ガソリン価格の事前調整疑惑について、長野県石油商業組合は「8つの支部に確認したが事実はなかった」との調査結果を県に報告した。阿部知事は「県民が納得すると思うか」などと声を荒げる場面もあった。一方、県民からも「納得できない」などの声が聞かれた。
「事実は存在しない」組合が報告
2月28日夕方、長野県庁を訪れた長野県石油商業組合の幹部。阿部知事に疑惑についての調査結果を高見沢秀茂理事長が「事実確認を2月13日、各支部の支部長などにいたしました。結果、8支部のそれぞれに『事実は存在しない』返答があり、報道の事実確認はできませんでした」と報告した。

組合に加盟する複数のガソリンスタンドで店頭表示価格を事前調整したとされる問題。
高見沢秀茂理事長は2月6日「(組合として)コンプライアンスに違反するようなことは一切していない。下部組織で行われていれば速やかに是正し、県民の信頼回復に努めたい」と話し、真っ向から関与を否定した。
「値上げ値下げ強要」証言も
一方で、NBSの取材に応じたガソリンスタンドの関係者は、組合の北信支部の支部長から価格を知らせる電話があったことを認め、「値上げや値下げを強要される内容だった」と証言している。ある関係者は「『いつから何円上げです』『いつから何円下げです』っていうような電話は連絡網ですかね。価格の替え漏れみたいなことがあった時には、電話来ますよね、『おたくどうなってんの?』みたいな。脅迫とか脅しだととってましたけどね」と話した。

また、ガソリンスタンドの元従業員も「事前に何日の何時っていう連絡で、『(価格を)あげてください』という要請が来て、従わないと逐一、『どうなんですか』というような電話が来て。(勤務していたていた15年ほど前から?)私が勤務している間はずっとありました」と話し、少なくとも15年前から価格を知らせる電話があったと証言した。
問題を巡っては、北信支部が関与してカルテルを結んだ疑いがあるとして、公正取引委員会が、2月18日に組合に立ち入り検査をした。
県も問題を重く見て、2月6日に組合に対し、実態を調査して報告するよう求めていた。
知事「危機感がない」と声荒らげる
迎えた2月28日の報告。組合は、8つの支部長から「事実は存在しない」と回答があり、事実確認できなかったとた。
阿部知事は「これだけの報告、これで県民の皆さんが納得すると思いますか?2月13日に集まってどういう話しされたんですか?皆さんは危機感ないんですよ。危機感があればもっとこういう話し合いをして、皆さんからこういう話し合いをしていると共有してしかるべきではないか」と声を荒らげた。

それに対し、高見沢秀茂理事長は「さらに細かく調査をすべく進めていたところ、公正取引委員会から話しがございましたので、それ以降は公正取引委員会の指示通りの行動をしている」と述べた。
再度調査しようとしたものの、公正取引委員会の検査が入り、できなかったとした組合側。知事とのやり取りの中でも改めて組合の関与を否定した。

阿部知事が「報道されていることが起きることはないと断言できるのか?」と問うと、高見沢秀茂理事長は「少なくとも組合の上部ではないと考えている。そういうことを守れない人たちがいたとすれば、啓もう活動を徹底するしかない」と話した。
阿部知事は「業界として、どうやって襟を正してこれから進んでいくのか。公正中立な第三者の皆さんから提言をいただくなりして、信頼回復に努めていただきたい」と要望した。
県民は「納得できない」
この問題について県民からは「えっ、うそでしょ。一度は否定するでしょ多分。組合のトップが言ってもきちんと調べていけばと思うから、きちんと調べてほしい」、「納得できないですよね。どこかで情報が食い違っているということがあると思う。それで不当な利益を得ている人がいるのであれば改めてほしい」といった声が聞かれた。

ガソリンスタンド関係者は「(調査は)十分じゃないですよ、当然。知らないを連呼できるのか不思議でしょうがない。あり得ないですよ、彼らがどちらかというと積極的に、主体的にやっていたから。何のための組合なんだろうと幹部が逃げ切ることだけを考えて、『現場に指導する』みたいなことを言ったが、されるべきはあなた方だと言いたい。公取委にスピード感を持ってやってもらい、徹底的な追及が必要だと思う」と厳しい意見も出ている。
組合は、今後については公正取引委員会の判断を待って対応を考えるとしている。
(長野放送)