岩手のブランド牛「いわて短角牛」の革を使った革靴が誕生した。老舗の靴メーカーも認めた革は素材から加工までオール岩手だ。
老舗革靴メーカー「リーガルコーポレーション」が、その長い歴史の中で初めて国産の牛革を採用して作り上げた商品。使っているのは「いわて短角牛」の牛革だ。
「リーガルコーポレーション」とともに製品化したのは2016年の設立以来、短角牛の革を使用した製品の製造・販売をしている盛岡市の「岩手革」だ。
岩手革の中村俊行さんは「リーガルコーポレーションに厳格な基準があり、基準をクリアした革しか使えないけれどもいわて短角牛の革が基準をクリアできたことで靴を作ることができた」と話す。
霜降り肉が主流となっている国産牛は皮が薄いため、靴用には適さないとされている。
大自然の中でのびのびと育てられた「いわて短角牛」は、ヘルシーな赤身肉と耐久性に優れた革が特徴だ。
岩手革 中村俊行さん
「山に放牧し自然に生えた草木を食べて育つのが短角牛の特徴。健康的に運動をして育つことで、きめ細かく繊維が詰まった革になる」
中村さんの「いわて短角牛」への思いは靴だけではない。そのおいしさを知ってもらおうと飲食店を始めた。炭火で焼く居酒屋『原価市場』という店だ。
広告代理店の勤務などを経て飲食店を扱う情報誌を立ち上げた中村さんは、その経験をもとに盛岡市内に県産肉をメインにした焼肉居酒屋を経営している。
岩手革 中村俊行さん
「ある日、畜産業の友人が毎日面倒をみなければいけないし、利益にもならないので畜産業をやめるという言葉を聞いて、岩手から1個の名産の肉が消えてしまったことがあって、もっといろんな人に知ってもらわないと『いわて短角牛』自体も世の中から消えてしまうかもしれない。そんな気持ちがあって、おいしいものを食べられる店を作りたかった」
「いわて短角牛」を食べてもらい、その革を利用しオール岩手の革製品を作りたい。そんな思いから作られている財布やカードケース、バッグの数々。
最高級とされるヨーロッパの牛の革に匹敵するいわて短角牛の製品が並んでいる。
岩手革 中村俊行さん
「革のいいところは経年変化。自分の人生と一緒に歩いてもらえるもの。触った方が本物の牛の革の肌触りを褒めてくれる。そう感じてもらえるのはうれしい」
中村さんのいわて短角牛の革製品への思いは、岩手革で働く職人・佐々木菜美さんも一緒だ。
岩手革 佐々木菜美さん
「厚みのしっかりしてるのが短角牛の革。張りがあり、しっかりして柔らかみもある。(短角牛が)生きていた姿を見ているので、それを伝えたい。失敗しないように一個も無駄にしないように気をつけながら作業している」
岩手革が目指す品質は「親子三代使える」もの、丈夫で使うほどに手に馴染む使用感は短角牛の革ならではだ。
岩手革 中村俊行さん
「今回のリーガルさんで認められたように、今まで出会うことがなかった製品化ができる企業に『いわて短角牛』の革を使ってもらいたい。その中でもっと『いわて短角牛』を知ってもらえるのかなと思っている」
履き心地が良くて長持ちする革靴。ヘルシーでうまみあふれる赤身肉。
中村さんは生産者の思いと一緒にいわて短角牛の魅力を発信している。