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プレスリリース配信元:SteelWatch Stichting


CDE Global, Washed and graded iron ore / flickr

(2025年5月15日、ハーグ)スウェーデン ルンド大学は、カナダの鉄鋼産業における脱炭素化に関する調査『カナダの鉄鋼産業における戦略的脱炭素化』[1]を発表した(スティールウォッチ委託)。 報告書は、カナダが世界有数のグリーンアイアン生産国および輸出国となる潜在力を持つことを示し、日本製鉄を含む日本の鉄鋼メーカーにとって、大きなビジネスチャンスとなることを明らかにしている。

カナダは、高品位な鉄鉱石資源、豊富な再生可能エネルギー、整備されたインフラ、高度な熟練人材、そして2050年ネットゼロ実現に向けた確固たる政治的コミットメントを備えており、グリーンアイアンの有力な生産・輸出国としてのポテンシャルを生かすことで、世界の鉄鋼脱炭素化を牽引する存在となる可能性を秘めている。

日本は、カナダ産鉄鉱石の世界第3位の輸入国であり、その輸入額は約1130億円(7億7800万米ドル)にのぼる[2]。日本は長年にわたる強力な貿易関係を活かし、カナダのグリーンアイアンへの需要を喚起することができる。グリーンアイアン貿易の活発化は、日本の鉄鋼業界の石炭を原料とする高炉依存からへの脱却の後押しとなる。

国内最大メーカーである日本製鉄は昨年末、カナダにおいてチャンピオン・アイアン社が手掛けるカミ鉱山プロジェクトへの30%出資を発表 [3]。この事業は、グリーンアイアン生産に適した高品位鉄鉱石を年間900万トン生産する可能性を持つ[4]。こうした優位性を活かせば、日本製鉄はカナダ国内におけるグリーンアイアン生産に追加投資することで、脱炭素化を加速させる機会をとらえることができる。しかし同社にそのような動きは現在は見られない [5]。

本報告書執筆者の一人で、コロンビア大学グローバルエネルギー政策センター非常勤研究員のクリス・バタイユ博士は「調査によると、カナダはグリーンアイアン生産のポテンシャルを有するだけでなく、世界的に競争力のある価格での生産が可能である。推定生産コストは1トンあたり約6万3700円~7万7000円(430米ドル~520米ドル)[6]とグローバルで最低レベルのコストであり、カナダは世界的に最も競争力のあるグリーンアイアン生産国となる。そのため日本がグリーン経済を推進するための有望な選択肢となるだろう」と述べている。

スティールウォッチのアジア担当、ロジャー・スミスは「カナダのグリーンアイアンへの投資は、日本の鉄鋼各社にとって理想的な機会となり得る。カナダのような高品質なグリーンアイアンの安定供給元を確保することは、国内鉄鋼メーカーが事業転換を加速させる上で鍵となる。また、石炭を原料とする製鉄技術から脱却する契機にもなるだろう。日本とカナダには約百年にわたる信頼関係があり、日本製鉄もすでにカナダに投資していることから、今後のグリーン経済において大きな競争優位につながるだろう」と述べている。

スティールウォッチは昨今、グリーンアイアンの国際貿易が鉄鋼生産の脱炭素化に向けた有望な手段の一つであることを示してきた[7]。 これは製鉄工程と製鋼工程を分離するという革新的な戦略であり、鉄鋼業界の注目を集めている。

以上


参考:
- ジョナス・アルガース、クリス・バタイユ(博士)、「カナダの鉄鋼産業における戦略的脱炭素化:排出削減・付加価値向上・グローバルサプライチェーン強化を実現する労働者中心の産業転換」(英語)、ルンド大学(2025年5月)https://portal.research.lu.se/en/publications/strategic-decarbonisation-of-the-canadian-iron-and-steel-industry本報告書は要旨のみ日本語で下記より閲覧可能https://steelwatch.org/wp-content/uploads/2025/05/JP_Summary_CanadaDecarbobisation.pdf
- 同上P.24
- 日本製鉄、「カナダKami鉄鉱石鉱山の権益取得、合弁会社の設立に向けた基本合意について」(2024年12月19日)https://www.nipponsteel.com/common/secure/news/20241219_100.pdf近年、H2-DRI法(グリーン水素を使用する直接還元製鉄)はニアゼロ・エミッションのバージン鉄生産技術として利用可能であり、この製法による鉄源は「ニア・ゼロエミッションの直接還元鉄」と呼ばれ、これが通称「グリーンアイアン」である。詳細はスティールウォッチによる「なぜグリーンアイアン貿易が鉄鋼業界の脱炭素化を後押しするのか」を参照のこと。https://steelwatch.org/%e3%82%b9%e3%83%86%e3%82%a3%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%82%a6%e3%82%a9%e3%83%83%e3%83%81%e3%80%8c%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%82%8b%e9%89%84%e3%81%a8%e8%84%b1%e7%82%ad%e7%b4%a0%e3%80%8d%e3%82%b7%e3%83%aa%e3%83%bc/greeniron/?lang=ja
- スティールウォッチ、「慎重を期す時から、行動の時へ:日本製鉄 気候変動対策の検証2025」P.18(2025年5月)https://steelwatch.org/wp-content/uploads/2025/05/250507_NS_CCA_JP-1.pdfジョナス・アルガース、クリス・バタイユ(博士)、「カナダの鉄鋼産業における戦略的脱炭素化:排出削減・付加価値向上・グローバルサプライチェーン強化を実現する労働者中心の産業転換」(英語)、ルンド大学、P.31(2025年5月)https://portal.research.lu.se/en/publications/strategic-decarbonisation-of-the-canadian-iron-and-steel-industry
- スティールウォッチ、「なぜグリーンアイアン貿易が鉄鋼業界の脱炭素化を後押しするのか」(2025年4月23日)https://steelwatch.org/steelwatch-explainers/steelwatch-explainer-why-green-iron-trade-will-catalyse-steel-industry-decarbonisation/
- ジョナス・アルガース、クリス・バタイユ(博士)、「カナダの鉄鋼産業における戦略的脱炭素化:排出削減・付加価値向上・グローバルサプライチェーン強化を実現する労働者中心の産業転換」(英語)、ルンド大学、P.31(2025年5月)https://portal.research.lu.se/en/publications/strategic-decarbonisation-of-the-canadian-iron-and-steel-industry
- スティールウォッチ、「なぜグリーンアイアン貿易が鉄鋼業界の脱炭素化を後押しするのか」(2025年4月23日)https://steelwatch.org/steelwatch-explainers/steelwatch-explainer-why-green-iron-trade-will-catalyse-steel-industry-decarbonisation/


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