埼玉・八潮市で道路が陥没し、トラックが転落した事故からまもなく1カ月となる。そうした中、復旧に向けて八潮市が「ふるさと納税」を使った事に波紋が広がっている。

「こんな時のための税金だよね」寄付金募集に疑問の声も

現在も行われている復旧工事だが、埼玉県は2024年度2月の補正予算案に下水道管・道路の復旧工事のため40億円を盛り込んでいる。

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一方、八潮市によると事故発生後、「寄付をしたい」という声が寄せられているという。
これを受け、八潮市は2月13日からふるさと納税で支援金の受け付けを開始。期間は3月31日まで、寄付は2000円からで、返礼品はない。21日午後3時時点で820万円以上の寄付が集まっている。

しかし、ふるさと納税での寄付金募集にSNSでは疑問の声が上がっている。

「生活インフラなのに寄付に頼るの?」
「せっかく税金を払っています、こんな時のための税金だよね」
「納税先を変えているだけなので、その自治体の税収が減り、インフラ整備も遅れる原因になると思う」

八潮市民は「ありがたい気持ち」

八潮市に住む人々にも、寄付金での復旧についての意見を聞いた。

八潮市民A:
自分たちの力だけでは足りないので、いろいろなところから支援いただけるとかなり助かります。早く復旧して、通常通りの生活ができればと思います。

八潮市民B:
こういう状況なので、多くの方に助けられているんだなと。ありがたい気持ちでいっぱいです。国からお金が出ても良いとは思います。

八潮市民C:
市民としては(寄付は)嬉しいです。全国で地面が陥没するのは僕も知っているので、そういった大切なところに、税金を使ってもらえると良いと思います。

実は、災害支援でふるさと納税を活用するケースはこれまでも多くある。

2024年1月の能登半島地震では、2025年2月20日時点で、20億円以上の寄付が集まっている。その他にも、2024年7月に発生した山形豪雨、そして現在受け付けはしていないが、2024年9月に静岡県で大規模落石が発生した際にも、ふるさと納税が活用された。

ただ、自然災害とは違い、今回原因とみられているのは下水道の老朽化だ。上下水道事業に詳しいフラクタジャパンの井原正晶さんに、寄付金に頼らざるを得ない事情について聞いた。

上下水道事業に詳しいフラクタジャパン・井原正晶さん:
維持管理、メンテナンスあるいは新設は、水道料金収入で賄うのが大原則です。20年後には今の水道料金の最低2倍は上げないと、今の水道インフラが維持できないという試算がされています。
今回の場合、これから復旧というのを考えると(新たに下水道管を)建設の方に入る。1つの手段としてふるさと納税を活用するというのは、やり方として新しくてありなのではないかと思います。

国はインフラ老朽化対策の検討進める

今回、ふるさと納税での寄付金募集に批判の声があることについて、八潮市は「厳しいご意見はこれまでに数件ございました。市といたしましては、今後も国、県をはじめとする関係機関と協力しながら一日も早い復旧に努め、安全・安心な生活を取り戻すべく総力を挙げて取り組んでまいります」としている。

そうした中、20日、埼玉県の大野知事と面会した石破首相は「インフラを整備してから50年ぐらいになるので、『一気にこういうことがあちこちで起きたらどうしよう』という心理的な不安は、埼玉県民のみならず多くの国民が持っている」と述べ、インフラ老朽化対策の検討を進め、国土強靭化の新たな計画に盛り込む考えを示した。

今後もどこかで起きる可能性があるインフラ老朽化による事故だが、自治体や国からの手厚い支援も課題となる。
(「イット!」2月21日放送より)

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