猫がなりやすい病気のひとつが腎臓病だ。ひっそりと進行している場合が多く、末期症状の尿毒症になると、命の危険に及ぶことも。
日本獣医生命科学大学の准教授で、獣医師の宮川優一さんは「毎日の生活習慣からなることも考えられます」とも話す。
愛猫とは長く一緒に過ごしたいものだが、飼い主は何ができるのか。宮川さんに、猫の腎臓病が起こる原因や対策について教えてもらった。
尿の通り道が詰まる
まずは、猫の腎臓の役割と悪化する要因を簡単にさらっておきたい。
腎臓は体内でできた老廃物を、尿として体外に出す役割がある。そんな腎臓には「尿細管」という尿の通り道があるが、猫はここが尿路結石や剥がれた細胞などで詰まることがある。

そうすると尿が出にくくなったり、「腎盂」(じんう:尿をためる場所)が炎症を起こしたりして、腎臓に負担をかけてしまうと宮川さんは言う。腎臓や尿細管の状態は、数年かけて悪化していく(慢性)が、急に悪くなる(急性)こともあるそうだ。

「1日に何回も吐いてしまったり、動きに元気がなくなったら腎臓系の病気が進行している証拠です。そのような様子が見られたら、すぐに動物病院で診てもらってください」
食事が“カリカリ”のみで水分不足に
ではどうして、猫は腎臓病になりやすいのか。原因はいくつか考えられるが、そのひとつに「水分不足」があると宮川さんは指摘する。毎日の食事が関係しているというのだ。
猫が1日あたりに必要な水分量は、体重1kg×約50mLが目安だが、猫は種族のルーツが砂漠にあることもあって、水はもともと積極的には飲まないそう。飲まずとも尿を濃くする、つまり「体外へ出ていく水分を減らすこと」で、生きることに問題は起きないという。

ただ、毎日の食事内容によっては話が変わってくる。猫のご飯は「ドライフード」(カリカリの愛称で呼ばれる)が一般的だが、それだけに偏ると水分量が足りず、腎臓病の原因である結石症や膀胱炎のリスクを増やし、腎臓に負担をかけてしまうことがあるというのだ。