2024年は過去最多となる10万近くの人が熱中症で救急搬送された。2025年の夏も平年以上の暑さが予想される中、社会問題化する熱中症に対する取り組みが官民の壁を越え活発化している。
早くも暑さが襲来…
2025年5月20日、静岡市では31.8℃と早くも真夏日を記録。

初夏を飛び越えまさに真夏のような暑さに子どもを連れた女性は「暑いです。もう真夏がきたのかという感じ」と汗を拭った。
年々厳しさを増す暑さに備え、静岡市内のドラッグストアには冷却スプレーやネッククーラーなど、すでに熱中症対策グッズが並ぶ。

2024年は全国で過去最多の10万人近くが救急搬送された熱中症。
官民あげての熱中症対策を
暑さへの対策が社会的な課題となる中、静岡県内でも自治体や企業が協力して取り組みを始めている。

2025年3月、静岡市役所で開かれた会議。
参加したのは、市やJ1・清水エスパルスに製薬会社、ドラッグストアなど様々な企業や団体だ。
地域での熱中症を減らすためにそれぞれができることを考えようと集まった。
静岡市環境局GX推進課の平岡大知さんは「施設・店舗の利用者への呼びかけなどは、民間や団体の力を借りていきたい」と期待を寄せる。
特に2025年に力を入れているのが、極端な暑さをしのげる施設「クーリングシェルター」の充実だ。
静岡市清水区の商業施設「イオン清水店」では食品販売コーナーからほど近い場所など店内3か所にクーリングシェルターのスペースを確保。

商品を購入しなくても利用することができ、利用者からも「ありがたい。15分くらい(自宅から)歩いてくるので、きょうも暑かったから疲れちゃった」と好評だ。
静岡市では現在、公共施設に加え190もの民間施設をクーリングシェルターとして指定し、今後、その数をさらに増やしたい考えでいる。
企業独自での取り組みも活発化
さらに、クーリングシェルターを設置するとともにこんな取り組みを行う企業も…。

「(熱中症の疑いがある人に)ペットボトルを開けて渡すという人がいるが、自分で開けられるかどうかが意識障害の有無を判断する材料の1つなので、開けてあげる優しさはかえって命とり」と話すのは杏林堂薬局 地域医療連携推進室の長谷川剛広さんだ。
静岡県内を中心にドラッグストアを展開する杏林堂では、店を訪れた人たちへの熱中症対策セミナーを開催している。
この日は、製薬会社の社員を講師に招き脱水症状の見分け方などについてのレクチャーが行われていた。

「爪を出して下さい。押したときに爪が白く変わると思うが離したときにすぐにピンク色に戻れば脱水状態ではない。ただ、押したあとに白い状態が続いてしまう人は脱水状態になっているかもしれない」と大塚製薬の仲濱陽介さんからは具体的な判定方法についての説明が行われていた。
また、シャーベット状のドリンクを運動や作業を始める前に飲むことで、あらかじめ体の内部の温度を下げる方法などが紹介されると、参加した人たちは熱心にメモをとるなど講師の説明に耳を傾けていた。

参加者の1人は「これから暑い時期になる。子供と一緒に意識しながら過ごせたらと思っているので(セミナーを)受けてよかった」と感想を口にし、大塚製薬の飯田繭子さんは「熱中症を社会事化することによって熱中症の搬送者数を減らしていく。それが一番の近道だと考えているので、研究開発で得た知見を健康に関する情報として伝え人々の健康に貢献したい」と話す。

熱中症による健康被害を減らすために、自治体はもちろん民間企業を含めた社会全体で対策を進めることが求められている。
(テレビ静岡)