやられて。この先にもスギの林があったが、全部枯れてしまった。ちょうどあそこに釘が見えると思う。そこにプレートがあった」

そして、向江浜地区。

火砕流と、その後の大雨による土石流の被害エリアは手つかずのままです。

山口さん
「対岸に道があって、つながっていた。住宅が埋まっているのも見える。工事関係者の住宅だった」

井上キャスター
「昔は何人ぐらいが住んでいた?」

山口さん
「昔は結構な数。商店もあるぐらいの集落だった」

10年前、噴火警戒レベルが5に引き上げられた口永良部島。

それが3に引き下げられたのは1年以上が経過した2016年6月でした。

この10年間で実に20回以上、上げ下げを繰り返し、復旧工事は継続的に行えないそうです。

当時と変わらない景色が残る一方、人の流れはこの10年で大きく変わっていました。

避難したまま戻らなかったり、進学や就職で島を出たりと、住民は噴火前の137人から86人に減りました。

あの時を知らない世代が増える中、記憶をどう語り継ぐかは島の一つの課題です。

向江浜地区のとなり、前田集落に2025年1月にオープンした民宿です。

民宿 木村屋・木村武司さん(44)
「観光で魚釣りに来た時この島が気に入って、好きになってしまって」

2018年に神戸から移住した木村武司さんが、住民の協力も得て古民家を改修しました。

全島避難のことはあまり知りませんでしたが、、、

木村さん
「消防団に入らされた。自然と」

島ならではの密なつきあいで、住民から噴火当時のことも教わり、自分なりに噴火について考えていました。

木村さん
「(宿泊客の)名前とか電話番号を聞いたり、人数とかそういうのをしっかり把握するようにしている」

島で唯一の魚屋を営む池添慧さん(31)も、噴火から5年後の2020年に地域おこし協力隊として着任した当時を知らない世代です。

島の魚屋「港のとと屋」 池添慧さん
「消防団でこの間避難訓練をして、改めて噴火があったときに、こういう避難をするというのは全体で見直すのは大切かなと。僕一人がというよりは、みんなで」

その避難訓練の中心にいたのは、消防団長の山口さんです。

島民の意識に変化を感じています。

山口さん
「以前は避難を呼びかけても動いてくれない人とか結構いたんですよ。ですけど最近は避難訓練をしても訓練に出て頂けるし、避難もスムーズに対応して頂いている」

避難をよりスムーズに行うために避難所の番屋ヶ峰で新たな取り組みも始めました。

山口さん
「集落ごとに区切ってあって、こちらの施設に避難に来られた方には〇をして。必要であれば(写真を撮って)役場に送る」
「消防団で集落内の残留者とか、各家を回る作業の時に誰が避難しているのか分かるので有効」

活火山に囲まれた鹿児島で、改めてその怖さを実感することになった口永良部島の大規模噴火から10年。

井上キャスター
「口永良部島というのは、活火山も含めてですけど、山口さんにとってはどんな場所ですか?」

山口さん
「噴火は怖いですけど、かけがえのない故郷ですね」

今この瞬間も島では、当時を知る人、知らない人、それぞれが火山と向き合っています。

鹿児島テレビ
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