岐阜県美濃加茂市と郡上市を結ぶ第三セクター「長良川鉄道」が、郡上市内の一部区間の廃線を検討していることがわかりました。「観光路線」を取り入れ、一時は赤字幅の縮小にも成功していましたが、開業以来39年間赤字が続いています。
■2023年度は3億6615万円の赤字…「長良川鉄道」で一部区間の廃線を検討
2025年3月3日、岐阜県の関市議会で、長良川鉄道の社長も務める山下清司市長は、一部区間の“廃線”を検討していることを明らかにしました。

関市の山下清司市長(3月3日の関市議会):
今のままでは存続が危うい。必要な部分を残すために、一部の地域の廃線も視野に入れながら構築をしていく。
長良川鉄道によると、2023年度の収支は3億6615万円の赤字でした。関市や郡上市など沿線の5つの市町でおよそ1億4500万円を補填して支えている、苦しい状況です。
■福井県を走る「越美北線」と1本になるはずが実現せず第三セクターに
長良川鉄道の前身は1934年に全線開通した国鉄「越美南線(えつみなんせん)」です。「越美」とは、福井県=「越」前と岐阜県=「美」濃を指しています。

福井県内を走っていた「越美北線(えつみほくせん)」とやがては1本の路線になるはずでしたが、国鉄の経営赤字もあり実現しませんでした。
その後、越美南線が第三セクターに転換し、1986年に誕生したのが長良川鉄道です。

しかし第三セクターに転換した後も、開業以来39年連続で赤字になっています。
■「観光路線」が奏功し一時は赤字幅縮小も再び拡大
それでも2016年には、観光列車「ながら」が登場しました。

観光列車ブームの立役者、水戸岡鋭治さんデザインの車内では、地元グルメがたっぷりの料理を楽しめ、お座敷遊びを取り入れるなど、観光路線が功を奏し、赤字幅の縮小にも成功しました。

また、観光客の利用を狙って、駅直結の露天風呂を設置したこともあります。

「おくみの号」やわんこ駅長の「雪之丞」など、あの手この手で活性化を図ってきましたが、設備の老朽化も進み、一度縮小した赤字幅は再び拡大しています。
2024年度の赤字額の見込みはおよそ4億5700万円で、2023年度より9000万円あまり膨らみ、「一部廃線」の検討へと踏み出しました。
■沿線住民「廃れていく感じがして寂しい」…沿線自治体の判断は
関係者によりますと、廃線区間は「郡上市の北の方」を想定しているということです。

沿線の住民A:
寂しい気がしますね。廃れていく感じがして。人口も少なくなってくると利用者も少なくなるでしょうから、財政面を考えると致し方ないかなと。
沿線の住民B:
代替のバスがあれば…。弱ったなと思いますけどね。
長良川鉄道の沿線の半分以上を占める郡上市の山川弘保市長は2025年2月、市議会で「任期である4年の間に、市としての具体的な方針を示したい」と発言していました。
住民にとって貴重な足である長良川鉄道が今後、沿線自治体などがどう判断するか注目されます。
(東海テレビ)