新年度を前に進学や就職などで、新生活の準備を進める人が多いこの時期、物価高騰で若者の価値観にも少なからぬ変化が現れている。単に値段の安さや“コスパの高い”お得なものだけでなく、最近は、「スぺパ」にこだわる人達が増えている。スぺパを追求する先に見えてくるものとは…?
4月の新年度スタートまで2週間余り。これから新たな場所で生活を始める人達にとって頭が痛いのが、全国的な家賃の値上がりだ。2025年1月、大手不動産会社が公表した福岡市内の1人暮らし向けのマンションの平均家賃は、5万5434円。過去10年で最も高く、2024年の同じ時期と比べても2600円ほど(4.8%)値上がりしている。(シングル向きマンション30㎡以下)

人気の秘密は安さと「スペパ」
この時期、不動産会社はどこも大忙しだ。少しでも家賃を抑えたいと、切実な願いを持つ客も多いという。福岡市のアパマンショップ別府城南店の藤田大成さんによると、家賃は3~4万円以下で探す人が多く、「広さより狭くても家賃を抑える方が多い」と話す。

福岡市早良区の学生が多く暮らすエリアにある人気のアパートを訪ねた。

築35年の古い物件ということもあり、6畳1Kで家賃は、月2万7000円。正に「広さより安さ」を重視する人にピッタリの物件だが、藤田さん曰く、安さに加えて人気の秘密がもう1つあるという。

それは「ロフトが付いていて、狭くてもスペースを活用した『スペパ物件』」だということ。

人気物件に共通するキーワード、「スペパ」。限られた空間を効率的に活かすなど、スペースパフォーマンス(空間対効果)から派生した言葉だ。背景には、コロナ禍を機にしたテレワークの普及や、都市部の地価上昇、建築資材高騰の流れを受けた住宅面積の縮小などがあると考えられている。ここ数年は、福岡市内でもロフトの階段下など、本来デッドスペースになる場所を収納に活用するなど、「スペパ」重視の物件が増えているという。

家電も“複数機能+スリム”が人気
スペパを重視する人の特徴として、1つで様々な役割をこなす多機能なアイテムを選ぶ傾向があるという。1台で家具と家電両方の役割を果たす多機能なアイテムは、1台分のスペースで複数のアイテムの効果を得られるため、スペパ向上につながるからだ。
福岡市内の大手家電量販店「ヨドバシカメラ博多店」の中野友貴さんが、1台4役の空気清浄機が「スぺパ家電」として人気だと機能を説明する。空気清浄機の他、サイドテーブルとしても使え、スマートフォンのワイヤレス充電器やムードライトも備わった優れモノだ。

他にも、丼の形をした2段式の「炊飯器」も人気だという。

中が二重になっていて、コメを炊くのと同時にレトルト食品など、おかずを温めることができるという。

中野さんは、「スペパ家電を使って、より快適に生活していって欲しい」と新生活を始める人達にエールを送る。

物価高騰が続く中、「コスパ」(コストパフォーマンス)や「タイパ」(タイムパフォーマンス)と同様、「スペパ」志向も今後、更なる高まりをみせそうだが、スペパ意識の高まりで、自分の暮らしに「本当に必要なものは何か」を考え直す機会にもなりそうだ。
(テレビ西日本)