天皇陛下は2月23日、65歳の誕生日を迎えられました。
皇居では天皇誕生日を祝う一般参賀が行われ、青空の下、早朝から多くの人が訪れました。

午前10時半頃、陛下は皇后さまと長女の愛子さま、秋篠宮ご夫妻と次女の佳子さまとともに宮殿のベランダに姿を見せられました。

陛下は「寒さの厳しい中、誕生日にこのように来ていただき、祝っていただくことを有り難く思います。この冬は、殊の外、各地で大雪に見舞われており、皆さんの御苦労もいかばかりかと思います。雪の事故などで被害に遭われた方々に、心からの御見舞いをお伝えいたします。そのような中にあって、ここ東京では梅の花も咲き、春が一歩一歩近づいていることを感じます。全国各地の皆さん一人一人にとって、穏やかな春が訪れるよう願っております。皆さんの健康と幸せを祈ります」と述べられました。

この日、3回行われた一般参賀。お祝いの記帳と合わせて1日で2万3000人あまりが皇居を訪れました。
飲食伴う「宴会の儀」が5年ぶりに行われる
午後には、飲食を伴う「宴会の儀」が5年ぶりに行われ、皇族方をはじめ石破総理や閣僚など約120人が出席しました。

陛下は「誕生日にあたり、皆さんと祝宴を共にすることを誠にうれしく思います。この機会に、国民の幸せと国の発展を願い、あわせて皆さんの健康を祈ります」と挨拶されました。
そのあと日本酒で乾杯が行われ、初めて出席した愛子さまも杯をあげられました。
戦後80年で平和への思いを新たに
誕生日に先立ち記者会見に臨まれた陛下。2025年、戦後80年を迎えることについて次のように話されました。

「今回の誕生日で私は65歳になりますが、戦後80年という年月を考えると、私が生まれる15年前までは戦争の時代であったということになります。両親である上皇上皇后両陛下は、幼少時を戦争と共に過ごされたわけで、日本において80年間、平和の時代が続いていることを有り難いことと思います」
「私と雅子は、これまで広島、長崎、沖縄などを訪れ、多くの方々の苦難を心に刻んできています。今年、戦後80年という節目を迎え、各地で亡くなられた方々や、苦難の道を歩まれた方々に、改めて心を寄せていきたいと思っております」
そして、若い世代へ戦争を語り継ぐことの大切さについて指摘されました。
「戦争の記憶が薄れようとしている今日(こんにち)、戦争を体験した世代から、戦争を知らない世代に悲惨な体験や歴史が伝えられていくことが大切であると考えております」

陛下も、戦没者の慰霊を続けられた上皇ご夫妻から話を聞いてこられたといいます。
「私と雅子は戦後生まれで、戦争を体験していませんが、上皇上皇后両陛下の戦時中の御体験のお話など、平和を大切に思われるお気持ちについて、折に触れて伺う機会がありました。愛子も、両陛下(上皇ご夫妻)から先の大戦についてお話を聞かせていただいております。私は、日本国及び日本国民統合の象徴として、上皇陛下のお気持ちをしっかりと受け継ぎ、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、象徴としての責務を果たすべくなお一層努めてまいりたいと思っております。戦後80年を迎える本年が、日本の発展の礎を築いた人々の苦難に深く思いを致し、平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っております」

この一年で印象に残っている出来事として、各地の自然災害をあげられた陛下。

能登地方へのお見舞いについて「被災された皆さんの心が挫(くじ)けそうになっているお気持ちを感じ、私たちの訪問が少しでも力になるのであればと思いました」と振り返られました。
家族の絆(きずな)と家族への感謝を感じながら…
陛下は、ご家族と過ごす時間について語られました。
「家族の絆(きずな)と家族への感謝を感じながら、日々を過ごしております。時間が取れるときには、一緒に散歩に出掛けたり、共に暮らしている犬の由莉や猫のセブンも交えながら愛子と3人で和やかな時間を過ごしています」

「私たち家族は皆自然が好きで、特に雅子や愛子は生き物が好きですので、御料牧場や那須での静養の折には、一緒に楽しく過ごすことができることを有り難く思います」

「また、普段の散歩の折には、皇居内の厩(きゅう)舎にいる馬たちや警察犬に会いに行くことも、いつも楽しみにしています」

2024年、日本赤十字社に就職された愛子さまについても思いを述べられました。
「職場では周囲の方々に温かく御指導いただき、皆さんと協力しながら精一杯仕事に取り組んでいる様子に、社会人として一歩一歩成長しているのではないかと思います。愛子は、日々の仕事を行う中で、ボランティア活動や防災の分野などにも関心を深めているようです。これからも、多くの経験を重ねながら視野を広げ、更に成長していってほしいと願っています」

就職した経験がない陛下は、愛子さまから聞く仕事の話一つ一つが新鮮で「未知の旅」のように感じられているということです。
また、愛子さまの皇族としての公務についても期待を寄せられました。
「昨年10月には、初めて単独での地方の公務として国民スポーツ大会のために佐賀県を訪問し、各地で多くの方々に温かく迎えていただきました。今後、皇族としての仕事の幅も広がっていくのではないかと思いますが、今年は戦後80年という節目を迎え、愛子にも、戦争によって亡くなられた方々や、苦難の道を歩まれた方々に心を寄せていってもらいたいと思っています。愛子には、引き続き、感謝と思いやりの気持ちを持ちながら、皇室の一員として一つ一つの務めを大切に果たしていくことを願っています」

2024年、成年皇族になられた秋篠宮家の長男・悠仁さまについては次のように話されました。
「悠仁親王は昨年18歳となり、成年を迎えました。小さい時から甥として成長を見守ってきましたが、近頃は、都内や地方への訪問であったり、外国の方々との交流であったり、皇室の一員としての務めを果たしてくれていることを頼もしく思います。会った時には、地方や都内への訪問に関する話題のほかにも、関心を持って取り組んでいる、トンボ、野菜の栽培、バドミントンなどについて、生き生きと話してくれますので、充実した日々を送っているのではないかと思います」

筑波大学への進学が決まったことを「うれしく思っています」と喜び、「悠仁親王には、大学生活を通して、本当に自分がやりたいことを見つけるとともに、様々な人と出会い、自身の将来をしっかりと見つめつつ、実り多い学生生活を送ってほしいと願っております」とエールを送られました。
戦後80年を迎える今年、平和への思いを新たにし、象徴としての歩みを進められる天皇陛下です。(「皇室ご一家」3月2日放送)