石破茂首相のもとに30日朝、自民党議員が相次いで訪れ、首相への提言書を立て続けに渡した。
首相官邸には午前8時半から約15分おきに議員が集まり、石破首相はスポーツ、デジタル、海洋、沖縄振興など、計5本の提言書を受け取った。
政府が6月中旬にもとりまとめる、いわゆる「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」に盛り込むのが目的で、提言書には「必要な予算をしっかり確保し、実行するよう強く求める」などの文言が並ぶ。
年金制度改革法案をめぐっては立憲民主党と法案を共同提出するなど、「少数与党」として野党の案を受け入れてきた石破総理に対し、自民党議員からは「野党案を“丸のみ”しているのだから、党内にも耳を傾け“丸のみ”してほしい」との声が漏れる。
この中で、注目されているのが今年新たに発足した「対日投資拡大議員連盟」(山口壮会長、中西健治事務局長)の提言だ。
日本のGDP(国内総生産)について「来年は5位に転落することが確実な情勢で、日本の国のかたちが開放的ではなく、そのことが長期的な経済の衰退傾向を反転できていない一因になっている」と警鐘を鳴らし、「日本経済を飛躍的発展の軌道に乗せるための究極の戦略」として、海外から日本への直接投資についての提言を行った。
対日直接投資は日本株などへの証券投資(間接投資)と異なり、海外から資金のみならず人材や技術、アイデアを呼び込むことで、日本国内での雇用創出や地域経済の活性化を通じ日本経済の成長につながることが期待されている。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の報告書によると、2023年末の対日直接投資残高(直接投資の合計額)は50兆5000億円となり、初めて50兆円を超えた。しかし、対GDP比では約8.5%で、米国(23.2%)、台湾(21.1%)などから大きく差をつけられ、世界的に見ると最も低い水準にあるのが現状だ。
これを受け政府は2023年の「骨太の方針」で2030年までに対日直接投資残高を100兆円とする目標を掲げた上でさらなる引き上げを検討しているが、提言では「現在の目標を倍増するなど、一層野心的な目標の実現に向け本気で取り組むべきだ」としていて、今後の動向が注目される。