天皇皇后両陛下は、1月16日、阪神・淡路大震災30年追悼式典に出席するため、兵庫県神戸市を訪問されました。沿道には多くの人が集まり、両陛下を歓迎しました。
到着後、兵庫津ミュージアムで震災の被害状況やこの30年の復興の歩みをまとめた特別展示をご覧になりました。全壊した家屋や火災で焼失した地区を色分けした地図を見ながら、説明を受けられた両陛下。改めて震災の衝撃の大きさを思い起こされたということです。

引き続き、長年地元の復興に携わってきた被災者たちと面会されました。震災直後から散髪のボランティアをしてきた「新開地まちづくりNPO」の高四代理事長に陛下は「一番大変だったことはどういうことですか?」と質問され、皇后さまは「たくさんの方を助けられて」と労いの言葉をかけられました。

翌1月17日早朝。各地で追悼集会が行われ、被災地は鎮魂の祈りに包まれました。

この日、東京では上皇ご夫妻と両陛下の長女・愛子さまが、それぞれお住まいで黙とうを捧げられたということです。
30年にわたり被災地に心を寄せられた両陛下
平成7(1995)年1月17日、神戸市などを震度7の揺れが襲い、6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災。
発生から2週間後の1月31日、上皇ご夫妻は兵庫県をご訪問。避難所をまわって被災者を見舞い、神戸市長田区の菅原市場跡では美智子さまが、この日の朝、御所の庭で摘んだスイセンの花を手向けられました。

地震から1カ月後の2月26日、両陛下も被災地を訪問されました。

神戸市の避難所では、陛下が子どもが差し出したノートに「がんばってください」と励ましの言葉を書き込まれました。

その翌週も被災地に入られた両陛下。淡路島の集会所では、避難しているお年寄りの耳元で「大変なご経験をなさいましたね」と気遣われた皇后さま。 向かう先々で被災者に寄り添われていました。

震災から1年、再び被災地を訪問し、神戸市長田区では仮設店舗に足を運ばれています。この年の誕生日会見で皇后さまは「被災者の皆さん方が力を合わせて重く押しかぶさってきた困難に立ち向かい、そして、街を復興させようとしておられる力強さと、そしてまた、昨年訪れました時には見られなかった、明るい笑顔というものに接することができましたことが印象的でございました」と振り返られました。

両陛下はその後も節目の年に神戸を訪れ、復興の道のりを見守ってこられました。
世代や地域を越えて経験と教訓を「繋ぐ」取り組み
今回行われた「30年追悼式典」。両陛下は、参列者と共に黙とうを捧げられました。

陛下はおことばの中で、犠牲者に哀悼の意を、復興に尽力した人たちに敬意と感謝の意を示されました。そして震災の経験と教訓を「繋ぐ」兵庫県の取り組みを「心強く思う」と紹介したうえで「これからも、震災の経験と教訓を基に、皆が助け合いながら、安全で安心して暮らせる地域づくりが進められるとともに、そこで得られた知見が国の内外に広がり、次の世代へと引き継がれていくことを期待いたします」と述べられました。

遺族代表や小中高生の代表のことばにじっと耳を傾けられた両陛下。祭壇に花を手向け、深く拝礼されました。

式典に先立ち、被災地の支援に取り組む人たちとご懇談。震災の語り部活動をしている高校生から、震災の経験者から聞き取りを行い発信していると聞き、皇后さまは「若い力は大きいですね」陛下は「世代間の交流はとても大切なことですね」と声を掛けられていました。

また防災の学習施設「人と防災未来センター」を訪れ、小学生が台風の進路が変わる仕組みについて学ぶ様子をご覧になりました。体験した子どもたちに「どんなところが難しいですか?」と尋ねられた皇后さま。陛下は「防災についていろいろ学んでくださいね」と話されました。

被災者の苦労や復興に向けた努力に思いを馳せ、記憶と教訓が若い世代に受け継がれることを願われた天皇皇后両陛下です。
(「皇室ご一家」1月26日放送)