2回目の「備蓄米」入札が26日から始まったなか、老舗の米店が一時閉店する事態となっている。店の張り紙には「米屋ですが、米ありません」という悲痛な叫びが書かれていた。
米不足の背景には“転売業者”の存在があると米店の社長は語る。

「米屋ですが米ありません」一時閉店する米屋も…

政府が2回目に放出を予定している備蓄米の入札が26日から始まったなか、1回目に放出された備蓄米についてJA全農系列の「全農パールライス」が、すでに首都圏の一部店舗に出荷を開始していることが分かった。
ブレンド米などとして店頭に並び始めているということだ。

この記事の画像(14枚)

別の大手卸業者は、27日にも出荷を始め、早ければ28日店に並ぶとしている。

そんな中、米が底をつき、一時閉店に追い込まれた店がある。
店先にはこんな張り紙が張られていた…。

「米屋ですが米ありません。良質な米が安定供給できるまで店を閉めます。ごめんなさい」

老舗米店「まつもと米穀」
老舗米店「まつもと米穀」

京都・舞鶴市で90年続く老舗米店「まつもと米穀」。
年間300トンの米を取り扱ってきたが、必要な量を仕入れることができなくなり一時閉店を余儀なくされたのだ。

「約束していた米が他に流れた」

閉店に伴い、従業員5人を解雇するという苦渋の決断も…。

まつもと米穀(3代目)松本泰社長:
売る物がないのはどうしようもない。こんなことが起こるなんて考えられない。悔しい気持ち。本来こちらが約束していた米が他に流れてしまった…。

これまでこのコメ店は、近隣の農家を中心に直接コメを購入していたという。
しかし、2024年秋から農家が取引のなかった業者にコメを売るようになり、仕入れができなくなった。

社長は、政府の備蓄米が調達できないか関係する業者に打診したが、これもめどが立たず…。
まつもと米穀(3代目)松本泰社長は、「備蓄米は放出を決めるタイミングが遅すぎたのではないか」と話す。

「米買います」突然農家に見知らぬ人物が…

コメ不足の背景にあるという“転売業者”。
佐賀県の農家では1月、突然見知らぬ人物が現れたといいう。

佐賀県内の農家:
「ブーン」と車で来た。ぱっと見“廃品回収屋”のようなこの人誰だ?という人が「コメを買いますけど」と軽トラックで来た。
JAには失礼かもしれないが、外の業者に流した方が収入になるのでは?という感じになる。

この農家は、業者からJAよりも数千円高い60キロで2万円を超える金額を提示されたが、最終的に売らなかった。

この状況に農業ジャーナリストの松平尚也氏は、「農家側も米の生産コストが上がり高い値段につられて売ってしまう。米の流通を巡る混乱の中でしわ寄せが米店にまで行っているのが問題」と語る。

米高値は酒造りにも大打撃

一方、米不足は日本の酒造りにも大打撃を与えている。

山形県南陽市にある酒蔵「東の麓酒造」。
この酒蔵で高い人気を誇る、ブランド米を使用した純米吟醸酒「つや姫なんどでも」。

仕込みに使う“つや姫”は、年間で約9トンに及ぶが、価格が7割ほども上がり買い付けようにも高すぎて諦めざるを得ないという。

東の麓酒造 新藤栄一常務:
(つや姫は)1俵(60キロ)あたり1万5000円ぐらい値上がりしていた。このまま(米の)高値が続くとすべての商品を値上げせざるを得なくなる。

専門家は、流通の変化が現場に混乱を招いていると指摘。

農業ジャーナリスト 松平尚也氏:
(米は)1990年代後半から低価格で安い状況が続いていた。それがいきなり状況が変わり、関係者が非常に苦労していると思う。
去年から農協にも米が集まっていない中、まだ田植えも終わらない状況で「価格を上げる」といっている。そういう動きが全国に波及するといわれる。
そうなると(今年の)秋以降米価格は高止まりする見通し。
(「イット!」3月26日放送より)