無許可で飼育小屋など156の建物を建設していた北海道札幌市の動物園「ノースサファリサッポロ」。2月17日にも提出されるとみられていた建物撤去の計画は出されず、今後の方針をめぐる運営側と札幌市の姿勢も深い溝が見えてきた。
“撤去計画”提出の予定だがー

2月15日のノースサファリサッポロの様子です。園内ではアザラシが泳いでいて、周りには楽しむ客の姿が見られたほか、スノーモービルによるアクティビティも行われていた。
しかし、この場所にあるすべての建物が違法建築物。17日にも撤去計画が提出される予定だったが、午後6時までに出されていない。
「それで20年間やって来られたんだ…」(来園者)
20年前から営業 拡大する施設
札幌市南区にある民間の動物園「ノースサファリサッポロ」。開発が制限される市街化調整区域に飼育小屋などを無許可で建て、20年前から営業を続けてきた。

現在、飼育動物は150種類以上、違法な建物は156棟。札幌市は再三、建物の撤去を指導してきたが応じなかったため、建物を撤去する除却命令、事実上の閉園命令を検討している。

「園内に入ると、まず両生類と爬虫類のゾーン。エリマキトカゲやカメレオンなどが世界各地から集合しています」(2005年のリポート)
これは2005年、オープンした年の園内の様子だ。動物は20種類ほどで、違法建築物は10棟ほどだった。

UHBの取材では、2004年には無許可で川の水を引く水路の工事もしていて、市が指導し工事が取りやめられていたことも新たに分かった。しかしその後、飼育小屋などの規模は拡大していく。
2007年12月には新しいネズミなどの展示館がオープン。開園から3年で動物の種類は3倍以上の70種類になった。
「かるーい」(男の子)

2010年には珍しい動物を販売する店舗。2011年にはカピバラの温泉。2012年にはライオンの赤ちゃんと触れ合えるようになりー。
「ワニがいるから絶対に落ちないで」(当時の飼育員)

ワニがいる池の上を歩くなど、スリルを味わえる動物園として人気を博した。
2018年になると動物は120種を超え、現在は150種類以上。違法建築物も156棟にまで増えた。

そして2024年、アザラシとともに泊まれる宿泊施設を無許可で開設すると、ついに札幌市が強硬手段の検討に入る。
札幌市の見解「移設計画」はー

「(過去に複数回)指導したときは『改善する』という回答をもらっているが、その後に建物が増えているので、ちょっと違うんじゃないのかという認識。(指導後も)確信犯的にやっているので、悪質性の部分は高く感じざるを得ない」(札幌市 開発指導課 坪田修一課長)
建物を撤去する除却命令、事実上の閉園命令が検討される中、運営会社の社長に今後の対応を聞くと…。
取材には応じなかったが、園のホームページでは。

「知識不足や考えの甘さから許可の遅れにつながったことを猛省しています。すべて是正していく方針で、動物の一時的な移動を含めた候補地を検討中。近隣の土地など、許可の取得が可能かも踏まえて検討中」とコメントし、すべての建物を撤去するとした上で、撤去計画を今週にも札幌市に提出する意向を示している。
「新たに設置許可を」vs「現施設の撤去が先」
しかしここから先の対応方針は、札幌市との深い溝が見えてきた。
「こちらの立ち入り禁止のゲートから200メートル先にもゲートがあるんですが、そのゲートの向こうをイベント会場にすると説明したということです」(関根弘貴記者)

ここは運営会社がイベント会場として検討している、動物園から800メートル離れた土地だ。
会社は、移設場所や建て替えのための動物の一時的な移動場所としてこの土地を検討しているとみられるが、ここも市街化調整区域で札幌市の許可が必要。
一方、許可を出す立場の札幌市は「違法な建物が撤去されない限り、新たな建物は許可できない」とし、「撤去が先」との立場を示している。
この状況に専門家は。

「無許可状態があるのに『許可を出してくれ』というのは、基本的にはありえない。行政の手続きとしては、まっとうなことだと思います。違法状態の解消が先決で、その後許可を出すという流れになると思います」(はしもと行政書士事務所 橋本啓太さん)
違法状態が続くノースサファリサッポロ。移設計画が提出されても、先行きは不透明だ。