日産自動車は、経営再建の一環として商品ラインアップの強化を発表した。2026年度に4車種を発売予定で、ハイブリッドシステム「e-POWER」の第3世代を搭載した新型エルグランドも公開した。
商品ライン拡充と新体制で危機から再出発
経営が悪化している日産自動車が、商品ラインアップ拡充で再出発を図る。

日産は横浜市西区で22日、「日産新ブランドコミュニケーション発表会」を開催し、再出発の一歩目として、これまで以上に開発や生産体制を強化する方針を示した。

また、2026年度にかけて4車種の発表を計画していることを明らかにしたほか、同年度に発売を予定している日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」の第3世代を搭載した新型エルグランドの一部も先行公開した。

日産 ブランド&コミュニケーション戦略部・大谷由希子 副本部長:
改めて、お客様を第一に据えて考えた新たなブランドコミュニケーションを展開していくことによって、日産の再出発を宣言していきたいと思っております。お客様の生活をどう変えていくかということに、チャレンジしていきたい。

日産はすでに、2025年度に日本で3代目となる新型EVリーフや、軽自動車を発売するとしていて、4月にエスピノーサ社長が就任するなど、新しい経営体制の下、豊富な商品ラインアップで巻き返しを図る。
変革期の勝敗を分けるのは「新しい価値」
「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
新しいブランドコミュニケーション、鈴木さんはどうご覧になりますか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
自動車産業は「電動化」や「つながる車」など100年に1度の変革期を迎えています。
これまで自動車メーカーは車という「モノを売る企業」でしたが、今後は、「移動の体験・データ・社会価値を提供する」ビジネスへと変わっていきます。
この大変革の中で、新しい価値を提示できるのか、これが生き残りのポイントになります。
堤キャスター:
その新しい価値の提示で成功したケースに、どんな企業があるのでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
あのアップルがまさにそうです。1990年代半ば、経営不振と製品迷走により、倒産寸前まで追い込まれました。
それがスティーブ・ジョブズの復帰とともに、 “Think Different”キャンペーンでブランド理念の再定義を行い、「新しい価値を提示する」ことに務めました。
その後、iPhoneなどの革新的製品を次々に発表して、ブランド価値で世界一の企業に返り咲きました。
ブランド価値は成長も信頼回復に「誠実さ・変革」不可欠
堤キャスター:
世界企業のブランド価値で、日産はどんな位置にあるのでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
グローバルブランドランキングを見ると、日産自動車はTOP100にランクインする、数少ない日本ブランドの一つです。
さらに、世界での日産のブランド価値は、過去5年間、右肩上がりで成長しており、2024年にはランキングの位置も上昇しています。つまり、ブランドの強さは健在なのです。
堤キャスター:
ただ、経営危機が表面化したことを受けて、消費者との向き合い方は、より丁寧なものが求められるのかもしれませんね。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
はい、おっしゃるとおりだと思います。今後は、自動車メーカーの新たな存在価値を提示し、革新的な製品を投入して、消費者の信頼を獲得していくことが重要になります。
ブランド再生には時間がかかりますが、企業の誠実さと変革への本気度が、最終的には人々の心を動かします。日産自動車の再出発に期待したいです。
(「Live News α」4月22日放送分より)