奈良県川上村で3月10日、発生した山火事。 24時間以上が経過した11日午後3時半ごろに、ほぼ消し止められた。

一体現場で何が起きていたのか、目撃者の証言や独自入手した映像から見えてきたのは、火が燃え広がる“異様なスピード”だった。

■【動画で見る】独自入手の映像「炎が山一面に連なる」相次ぎ発生する山林火災「異常な乾燥」原因か

■奈良の山火事 焼失面積は8ヘクタール ケガ人はなし

記者リポート:昨日の通報からおよそ24時間がたった今、自衛隊機による放水作業が今も続けられています。

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火事の通報から一夜明けた奈良県川上村。朝から消防や地元の消防団、自衛隊が現場に入り、午後からは、奈良県の防災ヘリも加わり、消火活動にあたった。

そして午後3時半すぎ、火はほぼ消し止められ、延焼の恐れがなくなったと発表された。

消防によると、焼失面積は8ヘクタールにおよび、ケガ人はいないということだ。

■「雑草を焼却処分しようと…」 近くの草木に燃え広がり

10日午後1時半すぎ、近隣住民の通報で発覚した山火事。 通報からおよそ2時間後の上空からの映像には…。

カメラマンリポート:あ、ここや…今、炎が確認されました。山のいたるとこから煙が上がっています。こちらからは炎が見えます。

木々の間から、地面を中心に広がる炎の様子が確認できた。

一体、なぜ火事が起きたのか。

70代男性:雑草を焼却処分しようとしたところ、付近の草木に燃え広がった。

警察などによると、現場近くに住む70代の男性が、山のふもと付近の枯れ草が生い茂った場所で、野焼きをしていたということだ。

炎が上がり、燃え広がる様子を目撃した人は…。

第一通報者の住民:そばまで車で行って、車燃える思って、すぐバックして通報して。

(Q.火の高さはどれくらい?)
第一通報者の住民:これくらい。スピード早いで案外。燃えていくスピードが。15分ほどで山に入った火は。

近隣の住民:午後3時くらいには山の中腹まで煙が。もう1時間くらいで中腹までいってましたね。風は弱かったんですけど、(煙が)あっちからもこっちからも…。

燃え広がるあまりの速さに恐怖を感じたという。

■山火事の恐ろしさ「飛び火」で延焼

近くの住民が撮影した映像を見ると、火事が発生した頃、炎や煙は山のふもとだけから出ています。

午後3時ごろには、発生現場の火は消し止められましたが、山の中腹のほうに煙が。
午後5時半ごろになると、山のあちらこちらに煙が広がっていました。

カメラマンが、上空から消防活動を撮影していた時にも、発生場所から離れたところに炎がありました。
カメラマン:炎?どこ?あ、ほんまや。

専門家はこの様子こそ、山火事の恐ろしさだと指摘する。

近畿大学農学部 松本光朗教授:いわゆる飛び火ってやつですね。燃えたものが飛んでいったっていう。その燃えた熱で上昇気流が出るので、ウワッと飛ばされるという。

風が弱くても上昇気流によって、何十メートルも離れた場所に炎が飛び、延焼するという。

■独自入手の山中の映像には「斜面をかけ登る炎」

そして独自入手した10日夜の山の中の映像では、炎が連なりながら、山一面に広がっている様子が分かる。

近畿大学農学部 松本光朗教授:山林(火災)の怖いところは、斜面があると下の方で燃えると、火って当然上に行きますんで、斜面をかけのぼっていくわけですよね。

■火の広がり…そのスピード「バケツリレーより早い」

火が広がるスピードを物語る映像がある。

キャンプ場で配信用の動画を撮影していた男性たち。 近くの客の「異変」に気が付きカメラを向けると、たき火が地面の草に燃え移り、斜面の芝が黒く焦げ始めていた。

動画の撮影者:たき火をやられている方は、(芝が燃えていることに)気付いていなくて。日中なので火が見えないんですよ。芝がどんどん黒く焦げていくので、僕らも(火事に)気付いて。それが斜面に移ったような感じ、風で。

