様相が変わった「コロナ分科会」

専門家らで構成されたコロナ対策分科会の様相が今年後半にかけ変わっていった。緊急事態宣言の全面解除前後の2021年9~11月、頻繁に開かれた分科会。政府と分科会の間では水面下の調整が続けられていた。

これまで専門家主導で行われてきた分科会の議論は、“制限を緩和していきたい”政府と“感染拡大防止第一”の専門家の間での「対立」が顕著に見られるようになっていた。それはこの期間に出された分科会の提言案の中でも2つの点で見て取れた。

「トリアージ」の議論求める意見も…コロナ対策分科会(2021年11月8日)
「トリアージ」の議論求める意見も…コロナ対策分科会(2021年11月8日)
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(1)提言案から消された文言「トリアージ」

11月8日に開かれた分科会。この日は、感染状況の指標について、これまでの4段階の「ステージ」分類から、医療ひっ迫の度合いをより重視した5段階の「レベル」分類に変更した。

分科会前に、FNNが入手した提言案では、レベル4(避けたいレベル)について「この段階になるとトリアージの検討も現場で求められる」と書かれていた。トリアージとは、多くの傷病者が発生した場合に、緊急度や重症度に応じて治療優先度を決めること。

しかし、11月8日の分科会に出された案では、「この段階になると集中治療の再配分等も現場で検討せざるを得なくなる」と文言が若干修正され、それが了承された。

一見、意味合いはそう大きく違いがないようにも読めるが、治療優先度を意味する「トリアージ」の文言が入ると、ニュアンスは変わってくる。「様々な意見から表現は変えていくので、よくあること。表現が強いというような意見もあった」と話す関係者もいた。修正の背景には、表現のトーンを抑えたい政府の意向が透けて見える。

実際、この日の分科会では、委員から「トリアージなどの順位づけについての倫理的・法的・社会的な課題は、第6波が非常に大きくなれば、大きな問題になり得る課題。トリアージなどについての早急な議論を進めることが不可欠」とトリアージの議論を求める意見も出されている。

政府と分科会の間の綱引きが垣間見える一幕だ。

緊急度や重症度に応じて治療優先度を決める「トリアージ」
緊急度や重症度に応じて治療優先度を決める「トリアージ」

(2)“酒類提供・時短営業緩和”の是非めぐり・・・大幅削除

分科会に出された提言案の文言が大幅に削除された時もあった。

「ワクチン・検査パッケージ」が提案として初めて出された9月3日の分科会のこと。政府の要請を受けて、尾身会長がまとめた提言案だったが、医療逼迫が厳しい状況下で出したことに一部委員が強く反発。分科会の開催時間は通常2時間~2時間半程度だが、この日は、3時間を要した。

大きく削除されたのは、「ワクチン・検査パッケージが本格的に活用されるまでの間の日常生活」という項目。

この時点では、「ワクチンを接種した者の場合」とした上で、旅行・会食(認証店)・カラオケについて、「感染防止策を行いつつ、実施可能」と明記されていた。飲食店についても、感染対策の下で、「酒の提供や営業時間短縮要請の段階的な緩和が可能」とした。

しかし、分科会の議論では、「今出すのはミスリーディングではないか」との意見が続出。その部分は全て削除された。了承された提言では、「感染状況等を踏まえて、例えば、飲食、イベント、移動、旅行等について段階的に進めていくことが考えられる」との表現に留まった。

尾身会長は、提言について記者会見で「基本的には賛成をしてもらったが、一部の強い懸念が示されたことも事実。これはガードを下げていいというメッセージでは全くない。(削除したのは)メッセージが誤解されると困るのが主な理由だ」と説明した。

政府の意向を反映した提言案が、専門家によって大きく修正されたケースだった。

会見で説明する尾身会長(2021年9月3日)
会見で説明する尾身会長(2021年9月3日)

「オミクロン株」で第6波は?

現在、世界各地で感染が拡大する新たな変異株「オミクロン株」による感染拡大の第6波が懸念されている。

12月22日、大阪でオミクロン株による市中感染が国内で初めて確認されたことが明らかになった。これを受けて、同日、厚生労働省の専門家会合は「感染拡大が急速に進むことを想定すべき状況であり、医療提供体制が急速にひっ迫する可能性がある」との見解を発表。人の移動が増える年末年始を前に、市中感染の確認報告が続くなど懸念は急速に強まってきた。

新型コロナ対策アドバイザリーボードで挨拶する後藤厚労相(2021年12月12日)
新型コロナ対策アドバイザリーボードで挨拶する後藤厚労相(2021年12月12日)

しかし、いまだオミクロン株についての十分な知見が得られていない上に、そもそも第5波が急減した理由が明確には分かっていない以上、政府や専門家も拡大予測は難しい状況だ。(尾身会長は急減の理由について「感染対策強化」「人流の減少」「ワクチン接種率の向上」「高齢者施設などでの感染者の減少」「気象の要因」の5点を挙げている)

日本国内も各国と同様に、オミクロン株による感染拡大のスピードをどれだけ抑えられるかという段階に入ってきた。

2022年、再びコロナ分科会が開かれ、「行動制限緩和の是非」をめぐり、政府と専門家の間の綱引きが行われることになるのか。

(執筆:フジテレビ経済部 コロナ対策担当 土門健太郎)