サントリーHDが、自動で荷物を搬送するラックを導入した新たな配送センターを公開した。このシステムにより、荷物の積み込みにかかる時間が約3割削減される見込みだ。物流業界で人手不足が深刻化する中、人財の価値を高めることも重要だと、専門家は述べる。

自動搬送ラック導入で省力化

荷物の積み込み時間を約3割削減できる、新たな運送システムが登場した。

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サントリーHDは、トラックドライバー不足など、2024年問題に対応するため、荷物を自動で搬送するラックを導入した横浜市の長津田配送センターを公開した。

出荷予定の製品を倉庫から集めた後、二次元コードで管理された荷物台に載せ、自動搬送ラックに投入すると、指定のスペースに運ばれる。

このセンターでは、これまで製品をフォークリフトなどで約120メートル離れた仮置き場に運んでいたため、作業に時間がかかり、トラックが滞留する時間の長期化が課題となっていた。

自動搬送ラックの導入により、荷物の積み込みにかかる時間が約3割減り、滞留時間も1年あたり約2000時間削減できるとしている。

サントリー物流調達部・塚田哲也部長:
2025年になっても24年問題は続いていくと思っているので、物流DXの設備みたいなものは、今後どんどん展開されていくと考えています。それに合わせてサントリーとしても導入していきたい。

物流DXと共進する人財の長期化・高度化

「Live News α」では、デロイトトーマツグループ執行役の松江英夫さんに話を聞いた。

海老原優香キャスター:
物流業界でのこういった取り組みを、どのようにご覧になっていますか。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
物流業界は、2030年には36%近く人手が不足するといった予測もある中で、物流DXが重要ですが、もう一つ、大事な観点が実は人なんです。物流業界の人財の価値も同時に高めていくという視点が大事だと思います。

海老原キャスター:
人こそ、まさに企業にとっての財産ということで、その価値を高めるポイントがあるのですね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
3つの視点があります。まず1つが「期間の拡張」です。例えば、機械やロボットで身体的な負荷が高い仕事を置き換えると、今携わっていらっしゃる熟練の方々が長く働けるようになります。

海老原キャスター:
次が、「役割の高度化」ですね。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
こういったロボットや機械を扱うようになると、人の仕事というのは、むしろそこに指示をしたり、何かあったときなど有事の対応や、もしくは自らのノウハウを教えるトレーナーになります。

明らかに付加価値が高い業務を担当することも、可能性として出てくると思います。

多様な人財が物流業界の変革と新たな創造を促す

海老原キャスター:
そして、「人財の多様性」です。

デロイトトーマツグループ執行役・松江英夫さん:
こういった仕事で役割が変わっていくと、実は人の携わる裾野が広がります。年齢や性別、場所に関係なく物流業務に携わることが出来たり、さらに、異業種からも多様なタレントが参入してくることが出来ます。

これによって、また新たなイノベーションが生み出される可能性も高まると思います。こういった2024年問題をきっかけにして、物流業界が大きく変わって、未来が明るくなるような展開に期待したいです。

海老原キャスター:
今回節約できる2000時間というのは、単純計算で約3ヶ月に相当すると考えると、こういった工夫で、物流業界が抱える課題が少しでも減ると良いなと思います。
(「Live News α」4月25日放送分より)

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