2025年末に問題が初めて報じられてから3カ月余りが経ちました。この間、フジテレビの経営陣による二度の記者会見が行われ、当時の会長と社長が辞任しました。

この問題をめぐって現在は第三者委員会による調査が進められている一方、フジテレビ社内では2月に「再生・改革プロジェクト本部」と若手中堅社員で構成された「再発防止・風土改革ワーキンググループ」が発足しました。

そして「コンプライアンス体制の実効性の強化」など6項目の取り組みも始められています。

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「今、フジテレビをどう思いますか」
視聴者の皆様の声と向き合い、反省と再生に向けた現状について、お伝えしていきます。

今回、フジテレビの20代と50代の報道局員が、東京都内を中心に12カ所で街頭インタビューを行い千人を超える方にお声がけし、216人の方からお話を伺いました。

取材は3月8日午後、東京・有楽町で始めました。

1人目の男性:
「やっぱり初期の対応はまずかったよね。それに限るんじゃないですか。クレームって大勢でパッとやっておかないと後を引いちゃいますよね」(Q、特にどの部分で?)「それはもう会見の、あの重役の会見のところで分かりますけどね。一番目に全部さらけ出さないと、 一つの社員のことが全部社長の方の責任になっちゃうんで。そういう会社ごとの不祥事ってみんなそんな感じですよね。初期の対応が悪いと思います」(Q、反省すべきはしっかり反省して)「それはもう本人たちがやることなんで、僕らに関係ないですけど頑張ってください」

2人目の女性:
「正直、詳しく分かっておりません。ふわっとしか…さわりも分かってないぐらいなんですけど、CM出してくださる企業が減ってるとか…悪い意味で昭和って感じが残っちゃってるんでしょうね、多分。やったことがまずいのであれば本当にまずいんでしょうけれど、ただ全然挽回可能だとも思っていますので、ここで対応さえ間違えなければ回復できるんじゃないかな。ぜひ頑張って」

3人目の女性:
「最近テレビ見てないので、そんな分からないんですけど。でも、なんか最近下火になっちゃいません?」「みんな一生懸命番組作ろうと思ってるでしょうし、頑張ってくださいねしか言いようがないかな」

4人目の男性:
「古い体質、経営陣の頭が古いんじゃないですか。多分、50年前とか60年前だとそんなに問題視されなかったかもという気もする」「もうバッサリ全部辞めさせて、新しい人に変えていったほうがいいと思います」

5人目、6人目の女性:
「膿っていうか悪いところがあるんであれば、全て出し切って正しい形で会社を運営していってほしいなっていうのは思いますけど」
「今回のことで悪いイメージになってしまったかなってのはあります」

7人目の男性:
「今までの経営陣の作ってきた土壌っていうのが、いろんな形で膿が出てきてしまったのかなっていう印象があります」「本当に生まれ変わったというところをアピールして、スポンサーさんにもまた戻ってきてもらえるようにしてほしいなっていう気はします。今でもフジテレビ見てますから」

8人目の女性、9人目の男性:
女性「フジテレビ?だめでしょう、とんでもない。だって、トップの方の会見自体が会見になっていない」
男性「報道番組、テレビとかで言ってることは信じられないっていうのもずいぶん前から分かっていて、全然見ないですテレビ番組」
女性「下手するとフジテレビ消えちゃいますよ、本当に。その辺は甘く見ないがいいと思う」
男性「1回もうダメになって、そこから這い上がればいいんじゃないですか」

10人目の男性:
「事実関係を全部調べて、 次起きないようにどうすればいいのかって対応策を考えてほしいみたいな感じです」「公序良俗に反するといいますか、世間からそういうふうに見られてしまうことがあったので、そこはまずかったかなと思います」

11人目の男性:
「問題が次から次へ出てくるような感じですよね。フジテレビはダントツに娯楽性が高かったような印象があるんですよね。今はこの問題の方に目がいっちゃって、不明確な、不明瞭な、はっきりしない、全体像が見えない、そんな印象を受けています」

12人目の男性:
「会社のイメージを刷新して、新しい経営体制とか、経営方針を出されるのが一番」「いろいろ楽しい番組とか好きな番組も多いですし、ぜひ期待したいです」

