2018年、2人が殺害された奥田交番襲撃事件で、強盗殺人罪などに問われた島津慧大被告の「差し戻し審」が動き出します。
裁判のやり直しが決まって1年あまり、争点などを整理する「期日間整理手続き」が、19日富山地方裁判所で開かれました。

*リポート
「1年以上、公の場で動きが無かった差し戻し審。強盗殺人罪の成立が最大の焦点です。公式な手続きとして裁判所、検察官、弁護人が顔をあわせ、争点や裁判の進め方について話し合います」
奥田交番襲撃事件のこれまでの経緯

この事件は2018年6月、富山市の奥田交番に元自衛官の島津慧大被告(当時21)が押し入り、持っていたナイフで当時警部補だった稲泉健一さん(当時46)を殺害。
その後奪った拳銃で、近くの小学校で警備をしていた中村信一さん(当時68)を射殺したとされています。
島津被告は強盗殺人などの罪に問われ、検察は死刑を求刑しましたが、富山地裁は「拳銃を奪う意思が殺害後に生じた可能性を排斥できない」として「殺人と窃盗罪」の適用にとどまると判断し、無期懲役の判決を言い渡しました。
これに対し二審の名古屋高等裁判所金沢支部は、「一審判決は事実誤認で、強盗殺人罪の適用を前提に量刑を判断すべき」として一審の判決を破棄。
これを不服として島津被告の弁護側は最高裁判所へ上告していましたが、去年3月、最高裁はこれを棄却し、裁判は再び富山地裁で、やり直されることが決まっていました。
やり直し裁判決定から1年あまり-

19日はその「差し戻し審」に向け、裁判所、検察官、弁護人が争点や証拠、裁判の日程などについて話し合う「期日間整理手続き」が開かれました。
「差し戻し審」は強盗殺人罪の成立を前提として進められ、法律に詳しい専門家は今後、相当な時間を要するとみています。

*高岡法科大学 西尾憲子教授
「議論が尽くされていない、強盗殺人の成立について検討が十分にできていない。争点としてしっかりと絞れていないのでやり直し。今回どのように審理が尽くされるか。(期日間整理手続きで)調整している内容や争点の整理がどれだけできるのかにかかっている。まだまだ時間がかかってしまう可能性がある」
殺害された中村信一さんの妻は1審で黙秘を続ける島津被告に対し、「差し戻し審では自ら事件について語ってほしい」とコメントしています。