菅氏「再編も一つの選択肢」

NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」をめぐる預金の不正引き出し問題で、被害が取り沙汰された「地方銀行」。
この問題では、NTTドコモ側が「本人確認が不十分だった」と認め謝罪したものの、地銀側のセキュリティーの甘さも指摘された。

地銀をめぐっては、今 その一挙手一投足に注目が集まっているあの人の発言が波紋を広げている。
自民党の菅新総裁は、9月2日の自民党総裁選の出馬表明会見で、地銀について「将来的には数が多すぎるのではないか」と言及した。
それに続き、3日の記者会見でも「再編も一つの選択肢になる」と踏み込んだ。

自民党総裁選 出馬表明会見(9月2日)

この発言を受けて、ある地銀関係者からは…

地銀関係者:

これまでの方針を踏襲したもので、それほど驚きはないが加速する流れは避けられないか。ただ、枕詞として『個々の銀行の経営判断になるが…』とつけていたので、再編を迫られるようなことにはならないのでは

――このような声が聞かれた。
これまで通りの方向性という意味では衝撃は大きくないようではあるが、菅氏の発言に緊張感をにじませた。

再編促進へ…規制緩和や‟エース”投入も

現に政府は、地銀が経営統合を進めやすくなるよう、地域内の貸し出しシェアが高まっても独占禁止法を適用しない特例法を5月に成立させている。

地銀の統合をめぐっては、2016年に十八銀行(長崎市)と親和銀行(長崎・佐世保市)を傘下
に持つ「ふくおかフィナンシャルグループ」が経営統合することで基本合意した際、独占禁止法の問題で公正取引委員会の審査が長期化。結局、承認まで2年以上かかった例がある。
こうした足かせを取り除こうと、規制を緩和した形だ。

金融庁の動きも加速している。
金融庁は7月の定期人事異動で、地域銀行を担当する銀行2課の課長に、大手銀行を担当する銀行1課の課長を起用した。
銀行1課長は、歴代の長官が経験した重要ポストで、これまでは総務課長などに昇進するケースが多く、銀行2課長にスライドしたのは異例人事だ。
地域金融機関の経営状況が一段と厳しくなるのを見越して、地銀再編を促すために“監督局のエース”を投入したものとみられている。

‟台風の目”の動きも活発化

また、地銀との連携による「第4のメガバンク」構想を掲げるSBIホールディングスは、現在 島根銀行、福島銀行、筑邦銀行(福岡・久留米市)、清水銀行(静岡市)の4行と資本提携しているが、出資先を10行程度まで拡大させたい考えを示している。

地銀側は、様々な金融サービスを手がけるSBIホールディングスのノウハウに期待し、SBIホールディングスは地銀の経営再生で収益拡大を狙う構図だ。
SBIホールディングスには、金融庁の元銀行2課長ら元幹部数人が退官後に再就職しており、“地銀再編の台風の目”として注目されている。

SBIホールディングス 北尾社長(2009年撮影)

「第一」「第二」2つの地銀…それぞれの思惑

「苦境が続く地銀」と一口に言っても、地銀には「第一地銀」と「第二地銀」の2つがある。
第一地銀は「全国地方銀行協会」会員の銀行のことで、横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行、福岡銀行などが属している。

一方、第二地銀は「第二地方銀行協会」の会員であり、比較的規模が小さく、同じ地銀でも第一地銀と第二地銀では状況が異なる。
ある金融関係者は次のように語る。

金融関係者:
第一地銀はそれなりに利益を上げているし、危機感はそんなにないと思う。
危機感が強いのは、ギリギリの第二地銀。
ただ、第一地銀とくっつきたいかというとそうでもない。
第二地銀は「取り込まれたくない」し、第一地銀は「抱えたくない」。
また、SBIとの提携については「SBIに助けられた“限界地銀”と見られたくない」という見方がある。

地銀再編といっても、統合だけでなく、看板を守りながらシステムの共有や運用の共同化を探ることも一つではないか。

地銀を取り巻く経営環境は、長引く超低金利や人口減少に加えて、新型コロナウイルスの影響が直撃し、一段と厳しさを増している。
経営改善が急がれる中で、地域の中小企業などの資金繰り支援にも追われている。
地方創生の役割を果たすためにも、地銀再編の道は待ったなしの状況にある。

(フジテレビ経済部 土門健太郎記者)