13人目の女性:
「テレビの世界ってキラキラしてるのかなと思ってたんですけれど、なんか一つ出るとどんどんどんどん出てくるので、正直怖いなみたいなところはあるんですけれど」「面白い番組はたくさんあったりとか、悪いことばっかりじゃないのはもちろん私たちも分かっているので、ぜひ新たな気持ちで、フジテレビが日本のメディアとかエンタメからなくなるっていうのは想像ができないぐらい大きな存在だと思うので、そこはしっかりときれいさっぱりになって、また我々が気持ちよく番組見られるような社内制度というか社内形態というか、そういったものにしていただければ、また我々としては楽しく番組見せていただけるかなと思うので、私としては頑張ってくださいっていう感じです」

14人目の男性:
「やっぱり早くどんな状況なのかっていうのをお伝えするのが一番大事なのかなって思っておりまして。本当のところが全然わからないかなと思っているのが、やはり皆さん不安にさせてるのかなっていうふうに思ってますけれども、コンプライアンスっていうか、そういったところとか、会社の保身みたいなところが非常にあったんじゃないかなと思っていて」

15人目の女性:
「やっぱり対応が悪かったんじゃないかな」「とどめがあの社長の会見ですよね。あれが私的にはえ?っていう感じをしました、最初の会見の時に」「やっぱり隠蔽するしてるんじゃないの?っていうふうには勘ぐられるような対応だったような印象は持ちました」

16人目、17人目の女性:
「いろいろなところに影響が出てると思うので、この実態はしっかり受け止めなくちゃいけないのかなっていうところはあります」
「一人の方がずっとトップを務められていると、なかなか社員の声が行き届きづらいというか、そういった企業の体質になってしまったのかなと思った」
「全てにしっかり向き合って改善につなげて欲しいかなというふうに思います」

18人目の男性、19人目の女性:
「YouTubeからだけの情報なんで本当かどうかわからないんですけど、やっぱり大谷選手に関するあの写真とかああいう話があって、ちょっと印象が悪くなったかなというのはあります」
「フジと言ったら『踊る』っていう感じで、もう次もすごく楽しみにしてたので、また盛り返してほしいなとは思いますね。ここで一旦反省はしていただきたいと思うので」

20人目の女性:
「フジテレビについて普段あんまり見ないので、本当にあんまり知らなくて」

この日、有楽町で取材に応じてくださった方は20人でした。番組ではこの後1週間かけて、多くのご意見を伺いました。
東京都内を中心に12カ所で、あわせて216人の方からフジテレビに対する声をいただきました。

東京スカイツリー前の20代の方からは「時間が解決する問題ではない。真摯に向き合うべき」、そして巣鴨でお声がけした50代の方からは「一つの失敗で、積み上げてきたものを一瞬で失うと思った」、新宿でお声がけした50代の方からは「組織としてコンプライアンスを守る意識が欠如している」とのご意見をいただきました。渋谷では20代の方から「今回の事案に関係ない番組がなくなってしまうとしたら残念」との声をいただきました。

今回いただいたご意見の中で多かった「フジテレビに今求めること」についての声をまとめました。

新宿・女性:
「本当に女性をもっと大事にしてください。人間は平等ですからね、皆さん」

新橋・男性:
「世間とどれだけ乖離しているかっていうことを皆さんがわかっていなかったら何もできないと思います、改善は。第三者委員会が出した結論よりも、皆さんで変えるということをしっかりとやっていただきたいと思います」

渋谷・男性:
「客観的に見てどこが悪いかというところをきちんと認識して、俯瞰して見られないといけないと思う」

新宿・女性:
「『楽しくなければテレビじゃない』ですけど、楽しかったら何でもいいわけじゃないので、人権っていうことも、もっと大事にしないといけないんじゃないかなと思います」

大手町・男性:
「もう見栄を張らずに、平らでいいから、上にいこうとか下に下がるとか考えず平々凡もでいった方がいいんじゃないのかな」

砂町銀座・女性:
「本当にろくでもないわね」(Q、特にどの点が一番)「特にどの点っていうか、みんなじゃない?もともとが良くないし、日本の組織ってあんなもんですかね」「頑張ってね。もう少し真面目になってね」

東京スカイツリー前・男性:
「もう再生できますよね。全然問題ないと思います。そんな会社いっぱいありますから」「改革とか風土を変えるっていうことは普通の会社でやってることですから、やればいいんですよ」

