イオンとイトーヨーカドーが、物価高対策でPB商品の値下げを強化した。具材や包装の簡素化などでコストを削減し、安さと品質を両立する。専門家は「消費者の節約志向に応える現実的な戦略である」と評価している。
イオンとイトーヨーカドー「PB商品」値下げ競争
物価高が続く中、大手スーパーでは割安な商品を増やす動きが強まっている。

イオンはプライベートブランド商品で、食料品を中心に9日から75品目の価格を引き下げる。

冷凍食品では、298円の低価格商品を2日から投入する。

2日午前、千葉市で会見を行ったイオントップバリュの森常之取締役副社長は…
イオントップバリュ・森常之 取締役副社長:
半年以上前から計画をしてたわけですけども、この価格が実現できた。

浅川由梨子記者:
東京・大田区のイトーヨーカドー大森店に陳列されたこちらのカップ麺は、具材を少なくして、麺とスープにこだわることでコストを削減しています。

一方、イトーヨーカドーでも低価格帯の商品の数を、約220商品から約300商品に広げる。

パッケージの色を減らし、野菜の端材などを活用する。物価高の中コストを抑えるなど知恵比べが続いている。
簡素化でコスト削減しつつPB商品の信頼回復も狙う
「Live News α」では、データサイエンスの専門家である西内啓さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
プライベートブランド商品の拡充には、どういった狙いがあるんでしょうか?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
消費者の節約志向の高まりに対応して、価格競争力を維持する狙いが大きいと思います。
例えば、イトーヨーカドーの「セブン・ザ・プライス」というブランドは、メーカーが作るナショナルブランド商品と比べて、最大20%ぐらい安い価格設定を行ったんですが、2024年度の売り上げが前年度の約2倍という大きな成長を遂げました。
堤キャスター:
物価高が続く中で、安くて良いものをどうやって実現しているんでしょうか?
ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
最近では、パッケージデザインをとにかく簡素なものにしたり、物流を効率化するとか、商品設計自体をかなりシンプルなものにするなど、コスト削減のためにいかに要らないものを引き算するかというアプローチを進めています。
それによって、高品質と低価格の維持を実現しているんです。けれども、その背景事情として、近年一部の高付加価値型のPB商品が、価格と品質を維持したまま利益率を確保しようとすると、どうしても内容量を減らさなければならなくなりました。
それがSNSなどで「ステルス値上げなのでは?」と炎上も起こり、そういったことも関係しているのではないかと思います。PB商品に対する消費者の慎重な見方を、この場で払拭したいというのも一つの狙いではないでしょうか。
大手スーパーのPB拡大が食品メーカーとの競合を加速
堤キャスター:
品質と価格のバランスを図りながら消費者に支持される商品づくり、なかなか大変ですよね?

ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
現在の経済情勢で、低価格と高品質なプライベートブランドを維持し続けるというのは並大抵の努力ではないです。
イオンやイトーヨーカドーのPB戦略というのは、現代の消費者ニーズに応える有効な手段ではあるとは思うんですが、その一方で、一般にスーパーマーケットは平均的な営業利益率が2%ほどと、かなり利幅の限られたビジネスであることも確かです。
イオンやイトーヨーカドーの大手だからこその強みを活かして、一部メーカーの機能を代替して初めて、このような商品の販売が可能になってると思います。
堤キャスター:
例えば、プライベートブランドと、メーカーの商品が競合するということもあるわけですが、これについてはいかがですか?
ソウジョウデータ代表取締役・西内啓さん:
食品メーカーにとっては、頭が痛いと思います。スーパーマーケット業界が最重要顧客である一方で、今後は、より大きな競争相手という直接的にメーカー機能の部分で競合するという側面も強まってくるので、食品メーカー側も今後、同様のコスト削減努力というところに力を入れてくるのではないかと予測しています。
堤キャスター:
削れるところを削り、残すところは残す。企業努力から生まれた商品は、この物価高においてとてもありがたいと感じます。店舗での選択肢が増えることを期待したいです。
(「Live News α」4月2日放送分より)