「縦割り打破」に官僚たちは
安倍内閣の政策の継承を掲げて船出する菅新政権。菅氏は「役所の縦割り、既得権益、悪しき前例主義を打破していく」と表明し、「規制改革」や「各省庁の政策の一元化」に取り組む姿勢を強調している。霞が関の官僚たちはどうとらえているのだろうか。
「菅氏は経産省以上に『成長重視』だ」
「経済最優先」を掲げた第二次安倍政権で進められてきたのがアベノミクスだが、そのエンジンと位置付けられた成長戦略を担ってきたのが経済産業省だ。官邸主導で推進された経済政策の多くが、経産省が旗を振る形で打ち出され、安倍内閣は「経産省内閣」だとする声すらあった。

ある経産官僚は「経産省では、官房長官だった菅氏と密接に関わってきた役人も多い」と話し、「これからも官邸に政策提案をしていけるのでは」と自信をのぞかせる。省内には「菅氏は経産省以上に『成長重視』だ」とみる向きもあり、新政権による経済のてこ入れへの期待感は大きい。
「麻生続投」に財務省は安堵
一方で、アベノミクスでは「経済再生なくして財政健全化なし」の方針のもと、景気下支えのため積極的な財政出動が行われ、財政立て直しへの歩みは遠のいた格好となった。
財務官僚のひとりは、経産省がリードした成長路線を振り返り、消費税率引き上げが2回も延期されるなど、歴代政権と違って、安倍総理との距離感のつかみ方に苦労したことを挙げたうえで、「我々にとっては、麻生大臣の存在は大きい。総理経験者の重みがある」と語った。財務省内では、麻生氏の去就が関心の的だったが、続投が固まったことは大きな安心材料となったようだ。「財務省としては特に変わらない。感染症対策と経済再生を粛々と進めるだけだ」

行革の目玉「デジタル庁」設置
菅氏が行政改革の目玉に掲げている「デジタル庁」創設についての受け止めはどうだろうか。
ある内閣府幹部は「菅氏はもともと行政のデジタル化に強い問題意識を持っていた。これだという課題があれば、こう倒すぞという気持ちを強くもって道筋を描くのが菅氏だ」と評し、10万円給付をめぐり浮き彫りになったマイナンバー制度のほころびが発想の原点にあるとみている。
現在、マイナンバー制度の所管は、総務省や内閣官房、内閣府にまたがる一方、経産省が様々なIT政策に取り組んでいる。この幹部は、複数の役所がからむ権限を整理し、デジタル庁を司令塔として、実効性のあるプラットフォームを構築しようというのが菅氏の構想だとの見方を示した。

内閣府の別の幹部は、デジタル庁創設は、「どの役所のどの権限を持ってくるかでかなりもめるので、大変な作業になる」と語り、「失敗は許されない雰囲気だし、結果を出さないといけない」と表情を引き締めた。
新内閣のスタートで、「菅カラー」はどのように打ち出されるのか。それぞれの省庁で、官僚たちは、政権との新たな向き合い方を探ることになる。
【取材:フジテレビ 報道局 経済部】