大手町・男性:
「今回の問題とは直接関係ありませんけれども経営陣の方があまりにも高齢ですとか、そういうことになりますと、世の中の、社会の、今の状況についていけないということがどうしても出てまいりますので、そこのところをやっぱり考え直された方がいいんじゃないかなと思いました」

本郷・男性:
「従来の伝統とか守るべきところは守って今の時代に合うように、視聴者のニーズに合うように、視聴者が求めているものをしっかり社内の改革に組み入れてほしいなと思います」

新橋・男性:
「社外役員を増やすとか、社外から見る目を増やすような体制も求めなくていけない」

新橋・男性2人:
「俺はフジテレビは応援してます」「僕も応援してます」「信用回復するための時間と会社の姿勢を取り戻しさえすれば『フジテレビこれだけ変えました』ってところが、もっと発信してくれた方が世論も味方につけられる」

新橋・男性:
「改善されてるところは非常に素晴らしい取り組みがあるかと思うので、どんどんこのまま取り組んでいければ」(Q、取り組みは伝わっていますか)「伝わってます」

砂町銀座・男性
「一般の視聴者に対するより、役員に気を使ってるっていうか、そんな感じだよね。やっぱりテレビは一般の人が見るから、いい番組作ることだよ」

最も多かったフジテレビに対するご意見

そして、最も多かったフジテレビへのご意見が「正直に明らかにしてほしい」という声でした。

東京スカイツリー前・女性:
「悪い言葉で言うと隠蔽。そうじゃないとすると、なるべく角が少ないような形で通り過ぎれることを考えたことかなって思います」(Q、まだ調査中で、幹部の会見ではプライバシーとか調査中で言えないということだったと思いますが、そうは映っていらっしゃらない)「腑に落ちないし不透明」

新宿・男性:
「やったことはちゃんと表に包み隠さず出してもらった、そういった上で新しく生まれ変わって、また楽しいテレビ局になってもらえたらというふうに思います」

東京スカイツリー前・男性:
「週刊誌に書いてあるのが全部本当みたいなふうに言われますけど、何が本当か嘘かっていうのをはっきりすることができればいいんじゃないかなと思います」

渋谷・女性:
「大まかに隠してるような感じの会見なので、本当のところはどうなんだろうっていうのは思います」「本当のことを教えてほしいです」

大手町・男性:
「これだけ世間から悪いふうに言われて思われてると思いますので、素直に言うことが一番なのか、なと思います」

1997年までフジテレビ本社があった新宿区・曙橋の商店街も訪ねてみました。

男性:
「フジテレビにとっていい薬だよ。いいんじゃないですか、一度止まって振り返ってみてください。なんでもそうだと思うよ」

男性:
「いろんなものを包み隠さずというのと、あと何よりもスピード感だと思う」

男性:
「今までの体質でやってきたことが明るみに出て今の状態になったんじゃないですか」「今は耐えて正直に生きろ」

男性:
「正直に話すことじゃないですか。いろんなことをもう前向きに全部正直に話していって、皆様の理解を得て、ダメだったから次こうしていきますっていうふうに考え方を改めていくっていうことが一番いいんじゃないでしょうか」「正直に話しましょう、いろいろと。それが一番いいと思います」

