三方五湖を臨む「天空のテラス」で知られるレインボーライン山頂公園の運営会社が55周年を迎えました。データが残る1991年のピーク時には及ばないまでも、2024年度は過去30年間で最高の集客を記録。一方で、山頂という立地ならではの課題も見つかり、さらなる飛躍に向けた戦略が求められています。
若狭町と美浜町にまたがるレインボーライン。標高約400メートルの梅丈岳の山頂公園からは三方五湖と雄大な若狭湾が一望できます。
訪れた人はー
「景色が何ともいえずきれい」
「初めてデートした場所なんですよ」
レインボーラインは、1968年に有料道路として開通。2年後の1970年には、山頂公園の運営会社として第3セクター「株式会社レインボーライン」が設立されました。美浜町から若狭町まで日本海と湖の絶景を臨みながら走る全長11.4キロのドライブコースは現在、県道として無料開放されています。
「毎日のぼっています」と話すのは、レインボーラインの竹内利寿社長(68)です。「レインボーライン」の名前の由来を聞くと「三方五湖は5つの湖のブルー5色があり、そこに空のブルー、海のブルーと7つのブルーがそろって7色なんです」と教えてくれました。
竹内社長が案内してくれたのは、4月6日にオープンした「梅丈テラス」です。設立55周年を迎えたことを記念して「五湖(55)の年」と銘打ち、梅丈岳の山頂に新しくテラスを設置しました。客から「山頂はどこか」という質問があったことを受け、山頂付近を整備してテラスにし、山頂を示す石碑もリニューアルしました。竹内社長は「皆さんに登頂気分を味わってほしい」としています。
また、戦略の一つとして食の充実も図っています。“インスタ映え”するスイーツや、県内ゆかりのシェフがプロデュースしたメニューなど、“福井らしさ”を前面に出した料理を季節に合わせて販売しています。
山頂公園の利用者数は2004年度以降、20万人を切り低迷する時期が続きましたが、足湯や天空のテラスの整備など大規模改修を行い、近年は右肩上がりで推移しています。新幹線県内開業もあり、2024年度は約28万人と過去30年間で最多を記録。竹内社長は「一昨年と比べて1割近く増えた。2割がレンタカーで、福井ナンバー、金沢ナンバー、石川ナンバーのレンタカーが特に増えたので、新幹線効果は見られると思う。中京、関西が6~7割という比率はそんなに変わっていない。新幹線が来て福井が注目され、全体的に底上げになった」と分析します。
ただ、見えてきた課題があるとも話します。それは受け入れ人数の限界です。「昨年のゴールデンウィークに初めて1日の入園者が4000人を超えた。1日の受け入れ人数としてはそれが限界」だったといいます。
山頂という立地のため、これ以上は駐車場などの敷地を広げるのは難しく、誘客のネックとなっています。2024年のゴールデンウィークには3キロメートルほどの渋滞が発生し、客の満足度の低下につながることを懸念していました。竹内社長は「これからは周辺観光施設との連携が不可欠」と強調します。「嶺南にはここだけではなく、すばらしい観光地がたくさんある。レインボーラインだけが整備して客を呼んでも一過性になってしまうので、各施設、観光地のブラッシュアップも必要になってくる。この山頂公園からシャワー効果で客を誘導して、周辺観光につなげていくことが大事だ」と話します。
現在、レインボーラインを含む三方五湖周辺の5つの観光施設では、複数の施設を回ると割引されるキャンペーンを展開しています。2024年には、坂井市の芝政ワールドと互いの施設をPRし合う協定も結びました。
新幹線県内開業2年目を迎え、嶺南で多くの集客を誇るレインボーラインから、人の流れをどう周辺の観光施設に波及させるか。そして嶺南一帯、さらには県内全体へと広げていけるのか。そのためにはエリア全体での観光戦略が鍵を握っています。