政府が随意契約で売り渡す備蓄米の放出が始まり、ネット販売では早くも争奪戦となっています。小泉農水相のねらいはどこにあるのか、また7月にも予定されている参議院選挙にはどう影響するのか、永田町取材には定評があるジャーナリストの鈴木哲夫さんに聞きました。
■小泉大臣「コメの価格破壊」はできる?
川崎キャスター:
新しい備蓄米がついに市場に出回り始めました。まもなく店に並ぶお米は、一般の銘柄米、従来の備蓄米、そして小泉大臣になってからの新しい備蓄米2種類、合わせて4パターンということになります。
小泉大臣は、安く買いたい方に選択肢を増やすことで、最終的に価格が落ち着けば良いと発言しています。確かに備蓄米はかなり安く出てきますので、一般の銘柄米が影響を受けて安くなる可能性もあるとは思うんですが、長期的に見た場合、本当に日本のコメ価格を安くできるのか、小泉大臣が「コメの価格破壊」を続けられるのか、いかがでしょうか?
鈴木哲夫さん:
このコメ問題っていうのは2つあるんですよね。石破首相とか小泉大臣が今やろうとしていることは要するに、目の前の値段を下げるということなんです。今起きている問題に対して、流通を増やして価格を下げるということですよね。
そしてもう1つは、将来的にこのコメ問題をどうしていくのか、という大きな話があります。いま出てきている備蓄米の価格というのは、まさに今、目の前の課題に対応するためにやっていることなんですよね。
それで、おそらくコメ市場は二極化していくんじゃないか、という話が出ています。つまり今回の備蓄米のような安いコメを買いたい方もいるし、一方で多少高くても、良い銘柄のお米を買いたいという方もいるわけですから、そういうふうに分かれていくんじゃないかと言われています。
■ポイントは「流通」
鈴木哲夫さん:
一方で、コメの価格を安定的にもっと下げていくということになると、大変な改革が必要になってくるわけですよ。ポイントは「流通」です。皆さん、感じられませんか?「え、備蓄米って、こんなに途中のプロセスを省略して、直接スーパーと取引したらこんなに安くなるの?」ってね。つまり今までの流通というのは、JAさんも含めていろんな方々が間に入って、そこでお金を取っていっていたから高くなっていたし、時間もかかっていたわけです。これを変えるとなると、そういう既存の流通でやってきた方々は反対しますからね。いわゆる「農水族」と言われるような方々としっかり戦えるのかどうかっていうのが、これからの大きなポイントになってくると思います。
■「コメ」が参院選のポイントに
川崎キャスター:
そうなると7月にも行われる参議院選挙で、やはり農政、コメの話が大きなポイントになりそうですね。そうすると小泉大臣が主役ということになるのでしょうか?
鈴木哲夫さん:
小泉大臣が主役というのもそうだけど、石破首相もそれを考えているんですよね。参院選で争点の1つとしてコメ問題で勝負をしたいと思っているので、石破・小泉のコンビで政府の骨太方針に農政改革みたいなことを盛り込もうか、なんていう話もいま出ているんです。
■“小泉劇場”再来の見方も
鈴木哲夫さん:
小泉大臣が関わっているから言うわけではないですが昔、“小泉劇場”ってありましたよね。小泉大臣のお父さまが郵政民営化で大きな改革をされた。ああいうものが再来するんじゃないか、という見方も、ちょっと石破首相側にはあるようなんです。コメを争点にして「もっと増産して米のあり方を変えていこう、流通を変えていこう、そして農家の方々にもしっかりと補償していこう」というようなことを石破首相が打ち出せるかどうかが、今後の最大の山場になってくると思いますね。
(2025年5月29日放送「報道ワイド 記者のチカラ」より)