年齢を重ねるにつれて歩く、立ち上がるといった日常生活の動作に支障が出てきた、という人も多いのではないだろうか。これは筋肉が減少する「サルコペニア」と呼ばれる症状で、65歳以上の1割から2割が該当。進行すると寝たきりになる場合もある。原因や予防法を専門医に聞いた。

◆サインは「歩きにくい、階段を上りにくい」
サルコペニアについて話を聞いたのは、福井赤十字病院整形外科代表部長の石川正洋医師。
聞き慣れない「サルコペニア」とはー
「年齢とともに筋肉の量が減ってきて、例えば歩きにくくなったり、階段を登りにくくなったりするような症状のことをいう。年齢が上がれば上がるほど、普通に生活するだけでも筋肉が落ちてしまうということが大切」

ギリシャ語で「サルコ」は筋肉、「ペニア」は失うことを意味する。
石川医師によると、日本人では65歳以上の10%から20%がサルコペニアに該当するといわれている。若い人に起こることはほとんどない。
原因は大きく2つ。「年齢とともに筋肉の量がだんだん減ってくることが最も大きい要因。2つ目は、動かなくなることで筋肉が落ちてしまうこと」だという。

◆初期症状は気付きにくい
初期症状は「握力が弱くなること」だというが、気付きにくい。「症状が進行すると、歩くスピードが遅くなったり立ち上がる時にすごく困難感があったり、階段を上る際に手すりが必要になったりする。症状としてはそれらが見つかりやすいのでは」と石川医師。

症状が進行すると歩く能力が落ちて転倒や骨折の危険が高まり、最悪の場合は寝たきりに。介護が必要になってしまうこともあるという「サルコペニア」。石川医師は以下の2つの対策を挙げる。
▼筋肉を増やすために、鶏肉や、大豆製品などのタンパク質をできるだけとること▼ウォーキングなどの有酸素運動をできる範囲で取り入れること
65歳以上の人は、1日5000歩を目安にすると良いという。また、坂道を登ったり走ったりする運動は関節に負荷がかかりすぎるため、ウォーキングや水中ウォーキングが良いとされている。
石川医師は、サルコペニアは長い経過の中で出てくる症状のため「何かをすれば急に良くなるというものではなく、日々の食事や運動を意識していくことが重要」と話す。
「昔は年を取ったから仕方がないと思われてきたのがこの病気。年齢とともに筋肉量は知らず知らずに落ちてくるので、それをしっかり補うことにより、予防できる」

◆5つの動作で症状チェック
サルコペニアの症状のチェック方法は以下の5つの動作。これに点数を付け、判断する。

1.握力(4~5キロの物を運ぶ)
2.歩行(部屋の中を歩く)
3.立ち上がり(椅子やベッドから移動)
4.階段(10段上る)
5.転倒(1年での転倒回数)
1~4について「全く大変ではない」場合は「0」「少し大変」な場合は「1」、「とても大変、全くできない」場合は「2」とカウント。
5の「転倒」は「なし」なら「0」、「1~3回」なら「1」、「4回以上」は「2」とカウントする。
石川医師によると、このポイントの合計が4点を超える場合はサルコペニアの可能性が高いという。タンパク質をとり、ウォーキングなどの軽い運動をすることを長期間継続して行うことが予防につながる。日頃の生活を見直してみよう