捨てられてしまうミカンの皮や間伐材などからサステナブルなアロマオイルを製作している女性が静岡県島田市にいる。香りを通じて人と人、さらに地域の自然をつなぐ取り組みを取材した。
きっかけは…

間伐材やおがくずといった捨てられてしまう原料から香りを引き出すことにこだわり、島田市でアロマオイルの製造・販売を手がけている希代智子さん。

アロマオイルの製作を始めたきっかけは、地元のスギやヒノキでアロマが作れたらいいなとひらめいたからだという。
人と人のつながりを思い出してくれるアロマに

希代さんに同行して島田市神座地区にあるミカン農園・カネヨ農園を訪ねると、倉庫では約700kg分の売りに出せないミカンの皮むき作業が行われていた。
さっそく希代さんも加わり手作業で皮をむいていく。
皮むきはB級・C級品のミカンをジュースにするための作業だが、希代さんのお目当ては”皮”。

園主の横田川純也さんが「皮のことは気にしたことがなかった」と言うと、希代さんは「私は皮のことばかり気にして」と笑う。
横田川さんによると「陳皮のような形で多少は利用があるが量を使いきれない」とのことで、「しっかり利用してくれる希代さんのような人がいるのは良い循環」と話す。
希代さんが抱くのは「頑張ってミカンを作っている人や林業をしている人など、背景にいる島田の人について伝えたい」との思いだ。

農園でもらったミカンの皮は蒸留所に運び込み、フードプロセッサーで細かく粉砕した後、油胞というアロマの出てくる部分が出やすくなるように細かくする。
それを窯の中に入れ、出てきた蒸気からアロマを抽出するために15分火にかける。

1kgのミカンの皮から抽出できるオイルは10mlほどとごくわずかだが、希代さんは「香りだけ、効能だけではなく人と人のつながりを思い出してくれるアロマにしたい」と1つ1つの作業を丁寧に向き合っている。
アロマを導入した施設では

菱谷真美子さんは希代さんのこうした取り組みに共感した人の1人で、島田駅前で毎年行われているパークイルミネーションの企画と運営を担当。
2024年のパークイルミネーションでは希代さんが調合した香りが装飾の演出に一役買っていて、菱谷さんは「本当に島田の産物から作る合成的ではない香りなので島田の宣伝に大いになるし、とてもすてき」と口にする。

また、島田市内のある歯科医院では希代さんのアロマをクリニックの入口付近に設置していて、受付や診察室で患者に安心感を与えているそうだ。

Dr.Saiデンタルクリニック・蔡豪倫 理事長は「歯科医院で一番怖いのが“におい”。薬剤の独特の“におい”を消したかったというのがアロマを導入した一番のきっかけ」と話す。
本来ならば捨てられてしまう原料に新たな命を…
「私は微力だが、放棄されてしまっている土地や田んぼや畑、そして静岡には大きな財産として茶畑がいっぱいあるが、放棄されてしまった茶畑、パルプ会社が使っていた山、南アルプスの木からもアロマを作り始めている。今は使われていないものもアロマが力になったら」と語る希代さんのアロマ製作は、今後も地域や人とのつながりと共にさらに大きな広がりを見せてくれそうだ。
(テレビ静岡)