16日、自民党の菅義偉総裁が第99代内閣総理大臣に指名された。発表された新閣僚の顔ぶれには安倍政権の継承という色合いも濃い一方、目玉人事として行革相に河野太郎氏、また官房長官には加藤勝信氏を任命。これらの狙いはどこにあるのか。
今回の放送では解散総選挙のタイミングなども含め、菅内閣の展望・課題と今後の政局について、3人の閣僚経験者と識者をまじえてうかがった。

派閥への配慮は見えるも菅総理の思いは反映

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竹内友佳キャスター:
新内閣の顔ぶれ。副総理兼財務大臣の麻生太郎氏をはじめ、茂木敏充外務大臣、萩生田光一文科大臣、小泉進次郎環境大臣、西村康稔経済再生担当大臣らは続投。閣僚20人のうち初入閣は5人、続投や再登板が15人で構成されています。この菅新内閣の第一印象は。

山田惠資 時事通信社 解説委員:
菅総理の思いがかなり入ったなという印象。菅政権の大きな看板となるだろう行政改革での規制緩和に向け、行革相に破壊力の期待できる河野太郎さん。そして官房長官の加藤勝信さん。一方、党役員人事も含めて岸田さん、石破さんが入らない。次の総裁選も睨み、決して自分は残りの任期だけを務めるわけではなく本格政権になるぞということ、そして世代交代を進めようということを感じます。

松山俊行キャスター:
総裁選で岸田文雄さんを支持していた林さんは、今回岸田さんが組閣メンバーに入っていないこと、そしてこの顔ぶれをどのように受け止められますか。

林芳正 元文科相
林芳正 元文科相

林芳正 元文科相:
岸田さんご本人も、今回は無役になりたいという希望も少しあったようです。
顔ぶれについては、河野さんは行革相を一度経験しており、再登板でもある。また加藤官房長官も副長官の経験があり官邸のことはよくご存じ。仕事をよく知っている方、玄人受けする人選。平井卓也デジタル相も小此木八郎国家公安委員長も、菅総理がその働きぶりをよく知っている人たち。「仕事をしていくぞ」という思いが非常に滲み出ているのでは

松山俊行キャスター:
総裁選で石破茂氏を支持した齋藤さんは、派閥への配慮含め、菅内閣にどういった印象をお持ちでしょうか。石破派からは田村憲久さんが厚労大臣に再登板しています。

齋藤健 元農水相
齋藤健 元農水相

齋藤健 元農水相:
確かに派閥への配慮は一定程度なされているが、その中で選ばれている人はやはり菅総理と気持ちが一致している方が多い。一定の制約の中でもかなり自分がやれる人事をされたなと思う。そしてミスの少ない、手堅くて物事を進められる布陣になっている。
田村さんの人選は、他に田村さん以上に即戦力になる方はいないと思うので、それを考えた上での任命ではないか。

加藤官房長官は官僚との”通訳”、官僚政治の打破は首相自ら

松山俊行キャスター:
官房長官人事。一時は梶山弘志さんや萩生田光一さんの名前も有力な候補として出ていたが、前厚生労働大臣の加藤勝信さんになった。

山田惠資 時事通信社 解説委員:
菅総理が今やろうとしていることは、官僚政治との戦いがひとつのテーマになっている。すると元官僚であるなど、うまく通訳・説明する人が必要となる。いきなり官邸と霞が関がやり合うだけでは、なかなか官僚の人も動き方がわからない。そこで加藤さん

山田惠資 時事通信社 解説委員
山田惠資 時事通信社 解説委員

松山俊行キャスター:
菅総理の掲げる「縦割り行政の打破」。加藤官房長官はもともと旧大蔵省出身で、官僚のことはよくわかっているが、逆に官僚の縦割りを打破する部分では若干弱いのではないかという危惧は。

山田惠資 時事通信社 解説委員:
この打破は菅総理がやるんですよ。菅総理はおそらくメリハリがある方で、任せるところは任せるが勝負すべきところは自分でやるんだ、ということが強いと思う。あくまでも官僚に対してメッセージを出すのは自らであると。加藤官房長官が菅総理の下で違うことを言うことも考えられない。

