岩手県大船渡市の大規模な山林火災は発生から13日目の3月10日、全ての避難指示が解除された。住民たちは久しぶりに自宅に戻り、被害状況を確認した全焼した家の前で立ち尽くす住民や、思い出の品を探す若者の姿があった。市によると、焼失面積は約2900ヘクタール、建物被害は少なくとも210棟に上るという。

「もう何もなかった」

大船渡市赤崎町外口。斜面の木々は黒く焦げ落ち、手前に住宅は全焼していた。山林火災の被害の大きさを物語っている。

赤崎町外口の小澤浩喜さん(54)は、生まれてから住み続けてきた家は東日本大震災では被害を免れましたが、今回の山林火災で全焼した。

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小澤さんは「映像を見て分かっていたが、実際に見ると思い出とか悲しい気持ちがある」と語った。

小澤さんは、家の前でしばらく立ち尽くした後、形が残っているものがないか探した。

形が残っているものがないか…
形が残っているものがないか…

しかし…

「ちっと探したが、何もなかった。もう何もなかった」と下を向いた。

それでも、「ここにもう一回家を建てて、帰ってこようと思っている。それに向けて頑張っていくしかない」と前を向き決意を示した。

思い出の品を探して

赤崎町外口の平子千寛さん(19)は、自宅とその隣にあった祖母の住宅が全焼。

焼け跡を歩きまわり、高校時代、太鼓部として全国大会に出場した際の思い出の品を探していた。

平子千寛さん(19)
平子千寛さん(19)

「(探しているのは)高校のときの太鼓部のジャージ。本当に思い出が詰まったものだけど、やっぱりこうなってしまったかと、心苦しい」と複雑な思いを語った。

生まれ育った町への思い

平子さんは焼け跡を見つめながら「田舎で不便なところがあるけど、生まれ育った町だし、ずっとここで暮らしていけるなら暮らしていきたいと思う」と語った。

山林火災は住み慣れた家とともに多くの思い出も奪い去った。今回の山林火災で大船渡市は約2900ヘクタールが焼失。

市によると、建物の被害は少なくとも210棟に上り、このうち102棟が住宅だという。

大船渡市
大船渡市

市は3月10日、県に対し市内の旧・綾里中学校のグラウンドに30戸、旧・蛸ノ浦小学校のグラウンドに10戸の仮設住宅を整備するよう要請したという。

また、三陸鉄道は3月11日始発から平常通り運行される見通しだ。

(岩手めんこいテレビ)