フジテレビは、人権・コンプライアンスに関する取り組み状況を総務省に説明しました。
フジ・メディア・ホールディングスの金光社長とフジテレビの清水社長は30日午後、総務省を訪れました。
フジテレビは4月3日、元アナウンサーの女性が中居正広氏から性暴力の被害を受けた事案に関して、総務省から「人権・コンプライアンス対応の強化策」を具体化し、その内容を4月中に報告するよう行政指導を受けていました。
また、3カ月以内に総務省に対して実施状況を報告するようにも求められていて、フジテレビは取り組みを強く推し進めていく方針です。
総務省に提出した報告書の内容について、企業の危機管理に詳しい桜美林大学の西山守准教授と見ていきます。
今回の報告書について見ていきます。
報告書には、フジテレビが作成した再生・改革に向けた8つの具体策が盛り込まれています。
大きく分けて2つの軸がありますが、左側が人権・コンプライアンス意識向上・体制強化で、右側がガバナンス改革・組織改革という2つの軸から構成されています。
まず、人権・コンプライアンス意識向上といったところに関しては、1つ目が「人権ファーストを徹底する仕組み作り」2つ目が「人権侵害・ハラスメント被害者を守り抜く」というところ。
3つ目が「コンプライアンス違反への厳正な処分」、そして「危機・リスクを減らす仕組みを導入する」ということです。
そして右側の部分、ガバナンス改革等に関しては、まず、5つ目「編成やバラエティー部門などを解体し再編」すること、さらに「アナウンス室を独立させる」こと。
6つ目が「役員指名の客観性・多様性・透明性を確保する」こと。
7つ目が「女性比率をアップさせる」ことと、「若手を登用することで多様性を実現させる」こと。
8つ目が「公共性と責任を再認識し、企業理念を見直す」ことなどが盛り込まれました。
まず、左側の軸でお伝えしていきます。
1番目、人権ファーストを徹底する仕組みづくりに関しては、取締役会の機関として、社外出身の取締役がトップになるリスクポリシー委員会などを新設するということです。
そして2つ目、従来の相談窓口に加えて、外部弁護士に直接相談できる人権救済窓口を設置するなどとしています。
青井実キャスター:
西山さんに聞いていきますが、人権・コンプライアンスについて、自分の会社だけでなく外部の弁護士などを入れて助言を取り入れる。改革を進めていくということですが、どう見ますか?
桜美林大学・西山守准教授:
これに関しては非常に重要な視点だと思っています。日本はなかなか外圧でないと変わらないという批判を受けますが、会社というのは外部の視点がないとなかなか健全化していかないので、そこをうまく外部の助言をしていくとか、外部の方に相談をして人権が守られていく。上に不適切な報告が行って報復を受けないとか、そういった仕組みをしっかり作っていくことが重要になってきます。逆に言うと、これは非常に重要なことではあるんですが、実際に形を作って中身をしっかり作っていかないと、ワークしづらい部分はあると思います。
そしてもう1つの軸、ガバナンス改革・組織改革についても詳しく見ていきます。
5つ目のところですが、編成局とバラエティ制作局などの組織を解体し再編するということです。
社内の一部に、これまで「楽しくなければテレビじゃない」と過度に重視した風土が根付いていたことを重く受け止めて、これまでの組織風土形成に直結していた編成局やバラエティー制作局などの制作部門の組織を解体し、再編するということです。
そしてもう1つ、アナウンス室ですけれども、現在、編成局所属なんですが、そこから独立をさせるということです。
第三者委員会の報告書の中でも、アナウンサーの立場の脆弱性に関して指摘がありましたが、今後、番組の起用方法に関してもアナウンス室の権限を強化するということで、人権に配慮したマネジメントを目指すなどとしています。
青井実キャスター:
独立といいましても、西山さんがおっしゃったようにワークしなければいけないということで、具体的にどうやっていくかですね。
そこで取り入れる仕組みが、コーディネーター制度を創設するということです。
これでコーディネーターの方が番組との調整役を果たすということです。
さらにSNS、それから誹謗(ひぼう)中傷対策、メンタルケア対策を強化して、一人ひとりに寄り添った対策を実施していくということです。
青井実キャスター:
西山さん、アナウンス室を独立させて守ろうとする取り組みはどうでしょうか?