今回の取材では216人中の3割に当たる60人以上の方から「隠さず正直に話して事実を明らかにしてほしい」との声がありました。

フジテレビのイメージを「人」に例えると

今回の問題を踏まえて、フジテレビでは会社の風土改革に着手しています。フジテレビの企業風土について、町の人に聞きました。

「フジテレビという会社を人に例えたらどんな人柄と言えそうですか?」

大手町・男性:
「すごく難しいですね、でも本当に明るい人っていう感じですよね。クラスにいる雰囲気盛り上げるような人」

渋谷・女性:
「本当に目立ってる人みたいな」

東京スカイツリー前・男性:
「めざましテレビだったりとか、まる子ちゃんとかサザエさんとかもやってて、結構庶民的」

大手町・男性:
「社交的で誰とでもコミュニケーション取れるような明るいキャラ」

新橋・男性2人:
「陽キャ、超陽キャ」
「調子乗ったらとことん目的に向かって走っていく」

一方で厳しい声もたくさんいただきました。

渋谷・男性
「印象悪いですね、やっぱり」

銀座・女性
「一連の騒動を見ていたら、上の方はジャイアンみたいな感じ」

本郷・男性:
「自己中心的っていうか、わがままっていうか、そういうところがあったんじゃないか」

巣鴨・女性2人:
「お代官様。ねじ伏せようとしてる感じがある」
「ずるい」

砂町銀座・男性:
「表裏があるような、二重人格じゃないですけど、そういった雰囲気になっちゃってる」

大手町・男性:
「政治家みたいなイメージ。ちょっとなんか一般人には知れないようなこと、世界もあるんだなって」

新橋・男性:
「異端児っていうイメージ」

有楽町・女性:
「クラスで言うと一番人気のある目立つタイプがいそうなイメージはある」「周りがある意味見えなくなっちゃうっていうか、弱い人の気持ちがあんまりわからない」

1980年代のキャッチコピー「楽しくなければテレビじゃない」

もともと明るいと評されることが多かったフジテレビのイメージ、その原点の一つは、1980年代からのフジテレビのキャッチコピーかもしれません。
「楽しくなければテレビじゃない」を旗印にしてきたフジテレビ。2000年代にはこのキャッチコピーも誕生しました。
「きっかけはフジテレビ」
明るいフジテレビを象徴するようなポーズを考案したのがWinkの振り付けなどで知られる振付師の香瑠鼓(かおるこ)さんです。「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」など、数多くのフジテレビの番組に関わってきました。香瑠鼓さんに「きっかけはフジテレビ」に込めた意味を聞きました。

香瑠鼓さん:
ジテレビがいろんな人たちのきっかけになるようなイメージでした。フジテレビを見て、こういうふうに変わったとか、フジテレビを見てこれが始まったとか、そういう視聴者の方たちの気持ちを代弁するような感じ。

体と指で二つの「8」を表し、 多くの人が参加した「きっかけ」ポーズ。実は、楽しいだけではない、別の狙いもあったといいます。

香瑠鼓さん:
「楽しくなければテレビじゃない」。漫才ブームの牽引になったと思うんですけど、ちょっとやりすぎ感があって、また違った路線作ろうよみたいな感覚だったので。

フジテレビと視聴者を結ぶきっかけを大事にしたキャンペーンCM。香瑠鼓さんが抱いていた、20年前のフジテレビのイメージは。

香瑠鼓さん:
リーダーちょっと頑張りすぎてんじゃないかな?みたいなタイプのリーダーいるじゃないですか。引っ張るぜ的な感覚はすごくありました。

フジテレビは今後、どうあるべきなのでしょうか。

香瑠鼓さん:
受け取るということが大事だと思って、時代を受け取るとか、一般視聴者を受け取るとか、みんな誰もが主役になるようなフジテレビでいてほしいなって。
時代を受け取り視聴者を受け取り、ワクワクするものを作り続けてほしいんです。

元TBSアナウンサー・吉川美代子さんの目に映ったフジテレビ

もう一人、元TBSアナウンサーの吉川美代子さんにも話を聞きました。
吉川さんはTBSでニュースを中心に長年活躍。退職後はフジテレビでもコメンテーターを務めました。

吉川美代子さん:
これはフジテレビだけではないなという気はいたしました。まあ、民放はどこも同じような、 問題になりそうなことは抱えているんですけれども、それギリギリのところで踏ん張ったりしているんですけれども、フジテレビは踏ん張り切れなかったのかなっていうのがあります。

吉川さんから見たフジテレビという局の印象は。

吉川さん:
「楽しいことはやっぱりいいんだ」という気がします。フリーになってびっくりしたのが、フジテレビの社屋に一歩入ると、すれ違う方がみんな会釈してくださるんです。一丸となって番組作ろうよみたいなのと、この建物に入った人はみんな仲間みたいな感じがあるのか。

一方、でこんな感想も持ったと言います。

吉川さん:
全体の雰囲気が芸能界にすごく近いという感じはしました。どちらかというと「芸能界の方に足を踏み入れてるんだよ」くらいの意識を持っている方が多いかなという気は、色々なアナウンサーの方とか色々な方とこの十年間、接触があった中で感じました。
今回のようなことが起こった根底には、もしかしたら「自分たちは芸能界に近いんだ」という意識がもしかしたらあったのかなという気がしました。