この日は強風。 火は数分で斜面に広がり、あたりは炎と煙に包まれた。

動画の撮影者:バケツリレーをとりあえずやって。風が強かったんで、火の勢いの方が早いんで、それでも消えなくて。

消防が駆けつけ、火は消し止められたが、周囲の木々にさらに燃え広がっていた恐れもあった。

■火事が拡大の要因は“異常”な乾燥

最悪の事態に発展したのが、2月26日に発生した、岩手県大船渡市の山火事。

市の面積の9パーセントにあたる約2900ヘクタールが焼け、平成以降、最も大規模な被害となった。

火事が拡大した要因とみられているのが“異常な乾燥”だ。

気象予報士 片平敦さん:1月から2月、3月にかけて、雨や雪の量が太平洋側ではとにかく少なく、異常とも言ってもいいような乾燥。

60日間の降水量を見てみると、2月の大寒波の影響もあって、日本海側は、平年より雨や雪が多い結果に。 しかし、太平洋側は、平年の3割ほどしか降っておらず、異常な空気の乾き具合になっている。

気象予報士 片平敦さん:大船渡のあたりも、近畿の南部も、空気の乾き具合はあまり変わらない。大船渡のようなことが、そのまま起こるとは言えないですけれども、同じような山火事がいったん発生してしまうと、広がる恐れがあるので、近畿でも特に注意をしていただきたい。

■関西でも「焼き芋」であわや山火事という事案が

取材を進めると、ここ最近、関西各地でも「山火事に発展しかねない」事案が頻発していることが分かった。

記者リポート:ボヤが起きた現場です。火は斜面を燃え移っていきましたが、すぐ背後には山林が広がっています。

関西のあるキャンプ場で3月、雑草およそ300平方メートルを焼く火事が発生。その原因は…。

キャンプ場運営者:(キャンプ客が)焼き芋をされていたところ、火元を離れて30分。火の手が上がっているということで戻ると、焼き芋からテントに燃え移り、そのテントから周辺の草木に火が燃え移ったと。もし山手側に移っいたら、相当大きな山火事になっていたんじゃないか。

これを受けて、キャンプ場では、山に近い場所での火の使用を禁止にした。

■日本で年間1000件以上起こる山火事 98%が“人為的”原因

最新の調査では、日本の山火事のおよそ98%が人為的なもので、たき火やたばこの火の不始末、野焼きなどが原因だという。

近畿大学 松本光朗教授:山火事はその日だけじゃなくて、そのあとも怖い。発生させないということが一番大事。遠いところで起こったわけじゃなくて、自宅の庭の裏だとか、すぐ近くでも、もう全然起こり得る話。

春にかけて空気の乾燥はしばらく続く。大きな被害を生まないよう、火の扱いには厳重な注意をお願いしたい。

日本では山火事が、年間1000件以上起きていて、1日当たりにすると全国で毎日およそ4件発生している計算になる。

気候変動と森林の管理に詳しい近畿大学の松本光朗教授によると、最近の山火事は数ヘクタール規模ではなく、100ヘクタール規模の大きな焼失が目立つということだ。

理由として、気候変動を背景に空気がより乾燥するようになったことが原因か、ということ。

また原因の98パーセントが人為的なものだということだ(出典:京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授)。

■乾燥と人の活動が重なる3~4月に山火事増える

火を出した人の法的な責任について、番組コメンテーターで弁護士の泉房穂さんは、刑事での処罰の可能性と、民事では失火責任法によって重過失がない限り責任を問われないと説明しました。

泉房穂さん:当然のことながら責任は問われ得ると思います。二つ大きく、刑事上の処罰をされるかどうかという責任と、民事上の賠償責任があります。刑事上は、森林に燃え移った山火事ですから、過失であっても森林法によって罰則はあります。あと野焼きについても原則禁止ですから、廃棄物処理法上の刑事処罰も予定されています。

泉房穂さん:ただ民事に関しては、失火責任法があるので、“重大なる過失”でない限りは、責任を問われないとあります。今回どういう状況か見てみないと、軽々には判断できません。

一人一人が火の扱いに気を付ければ、山火事をある程度防ぐこともできると考えられる。

関西テレビ 神崎博報道デスク:山火事の原因で、ひとつ大きなものが乾燥です。特に1月から3月は乾燥しています。それと『98パーセントが人為的』だというところで、1月からだんだん暖かくなってくることで、人の活動が活発になっていき、人が山に入るようになる。ちょうど乾燥している時期と人が動き出す時期が重なって、山火事は3月、4月どんどん増えていき、4月がピークになります。特に今月、来月の山火事に注意する必要があります。

山林火災はひとたび発生すると、人的被害の恐れが当然あるうえに、多くの山が燃えて元に戻るために大変な時間がかかる。

火の取り扱いには十分気を付けていただきたい。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年3月11日放送)

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