桜美林大学・西山守准教授:
こちらに関して、非常に私もこの問題が起きた時にビックリしたのがアナウンス室の存在で、結局上司が誰なのか、誰が権限を持っているのか分からないまま、業務かどうか分からないような案件に連れ回されたりしているということ。そこはしっかり作る必要があると思っていて、これに関しては第三者委員会の報告も踏まえたうえで、こういった組織作りまで提言しているというふうに見えました。そういう意味では、この点は1歩、その段階から進んだように思います。
スペシャルキャスター パトリック・ハーラン氏(パックン):
同じガバナンス改革の中にバラエティー解体とありますが、これはどういうことですか?
解体という言葉を使っていますが、バラエティー番組をなくすということではなくて、もちろんバラエティー番組の制作は続けていきます。
制作部門全体として解体し再編するということで、今回の改革案では、バラエティー番組を作るうえでの組織の在り方を再編するものだとしていると。
スペシャルキャスター パトリック・ハーラン氏(パックン):
実際に社会の変化を受けてバラエティーの内容、番組の内容がこの数年で変わっていますが、「楽しければいい」から「正しくて楽しい」。そういう理念に変わって、表も裏も守っていただきたいですね。
また、一連の問題では経営陣の責任も大きく問われています。
6番目では、役員に関する新たな対策も盛り込まれました。
「役員指名の客観性・多様性・透明性の確保」ということですが、新たなものとして「役員定年制」というものが導入され、在任期間の上限の設定が盛り込まれました。
定年制に関しては、代表取締役が70歳を上限。
そして常勤取締役、執行役員は65歳を上限とします。
さらに、社外取締役の期間の上限を8年とするということです。
また相談役・顧問制度というのは6月に廃止される予定です。
この相談役というのが、以前まで日枝久氏が務めていた役職です。
青井実キャスター:
日枝氏の影響力が批判されていたわけですが、そういった体制からの脱却を目指しているわけです。このあたりどう見ますか?
桜美林大学・西山守准教授:
これに関しては、大手企業がもうこういったことは通常、なってきていますので、やっと通常になったなという見え方もできると思いますし、ただ、この制度だけで例えば日枝体制というのは脱却できても、メディアの独裁的な方が現れないとは限りませんので、こういった制度を整えると同時に、しっかり透明性、外部の方を入れる、そして意見が取り入れられると、ほかのこととセットで考えないと、なかなか権限を持った方が実権を握ってしまうのは避けられない部分はあると思います。
青井実キャスター:
このあと総務省からは3カ月以内に実施状況の報告が求められていますが、報告というのは今後、実施状況として何を見せていくのか、何を報告していくべきなのでしょうか。
桜美林大学・西山守准教授:
8つの改革案が出てきましたので、フジテレビ側でしっかりどのスケジュールでどういった取り組みをやっていくのかをしっかり明確にしたうえで、3カ月の期間だけでもしっかり進捗を報告していくとか、できていないところは今後こういうふうにやっていくといったこと、総務省に報告するだけではなくて、世の中に一般的に報告をしていく、報道をしていくことが非常に重要になると思います。
宮司愛海キャスター:
絵に描いた餅にならないように、より実効性を高めるために社員としてやっていくべきことはどういうことだと思いますか?
桜美林大学・西山守准教授:
まずスケジュールをしっかり可視化していって、できれば数値化していくことです。例えば、何%進捗しましたとか、何人の報告を受けてそのうち何人を処分しました、といったようなことですね。なかなか頑張ってやっていますだけだと世の中に伝わりませんので、具体的に数値化していく、第三者の評価を得ていくといった仕組みが必要になると思います。