では、フジテレビは今後、どうあるべきなのでしょうか。

吉川さん:
まず自分たちが放送局の社員であるということ、それから報道機関の一員であるということをもう一度、自分の中で自分自身に問いかけてみてほしいですね。芸能界の人とお付き合いあるけれども、やっぱり一線をある程度引いて、きちんとしなくてはいけないという意識ですかね。

そして、これまでの明るいイメージの企業風土も変えた方がいいのか、聞いてみました。

吉川さん:
いや、それは変える必要ないと思います。ただ、今萎縮されてますよね、みんな。テレビ番組を見て元気付けられて、悲しいことがあっても(番組を)見ているときに笑って、その瞬間だけでも辛いこと悲しいことを忘れる人がいるんだから、「そういうことも俺たちはできるんだよ」という意識を絶対忘れちゃいけないと思うんです。

番組制作会社のスタッフの声

フジテレビの番組制作の現場は多くの制作会社のスタッフに支えられています。今回のフジテレビをめぐる問題については、その制作会社のスタッフにも大きな影響を与えています。イット!の現場で働くスタッフに一連の問題について匿名の形で意見を募りました。その一部をお伝えします。
「仕事への影響」について「これまで出来ていたことができない。現場への取材や交渉で嫌がられたり相手にされなかったりする」、「 フジテレビの腕章をすることで逆に萎縮してしまい、取材が今までのように進まない」、「取材中に罵倒された。ただ、その反対に『すごく大変だと思うけど頑張って』という温かい声もいただいた」などの意見が寄せられました。

また、一連の問題のフジテレビの対応について、「制作会社に対して説明が足りていないと思う。働く人たちが安心できるような説明をしてほしい」「現場でいろいろと支障が出るのに、説明が足りず、どう対応するのか明確に示していないので不安」「早く改めるべきところを改めて正常に仕事に向き合いたい」などの意見が寄せられました。
そして、「自信を持って『フジテレビです』とどなたにでも名乗れるようになることが信頼を回復するということなのかと思う」との意見もありました。

フジテレビは24日、番組制作に携わる会社が一同に集まった会議の中で、一連の問題について改めて説明し、社内で再発防止のためのプロジェクトチームが立ち上が対策に乗り出していることを伝え、コンプライアンス相談窓口があることを改めてここでも周知しました。

日本コンプライアンス推進協会・塚脇専務理事に聞く

 一連の問題でフジテレビが問われているコンプライアンス。現在、強化への取り組みを進めていますが、コンプライアンスがなぜ重要なのか、どうすれば守れるのか。

フジテレビの清水賢治社長は2月、「フジテレビとしては、コンプライアンス違反などの人権侵害を決して許さないという姿勢を社内外にえ強く示していきたいと思っております」と述べていました。

フジテレビ・清水賢治社長
フジテレビ・清水賢治社長

今、フジテレビが問われている会社としてのコンプライアンス。そもそも、コンプライアンスとはどういう考え方で、何が必要なのか。
多くの企業で研修を行っている日本コンプライアンス推進協会の塚脇吉典専務理事に聞きました。

宮司愛海キャスター:
今回のフジテレビの件でコンプライアンスという視点から見たときに、どんな問題をはらんでいたのでしょうか。

日本コンプライアンス推進協会・塚脇吉典専務理事:
まず一番経営層というところが一体どうなってんだろうと素朴に思いました。意識・体制も含めて、それが非常に問題があったのかな。

宮司キャスター:
そもそもコンプライアンスというものは、どういった考え方なのでしょうか。

塚脇専務理事:
(昔は)「コンプライアンス意識を持ってやっていく」というと「法令遵守」とか、そういう言葉が長かったんですけども、昨今ではそれだけではもう守れないということで「倫理規範」というか社会の常識とか倫理観、それは一人一人が持つもの。

日本でのコンプライアンス意識は、1989年に初のセクハラ裁判が行われて以降社会情勢の変化に応じて重要性を増してきました。
コンプライアンス違反を生む要因の一つは、様々な認識のギャップだと言います。

宮司キャスター:
ギャップ、隔たりを埋めるために必要な会社の取り組みというのは。

塚脇専務理事:
まず会社のトップが、経営層がきちっとそれを意識した上でまず現場を知る。
例えば、30人いたら30人を一つの塊として見るのではなく、30という個の集合体が何を今考えて、どういう意識でいるか、個を知る。そして、その30人いたらみんなが同じ考えてないはずですから、こういうふうに今回対応していこう。ギャップの調整をしていく。

宮司キャスター:
その点で言うと、上司と部下の対話が一番大事なということですか?

