鹿児島県出水市にある第三セクター・肥薩おれんじ鉄道の鉄橋補修工事が、地元漁協との協議難航により未着工となっている問題で、新たな展開が起きた。出水市が漁協への損害賠償請求を検討していることが明らかになったのだ。この問題の背景には、100年以上の歴史を持つ鉄橋の老朽化と、地域の重要な交通インフラを守ろうとする自治体の苦悩がある。
100年超の鉄橋、至る所でさびが発生
出水市・米之津川にかかる肥薩おれんじ鉄道の鉄橋は、1923年に建設された。100年以上が経過していて、至る所でさびが発生し、劣化が進んでいる。前回の補修からも20年以上経過していることから早急な工事が必要だ。

漁協との協議難航で3年以上も工事未着手
しかし、この急を要する補修工事が、当初の予定から3年以上も着手できていない。原因は、工事区域の漁業権を持つ広瀬川漁協との協議が難航しているためだ。
漁協の男性理事が、工事の説明に訪れたおれんじ鉄道の社長らを長時間拘束したり、漁協側が協議に応じないため、工事の見通しが立たない状況が続いている。

出水市、損害賠償請求の準備を進める
この膠着状態を打開するため、出水市の椎木伸一市長は2025年4月22日に開かれた市議会の全員協議会で、次のように述べた。
「漁協を相手とした民事訴訟の提起に向け、現在弁護士と調整をしている」
出水市は、漁協が協議への参加や組織体制の見直しに対して十分に対応していないとして、漁協への損害賠償請求の準備を進めているという。

地域交通の要、おれんじ鉄道の存続にも影響
この問題は単なる一つの鉄橋の補修工事にとどまらない。肥薩おれんじ鉄道は、鹿児島県と熊本県を結ぶ重要な地域交通の役割を担っている。その存続にも関わる可能性のある深刻な問題だ。
椎木市長は、「おれんじ鉄道が今後、早急に補修を実施できるように、国への補助金の請求の準備も含め、助言や協力ができるように対応していきたい」と語る。出水市は、おれんじ鉄道や沿線自治体とも協力し、この問題の解決に向けて取り組んでいくという。
出水市の決断は、長期化する問題に終止符を打つための一手となるのか、地域社会の調和と発展のために、どのような解決策が見出されるのか、今後の展開が注目される。
(鹿児島テレビ)