地方を盛り上げたいと2024年1月、秋田・男鹿市に移住してきた女性がいる。市内にあるクラフトサケの醸造所に勤めながら、このまちを未来につないでいくため「できることを全部やっていく」と挑戦を始めた女性の思いと取り組みを紹介する。

本気で頑張りたいと思えた場所に移住

「秋田の雪はたくさん降りますね」と話しながら雪寄せに汗を流す女性。

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男鹿市船川港にあるクラフトサケの醸造所「稲とアガベ」で働く荒木珠里亜さん(30)だ。東京都出身の荒木さんは入社2年目。以前はウェブマーケティングの会社で人事やイベントの企画などに携わってきた。

移住を考えたのは2023年。様々な業界の企業が集うイベントで「稲とアガベ」の代表・岡住修兵さんと出会ったことがきっかけだった。

「地方の可能性をすごく感じていて、ローカルから日本全体を盛り上げていきたいと思ったときに、どこかしら自分が『ここだったら本気で頑張りたいな』と思える場所をずっと探していた」と話す荒木さん。

そんなときに岡住さんと出会い、男鹿での活動を聞いて「これが自分のやりたいことにとても近い」と感じたと振り返る。

酒を理由に人が集まる“酒シティ”に

新ジャンルの酒・クラフトサケで男鹿市を盛り上げる「稲とアガベ」。荒木さんは精力的にまちづくりに関わる代表の岡住さんの情熱に感銘を受け、男鹿市で活動することを決心した。

荒木さんには、まちを盛り上げるために思い描くビジョンがある。

稲とアガベ・荒木珠里亜さん:
人口が減ってまちの中で失われてしまう機能や必要なものを立ち上げていく、どんどん復活させていくことをやりたい。このまちを酒シティにしていき、酒が理由で人が集まるような。どうやったら未来に豊かな形で続いていくかを考えていきたい。

空き家改修し「宿 ひるね」開設

2024年に東京を離れ移住した荒木さんは、稲とアガベに入社してすぐに新しい事業に取り組んだ。それが宿泊施設の立ち上げだ。

男鹿の玄関口・JR男鹿駅周辺
男鹿の玄関口・JR男鹿駅周辺

男鹿半島は、ナマハゲや寒風山など豊かな観光資源があるにもかかわらず、船川港周辺には泊れるところがなかった。

2024年6月に開設された「宿 ひるね」
2024年6月に開設された「宿 ひるね」

そこで、観光で訪れる人が滞在できる場所を作ろうと3棟の空き家を改修し、2024年6月に宿泊施設「宿 ひるね」を開設した。

「実家に帰ってきたような気持ちでゆっくりくつろいでほしいという意味を込めて『ひるね』と名付けた。畳や温かい雰囲気もあり、みんなで料理したり、ゆっくり食卓を囲んだりすることもできる場所になっている」と荒木さんは話す。

ゲストハウス内観
ゲストハウス内観

昼寝したくなるほど居心地の良い宿。そんな思いで作られた施設は、家族や気の合う友人とゆったりと過ごせる一棟貸しの宿が2棟。1人で気軽に来られ、宿泊客同士が交流を楽しめるゲストハウスが1棟と、客のニーズに合わせて利用してもらうことができる。

“宿泊者の声”励みに新たな挑戦

宿には“宿泊ノート”が用意されている。

メッセージがびっしり書かれた宿泊ノート
メッセージがびっしり書かれた宿泊ノート

いろんな客がコメントを書いてくれるが、荒木さんは「久しぶりの家族旅行で、旅行先なのに家にいるような温かい気持ちになりました」というコメントをもらったのがうれしかったという。

宿泊者の声を励みに、荒木さんは前の仕事の経験を生かしてイベント企画にも挑戦するなど、活躍の場を広げている。

一緒に働く先輩社員は、荒木さんの印象を「すごく接しやすくて、仕事もたくさんやるというのが、このスタートアップの会社に向いていると思う」と話し、「互いに協力できること、例えば宿泊施設に酒を置いたり、逆に酒で人を呼んで宿泊施設に泊まってもらったりと、そういうところで協力できたらと思う」と今後の展開に期待を膨らませている。

男鹿市に移住して1年。「まずは稲とアガベからまちづくりを行っていく。このまちを未来につないでいくために、できることを全部やっていくという気持ちで頑張っていきたい」と意気込む荒木さん。

将来的には「このまちがロールモデルになって『どう未来につないでいくか』というところに対してヒントになるような事例を、この男鹿市からつくっていきたい」と語る。

男鹿市の未来のために。地域を盛り上げる荒木さんの挑戦はスタートしたばかりだ。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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