塚脇専務理事:
おっしゃる通りです。これはよく勘違いされるんですけども、例えば「こういうことで対策を決めたから、はい、やりなさい」と現場に落とすと、これがうまくいかないんです。わかりやすい言葉で言えば「押し付け」みたいな。
もう少しステップアップして、今度は認識、理解して30人が納得しないといけないです。それを私ども協会では「知識から意識へ」と言ってるんです。
違反を防ぐためには納得感をして「なぜダメなのか、やったら損だ」という意識にいかないと倫理規範にミートしないんです。

フジテレビは、2月に再発防止、風土改革に向けて、すべての部の部長を担当責任者に任命することを盛り込んだコンプライアンス体制の実効性の強化など、6つの施策を打ち出しました。

塚脇専務理事:
(施策は)これはこれでいい。素晴らしいことだと思うんですが、担当責任者、部長さんのここの教育を徹底的にやる必要があるのかなと。
教育というより私どもは「考育(こういく)」という言い方をしてるんです。教育は教えて育てる。これは知識なので一方的なんです。考育という言葉は私どもが作ったんですが、考える場を提供して、みんなで自ら育つ。それをきちっとこの機会にやっていくっていうのが重要。

青井実キャスター:
このコンプライアンスについてですが、今、どの会社もその企業活動の重要課題と位置づけられているわけですから、コンプライアンスに対する意識というのは一人一人が考えて、どうやって実行していくか、ということが大切になるわけですね。

宮司キャスター:
フジテレビでは現在、コンプライアンス体制の実効性の強化など、6つの施策を打ち出していますが、どうすれば実行性を高められるかという点が鍵になります。
今回お話しを伺った塚脇専務理事は「責任者の役割」として、「現場を理解し個々の認識のギャップを埋めること」「上司・部下の対話の中で納得感を得る。知識から意識へ変えていくこと」「教育だけでなく考える場を提供して、違反を自らなくす『考育』を行っていくこと」が重要だと指摘していました。

宮司キャスター:
今回のフジテレビの6つの施策についても上から降ってきたものではなく、現場で対話しながら納得した上で、その部署のルールに落とし込むことが必要だと感じました。

アメリカ・ハーバード大「企業再生」の専門家は

アメリカ・ハーバード大学で企業再生について研究している教授にフジテレビの再生について聞きました。再生に必要だと指摘したのは「過ちを決して忘れない姿勢」でした。

ハーバード大学ビジネススクールの大学院で教鞭をとるサンドラ・サッチャー教授は、企業の再生を専門とするサッチャー教授は「スキャンダルや不祥事から企業はどう信用を構築し、失い、回復できるのか」という研究テーマで多くの著書を発表してきました。それらの本には、日本の企業も数多く登場します。

ハーバード大学・経営大学院 サンドラ・サッチャー教授:
リクルートは自分たちが大変な問題を抱えていることを認識し、会社の再建に着手した企業の素晴らしい例だと思います。

サッチャー教授が再生を成し遂げた例として挙げたのは日本のリクルート社。自ら日本へ足を運んでリサーチし、数年に渡って研究しました。
リクルート事件では1988年に関連会社の未公開株が政治家や財界人に賄賂として譲渡されていたことが明らかになり、政治家や官僚・関係者らが逮捕され、当時の竹下総理は内閣総辞職に追い込まれました。

サッチャー教授はリクルート社の再生の秘訣は、一部の幹部のことと捉えず、全社を挙げて、再建に取り組んだことだと分析します。

サッチャー教授:
私が最も称賛するのは、リクルートの「決して忘れない」という姿勢です。普通は終わったことだと言いたがるものですが、リクルートは事件について今でもホームページに掲載しています。
過去を忘れていないということです。

では、不祥事を起こし再生を目指す企業にとって、どのような記者会見が求められているのでしょうか。

サッチャー教授:
まず第一に、責任を認めた上で謝罪することです。
2つ目のポイントは何が悪かったかを説明することです。
そして、3つ目は改善です。二度と同じことがないよう、改善策を説明することです。

