高齢者施設に入所する女性が、男性医師らが同じ注射針を再使用したことで後遺障害が出たとして、2月27日、大阪地裁に提訴した。
関西テレビは男性医師を独自取材。背景には何があったのだろうか。
■【動画で見る】『注射針再使用』で感染症か「自力で座ることや意思疎通が困難」後遺障害負った高齢女性が医師ら提訴
■座ることや意思疎通が困難になった高齢女性『注射針再使用による後遺障害』なのか
高齢者施設に入所する女性:ごちそうさまでした。おいしかったです」

カメラに向かって元気よく話す高齢の女性(79)。

しかし、その数カ月後には、ぐったりとした様子でベッドに横たわっていた。以前は問題なくできていた自力で座ることや意思の疎通も困難になった。
数カ月の間になぜこのような事態になってしまったのか?
親族が訴えるのは、『“注射針の再使用”による後遺障害』。

被害訴える女性の息子:(医師は)『コストがかかるから注射針を再利用したんだ』と言っていました。
大阪市内の高齢者施設に入所する女性は、点滴用の注射針を介して栄養管理などの治療を受けていた。しかし、訴状などによると、去年2月と3月に担当の男性医師らが、原則は1度しか使用が許されていない注射針を、女性に再使用し治療を行ったという。
こうした行為は数回にわたり行われ、女性はその後、感染症にかかり緊急入院。集中治療室での治療を受けたというのだ。

なんとか退院したものの、その後、女性の体調は大きく変わってしまったと親族は話す。
被害訴える女性の息子:しっかり自力で起きて、ベットの縁に腰掛けて普通に座っていられることができたのが、全くできなくなってしまった。食事も渡すと、自力で食べることが可能だったが、それもままならない状態です。
女性と親族は2月27日、注射針を再使用されたことで感染症にかかり、後遺障害を負ったなどとして、男性医師らに約1440万円の損害賠償を求めて提訴した。
■訴えられた男性医師「(再使用は)グレーゾーンだと思っている」
なぜ「注射針の再使用」をしたのか。医師が関西テレビの取材に応じた。

(Q.注射針の再使用があったのは事実か)
訴えを起こされた男性医師(50代):事実です。
(Q.原則は都度交換ですよね)
訴えを起こされた男性医師:そうですね、はい。(再使用は)禁止というよりはグレーゾーンだと思っていまして、今回の患者さんは暴れるとか、(針を)引き抜くとかの問題がありまして。

訴えを起こされた男性医師:針がなくなってしまうと、どうしようもない状況になってしまうので、そのときに限ってはきちんと手順を決めて、衛生状態を保てるような形で再利用したというのが、今回の状況になります。
男性医師は、消毒していたので再使用は問題ないとした上で、女性が感染症にかかった原因は、「部屋の衛生状態が劣悪でそれが問題」などと主張。
さらに、「注射針の再使用は事前に施設側に話していて、患者側に伝わっていると思っていた」としている。
■「医療全般に対しての裏切り行為」と女性の息子
しかし、女性の親族は「一切聞いていない」としたうえで…

被害訴える女性の息子:そんなことが本当に起きるわけがないというか、全く頭になかったので、『ありえない』の一言です。恐怖心でいっぱいでした。医療全般に対しての裏切り行為だと私は思っています。そこが本当に許せないです。
双方の主張が大きく食い違う中、裁判所はどのような判断をくだすのでしょうか。
■「注射針の再使用」法律で禁止されているわけではない
今回訴えられた医師は「注射針の再使用」について、「グレーゾーン」と話していたが、違法性はあるのだろうか。

関西テレビ「newsランナー」のコメンテーター・菊地幸夫弁護士は次のように解説した。
菊地幸夫弁護士:例えば再使用を1回することが、直ちに法律に違反して罰金だとかいうことではないんです。ただ例えば何度も繰り返しているとか、衛生状態について消毒をちゃんとしていないといったことがあると、やはり違法性が出てきて、その行為と因果関係がある損害に対して賠償という問題にもなってきます。
注射針の再使用と感染症の因果関係の立証は難しいのだろうか。
菊地幸夫弁護士:なかなか難しいものがあります。医師側は部屋の衛生状態のほうが原因じゃないかと言っている。どちらが正しいのか、その証明はそう簡単な問題ではないと思います。
今後の裁判が注目される。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年2月27日放送)