河野行革相が壊し、菅首相が作る

竹内友佳キャスター:
総裁選挙中から行政改革や規制改革を掲げていた菅総理は、役所の縦割り、既得権益、前例主義を打倒し規制改革を進めたいと強い意欲を示しました。そこで行政改革担当大臣に起用されたのが、防衛大臣から横滑りの河野太郎氏。

山田惠資 時事通信社 解説委員:
菅総理と安倍前総理が最も異なる部分は、行政改革・規制緩和の優先順位だと思う。菅総理はこれを自分のライフワークにしたいと思っているのでは。河野さんはある意味でワイルドカードですが、同時に菅総理が自分の後継者ということも睨んでおり、世代交代も含めて見ているのかなと思いました。

松山俊行キャスター:
菅総理は河野さんの起用について、「俺は作る方だから河野には壊す方をやってもらう」ということを言っているという話も。コントロールが効かなくなる危惧はないですか。

片山さつき 元地方創生相:
河野大臣の場合、大臣がこれはおかしいと言えば事務方が何を言っても突っ走る。そこにハレーションが起きることに期待しているのではないか。菅総理大臣が骨は拾うからということで。すると河野さんとしては本当に働きがいがあり、何でもやれるという気持ちで臨まれると思う。
また、抵抗勢力というのは本当に強いもの。党との議論も当然行われる。それが国民の目にきちっと見えるようにすることで国民目線の改革という形に持っていければ、この内閣としては非常にいいと思います。

首相初会見で来夏以降の解散を示唆?

 
 

松山俊行キャスター:
菅総理としての初会見。総裁選以来頻出の「国民のために働く内閣」という表現も出ました。会見を聞いてどうお感じになりましたか。

林芳正 元文科相:
気になったのは外交について。日米同盟、インド太平洋、中露などの近隣諸国と言っていたが、韓国がそこで明示されていなかった。近隣といえば韓国も当然入りそうなものですが、現在の日韓関係をちょっと厳しく見ているのかなということ。

片山さつき 元地方創生相
片山さつき 元地方創生相

片山さつき 元地方創生相:
オンライン診療、GIGAスクール、そしてマイナンバーといったデジタル分野。まずデジタル庁に向けた本部を作り、足りないところに全部指示を出す形で、大臣もいらっしゃるがトップダウンで総理自身が旗を振るんでしょうね。
また、女性の健康問題に触れていただいたのはうれしい。大きな負担のもと夫婦で不妊治療を頑張っている方がいる。この保険適用について初めて総理として言ってくださった。それから女性の検診の実施率は本当に低い。乳がん、子宮がんなどに光を当ててくれるというメッセージがよかった。

齋藤健 元農水相:
今の日本の重要課題をきちんと把握され、それに取り組むという姿勢が全体として見えていた。菅総理らしさは、当たり前を見極めて実行していくという点。「国民のために働く内閣」、国民がおかしいと思っているところを国民のために直していくという考え方。それから一貫して言っている「自助、共助、公助、絆」。これを国のトップが言い続けるということは非常に重い意味を持つ。

山田惠資 時事通信社 解説委員:
よく聞いてみると、まずコロナ対策を打った上で経済だということを示唆されている。4〜5月の官房長官としての発言とはそこがちょっと違う。解散総選挙の解散の時期を見る上でも重要なポイント。

松山俊行キャスター:
菅総理の発言と内閣の布陣を見て、自民党の中ではしばらく解散はないという意見も出ている。

山田惠資 時事通信社 解説委員:
医療現場の方の話を聞くと、コロナは10〜11月が非常に心配される。感染者が解散、公示、投開票の短期間に急速に増える可能性は常にある。
もうひとつ、「桜を見る会」を中止するということは、もう一つの選挙の時期もにらんでいる。4月になりメディアが話題にして批判が起きるとそれ以降での選挙が非常に不利になる。つまり「桜を見る会」の中止からは、来年の夏以降の解散の可能性も見える。

BSフジLIVE「プライムニュース」9月16日放送