フジテレビは会見での説明が不十分だったと指摘したサッチャー教授。会見では、経営陣の責任を問う質問が多く投げかけられました。経営陣が変われば問題は解決するのでしょうか。

サッチャー教授:
人を入れ替えて同じようなタイプの人たちを経営陣にしても何も変わらないでしょう。もっとビジネスに積極的に興味を持ち適切な決断を下せるような、これまでとは違うタイプの役員でなければなりません。それがフジテレビ再生のプロセスの始まりとなります。

最後にリクルートに関する研究も踏まえフジテレビの再生の道はどうあるべきか聞きました。

サッチャー教授:
彼ら(リクルート)は「誇れる職場で働きたい」という一心で会社の再生に臨みました。そして、幸運にも同じ考えのリーダーがいたのです。
リクルートは過去を忘れていません。フジテレビも同じことができると思います。
簡単には元に戻せませんが、あなたたちが賢明であるならば、過去を忘れずに、将来正しい道を進もうとするでしょう。

今後のフジテレビの放送・番組についていただいたご意見

今後のフジテレビの放送・番組についてのご意見をまとめました。

本郷・男性:
「昔からワンピースとかドラゴンボールとかも見ていたので、あとそのバラエティーとかも多かったりして、そのそこら辺の番組がなくなってしまわないように頑張ってほしい」

渋谷・女性:
「月9がフジテレビっていうのもあったので、毎回感動させてもらって泣いたりしてるので」(Q、信頼回復できるなら、ドラマとか作りを続けさせてもらえますか)「そうしたらめちゃくちゃ見ます」

新宿・女性
「結構クリーンなイメージがあって、でも今回は一転してあんまり信用できないというか。このままなくなっちゃっても仕方ないのかな」

巣鴨・女性:
私はずっとフジテレビが好きだから応援してる。これからもずっと頑張ってほしい。涙が出る思い。

巣鴨・女性2人:
「なんか信頼できなくなった。だから見方も変わってくるし」
「見なくなったという感じ」

東京スカイツリー前・男性:
「取り返しがつかないというか、もう戻れないので。昔からフジテレビは結構いいドラマとか本当にやってたので、こちらとしては応援してるので、これから頑張ってください」

砂町銀座・女性:
「やはり報道がきちんとした報道をいただきたいと思います」

東京スカイツリー前・男性:
若い人が今すごく大変だと思うので、そういうところを報じてもらえれば」

新宿・女性:
「悪いことも力で押さえつけてきたのかなというイメージがあるので、力で押さえつけるんじゃなくて、報道機関なので真実をちゃんと弱い方にも寄り添えるようにしていってほしい」

新宿・女性:
「明るいイメージがあったので、しんみりされちゃうと逆に困る感じがします」

巣鴨・女性:
なんとなく揉み消して、なんとなく復活してやっていくっていうのは諦めてほしいです」

砂町銀座・女性:
「明るいニュースとか明るい番組を作ることだと思います。国民が笑えるような、子供でも大人でも笑えるような、明るい心になれるような、そういうテレビ局がいいなと思いますね」

新宿・男性:
「膿を出しちゃったらいい。絶対必要なテレビジョンだからね」

巣鴨・男性:
「内部の改善を行っていただいて、また楽しい番組をやっていただけるようにしていただけると一視聴者として嬉しい」

青井キャスター:
色々な方の声がありましたが、今回一番大切なのはこの取材に協力いただきました皆様の声をフジテレビがどう生かして今後につなげていくのかです。
近く第三者委員会の調査結果の発表が予定されているわけですが、フジテレビにはしっかりと対応してもらいたいですし、どのような改善策を、そこで発表するのか、注目したいと思います。
視聴者の皆さん、見ている皆さんの信頼を取り戻せるかどうかについてはそこにかかっていると思います。

宮司キャスター:
今回の放送において取材に答えてくださった皆様には貴重なご意見をたくさんいただきました。この状況にもかかわらず温かいご意見もいただき本当にありがとうございました
ただ、まだ多くの方に取材を受けていただけない状況を改めて私たちは重く受け止めるべきだと感じています。
今回の取材で得られた教訓として、今後にしっかりと生かして、情報をお伝えして参りたいと思います。

(「イット!」2025年3月25日放送)

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