信者による教団への高額献金などが大きな社会問題になっていた旧統一教会について、東京地裁は25日午後、解散を命ずる決定を出した。旧統一教会を20年以上取材してきた鈴木エイトさんと、異例の解散命令の理由と旧統一教会の今後について見ていく。
初の「法令違反」認定で解散命令に踏み切る
青井実キャスター:
東京地裁は旧統一教会に解散命令を出しましたが、どう受け止めていますか?
鈴木エイトさん:
司法が適正に判断をしてくれたと、まずはホッとして安心はしました。
青井キャスター:
では、異例の解散命令の理由と、旧統一教会の今後について見ていきます。

宮司愛海キャスター:
まずは、東京地裁が解散命令を出した理由から見ていきましょう。
今回争点となったのは、解散命令の要件にある「法令違反」に、「民法上の不法行為」が含まれるかどうかでした。
旧統一教会で問題となっている高額献金や霊感商法などは、いずれも「民法上の不法行為」にあたります。これまで同じ要件で解散命令が出た事例は、オウム真理教と明覚寺の2件ありますが、いずれも「刑事事件」で立件されていました。
そして、国側は「民法上の不法行為」が解散命令の要件にある「法令違反」にあたるとしていますが、一方で教団側は「民法上の不法行為」は該当しないと争っていました。

そうした中で、東京地裁は25日、「民法上の不法行為」が解散命令要件の「法令違反」にあたるという初めての判断を示し、旧統一教会に解散命令を出しました。理由について、「旧統一教会に法人格を与えたままにしておくことは極めて不適切で、解散によって法人格を失わせるほかに、適切かつ有効な手段は想定しがたい」「信者により行われた献金や勧誘などで、これまでに例がない甚大な被害」と指摘した上で、「現在も問題がなお看過できない程度に残存」として、「解散を命ずることが必要というべき」と強調しました。

SPキャスター 山口真由さん:
今まで信教の自由の観点から、組織的な刑事犯罪に非常に限定的に認められていた解散命令の要件を大幅に緩和したという意味では異例の判決だと思います。ただ、3月初めに最高裁が不法行為も入るという判断を示していたので、地裁独自というよりは司法全体の判断、方向性かなという気がします。
宮司キャスター:
さらに東京地裁は、「教団のコンプライアンス宣言後も、被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、看過できない規模の被害が生じている」とも指摘しています。
鈴木エイトさん:
実際に、教団が2009年にコンプライアンス宣言を出しているんですけど、実は韓国への送金額はコンプライアンス宣言後の方が300億円近く増えているんですね。その点からも、東京地裁が継続性、近年まで被害が続いていた所を認定したのは大きいですね。

宮司キャスター:
そして、教団側がコメントを発表しました。
「今回の判決(決定)内容を重く受け止めつつ、東京高裁への即時抗告を検討して行く所存です。今回の決定は、誤った法解釈に基づいて出された結果であると言わざるを得ず、当法人としては到底承服できるものではありません」「(今回の決定について)民法上の不法行為が、宗教団体の解散事由に該当するということに他ならず、日本の信教の自由・宗教界全体に、大きな禍根を残すものと考えます」としています。
鈴木エイトさん:
非常に論点がずれていますね。ここまで民法上の悪質な行為を繰り返し継続して起こしてきたのが、統一教会以外にはありえないと思うんですよね。なら他の宗教団体は、これを機に自分たちはこんなことはしていないんだと、ちゃんとした団体なんだという事をきっちりアピールすることが大事だと思います。統一教会側は、国による宗教迫害だみたいなアピールをしていますが、決してそうではなくて、特定の統一教会という団体に対する司法の判断なので、そこは履き違えないようにしてほしいです。
青井キャスター:
山上被告が起こした安倍元首相の銃撃事件をきっかけに問題が浮き彫りとなった訳ですが、この辺りはどうですか?
鈴木エイトさん:
複雑な思いは当然あります。ただ、山上被告が事件を起こす前からこういう問題は現絶してあったと。僕を含めてメディアであったりとか、社会が気付かず、被害が継続して重大な事件まで起こしてしまった。そこはやっぱり反省すべきで、そこの背後にあった社会問題、そこは是正すべきであって、そこを履き違えずに、単純に国がこう言ったみたいな議論はちょっとおかしいのかなと思います。
「信教の自由は基本的には維持される」
青井キャスター:
解散命令を受けて、旧統一教会はどうなっていくのでしょうか。

宮司キャスター:
旧統一教会側は、即時抗告で不服を申し立てることができ、最高裁まで争うことは可能です。しかし、東京高裁でも解散の判決が維持された場合、解散命令の効力が発生するので、財産の清算手続きができるようになったり、教団は宗教法人格を失って税制上の優遇措置を受けることもできなくなります。ただ宗教活動を継続する事は可能です。
青井キャスター:
教団へは、どのように影響があるんでしょうか。
鈴木エイトさん:
任意団体、宗教団体として継続はできますが、税制上の優遇がなくなって、献金なども代表者が所得税を払わなきゃいけなくなります。そういった意味で、国税や税務署のチェックは当然入るのでチェックが入らなくなるという事ではないんですけど、信教の自由が侵害されると教団は言っていますが、実際に家庭教会として信者の内面まで踏み込む事はしていないので、そこに関しては信教の自由も基本的には維持されると思います。

宮司キャスター:
教団の規模感について、2022年9月に教団側が会見で「国内で活動信徒が10万人近くいる」と発言しています。統一教会のHPには「全国に家庭教会が284ある」と記載があり、毎週日曜日に礼拝を実施するなどしているということです。
青井キャスター:
今後、増えたり減ったりがあり得るんですかね?
鈴木エイトさん:
脱会者もある程度増えると思うんですけど、逆により一層教団に結合する可能性もあります。法人として施設、不動産を持てなくなるので、信者が集まる場所は個々の教会長の自宅など、こぢんまりとしていく可能性はあります。そういう点において活動は少し収まる可能性はあります。

宮司キャスター:
韓国本部への影響はいかがですか?
鈴木エイトさん:
元々韓国本部を経由して、世界中の教団関連団体、会社などに日本から調達したお金が流れているので、今その流れが止まっている、これはなんとかして教団本部が再開させたがっているんですけど、今後どうなっていくのか。教団側が独自に、幹部などにお金を運ばせてるんじゃないかと弁護士団体は指摘しているんですね。そんな中で、被害者に賠償されるべき財産がなくなってしまわないような法整備が必要だと思います。
青井キャスター:
解散命令によって、被害者への賠償の行方はどうなるのでしょうか。
鈴木エイトさん:
清算手続きが始まる段階で、清算にどれだけ強い権限が付与できるかってところだと思います。破産管財人と同様の権限が付与できるような法整備を考えてほしいなと思います。

青井キャスター:
まだ終わったわけではないと被害者の声もありますが、今後どのように手順がなっていくのでしょうか。
鈴木エイトさん:
当然これは一つのきっかけに過ぎず、これで解決したわけではないし、被害を訴える人達に誹謗中傷が飛んでいる現状もあります。被害者が適切に声を上げられて、そこに誹謗中傷が向かないような対策、教団側も真摯に反省して、向き合うような姿勢を見せてほしいですよね。
(「イット!」3月25日放送より)