神戸市に拠点を置く日本最大の暴力団「山口組」が、対立する組織との抗争を「終結する」と打ち出した。
本当に抗争は終わるのか?独自取材から背景と思惑を探った。

■「山口組は抗争を終結することにしました」山口組幹部から書類提出の申し出
これは今月7日、兵庫県警本部の駐車場で撮られた写真。スーツ姿の男たちは、特定抗争指定暴力団「山口組」の幹部だ。
捜査関係者によると、この数日前に山口組幹部から「ある書類を提出したい」という申し出があったという。
それが…「山口組は抗争を終結することにしました。今後一切もめることはしません」
長年にわたり、複数の暴力団と抗争状態にある山口組。なぜ突然、このような行動に出たのか。

■篠田組長の運営方針に反発 井上邦雄組長トップの「神戸山口組」が新たに組織
山口組竹中正久組長(当時):裁判したるからなこら、覚えとけこら。
絶対的な存在として暴力団の世界で君臨してきた「山口組」。しかし・・・
結成100年を迎えた2015年、司忍こと篠田建市組長の運営方針に複数の傘下団体が反発。分裂する形で井上邦雄組長をトップとする「神戸山口組」が新たに組織されたのだ。
両者の対立は深く、北海道や東京など全国で「衝突」が日常茶飯事に。
「お前逃げてったぞ今、コラ」。
さらに、抗争は徐々にエスカレート。それぞれの関連施設にダンプカーなどで突っ込む事件が相次ぐ。

■「血なまぐさい事件」が続くも今月7日、山口組が兵庫県警に「抗争終結」宣言
記者:篠田組長!関西テレビなんですけど。全国で抗争が相次いでますが?市民生活への影響はどう考える?
篠田組長:………
より一層「血なまぐさい事件」が続く。
2019年、神戸市の商店街を女性と歩いていた神戸山口組系の組長が山口組系の組員に刺され重傷を負った。
その4カ月後、今度は山口組系の組員が、ミニバイクに乗った男に腹などを拳銃で撃たれ重体に。その後も、分裂から10年の間、「血を血で洗う事件」が繰り返され、泥沼化。
2020年、兵庫県公安委員会は、市民に危険が及ぶおそれがあるとして、「山口組」と「神戸山口組」を「特定抗争指定暴力団」に指定した。
終わりが見えない状況の中、今月7日、山口組が突然、兵庫県警に「抗争終結」を宣言したのだ。

■神戸山口組が弱体化「これ以上(山口組が)どこも攻めるところがない」
背景を探るため、取材班が独自入手したのは、山口組の創立110年を記念した機関紙。中にはこんな記述が…
機関誌より:当局による締め付けも年々厳しくなり、制限などを数えればキリがないですが、時代に沿った考え方で活路を模索し、一人一人が己の矜持を持って行動しなければなりません。
山口組は特定抗争指定によって活動が厳しく制限されていることが伺える。その実情について山口組系の元組長は…
山口組系・元組長:(事務所が)使用禁止とかなって不備は不備やね。何人以上で歩いたらだめとか(複数で)飲食店に入るのもダメやし。
また、神戸山口組が弱体化し、抗争のテイをなしていないと話す。
山口組系・元組長:神戸についてはもう衰退していく一方で。カエシ(報復)っていうカエシしてないし。これ以上(山口組が)どこも攻めるところがないねんいま。井上、一人しかいいひんから。

■「神戸山口組は弱体化どころでなく名前があるだけ」ジャーナリストは「これ以上長続きすることはない」と予想
実際に神戸山口組はここ10年で、構成員の人数が9割以上減っている。どちらの組にも属したことがある元組員は、内情について…
山口組・神戸山口組双方に属した元組員:神戸山口組は弱体化どころでなく名前があるだけ。井上組長についていけないと去った人たちは多いが、残った若い衆も引退を望んでいる。ただ、井上組長は聞く耳を持たないので、首を縦に振らないだろう。
果たして、抗争は終結に向かうのか、長年、暴力団を取材するジャーナリストは「これ以上長続きすることはない」と予想する。
ジャーナリスト・鈴木智彦さん:抗争の勝ち負けって何かっていうと抗争して発展した側が勝ちなんですよ。その定理で見ていくとどちらも発展していない。勝者のいない抗争であるならばそれを続けていくメリットはない。
今後の動向が注目される中…
おととい、愛知県豊橋市に山口組の直系団体の組長らが勢揃いしていた。関係者によると、宣誓書の提出を受けて緊急の会合が開かれ、山口組の幹部が『神戸は構うな。とにかく六代目山口組は、前進あるのみ、前進あるのみ!』と大声で発表したということだ。
一方の神戸山口組は、まだ沈黙を守っている。
(関西テレビ「newsランナー」2025年4月10日放送)
