『梅の造花』の展示会が大津町の図書館で開催中です。会場では2月15日、制作の体験会があり、町の伝承民芸に触れる人たちでにぎわいました。

(体験会の様子)
「とととと、(花びらを)5枚入れてください」
「分かりました」

美しく、気品漂う『梅の造花』。まるで生きている花のようです。

花やつぼみを紙で造った、この精巧な『梅の造花』は大津町の無形民俗文化財に指定されています。

大津町のおおづ図書館では『早春を彩る大津町伝統民芸梅の造花展』が開催され、2月15日に制作の体験会がありました。(展示会は3月6日まで開催)

(体験会の様子)
「きれい」
「花が正面向いとる。きれいですよね」
「ありがとうございます」

【参加者】
「不器用なのでちょっと手が震えちゃいました。思ったよりすごくきれいにできたので、かわいいなと思って。満足しています」

【肥後大津民芸造花保存会 河北 昭子さん】
「切り揃えるのが大変だろうと思います。うてな(ガク)と花びらを。花びらも一枚一枚、やっぱり何でも正確にしとかんと。(花びらを)5枚入れるのが大変だろうと思います。花びらも大きさを揃えとかんと、うまく入らんしね。芯も『マニラロープ』という荷造りのロープをほぐして造っているんです」

【参加者】
「花びらが6枚になりました。なんだか知らないけど」

【肥後大津民芸造花保存会 大久保 千代美さん】
「たぶん、2枚くっついていたんですよ。これは自然の大サービスかもしれない」
「(一同笑)」

【参加者】
「(梅の造花は)知ってはいたんですけど、造っているところを初めて見たので、すごく緻密にできているのは、すごいなと思いました」

大津町は江戸時代、参勤交代の宿場町として栄えました。

殿様が持っていく江戸への土産に、この『梅の造花』は喜ばれ、大津町の岡田家が代々、秘伝を受け継ぎ、やがて町に広まったといいます。

花びらやつぼみは『つう草紙』という紙で造ります。丸みを豊かに表現でき、コシが強く、年数がたっても形が変わりません。

明治の末、造花の職人が台湾を訪れた際に見つけました。

【肥後大津民芸造花保存会 新開 ツキ子 会長】
「最初は和紙だったみたいですけど、和紙だと、花びらの丸くなっている形が伸びてしまうんですよ」

一時期、『つう草紙』の入手が難しくなり、制作が途絶えましたが、町の有志が復活させました。

そして1972年、肥後大津民芸造花保存会が発足。

会長の新開 ツキ子さんは50年以上、造り続けています。

【肥後大津民芸造花保存会 新開 ツキ子 会長】
「ずっと続けてですね。大津町にお嫁に来てからそうです。もう50年。すごく楽しくてやっています。二つとできないんですよね。何百と造ってきましたけど、同じ物ができない」

地域おこし協力隊の藤 友里江(とう・ゆりえ)さんは去年、大津町に移住し、『梅の造花』を初めて見ました。

その繊細で力強い姿に目を奪われ、保存会に入りました。

【大津町地域おこし協力隊 藤 友里江さん】
「なかなか大津町でも梅の造花という存在を知らない方もいらっしゃるので、こうやって図書館のようないろいろな方が日々活用する所に展示させていただいて、もっと地元の『梅の造花』を知ってもらえたらなと思っています。皆さん、実際造ってみると、『難しかった』という声もあったり、『梅の花自体は知っていても、どうやって造るのか分からない』という方がいらっしゃったので、体験してもらって、『梅の造花』に親しんでもらえたのかなと思います」

【参加者】
「こうですか? こんな感じですか?」

【肥後大津民芸造花保存会 大久保 千代美さん】
「バッチリ!」

【肥後大津民芸造花保存会 新開 ツキ子 会長】
「昔、疫病がはやって、お母さんたちが梅の花を造って、観音様にあげてお参りしたのが起こりみたいなんです。男の方でもすごくお上手な人がいらっしゃいます。ぜひ体験していただきたいです」

「我が子を守ってください」と母たちが祈りながら造り、供えた小さな花。

大津町の人々によって受け継がれ、これからも生き続ける花です。

テレビ熊本
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