東京都が実施する様々なサービスや施策、事業を紹介するための広報発表は、年間5000件を超える。
そのなかで、もっとも市民に伝えることができたと評価された作品が、「伝わる広報大賞」グランプリとして小池知事から表彰される。

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今年、そのグランプリの栄誉に輝いたのは、「名もなき家事」普及啓発事業だ。

「名もなき家事」とは?

名もなき家事とは、トイレットペーパーの交換や、風呂にあるボトルの裏のぬめりを掃除するなど、具体的な名前のない細かい家事のことを指す。

小池知事は、「1つ1つは小さいことなんですけれど、積み重なると大きな負担になりますよと。家族で協力しながら取り組んでいこうというものです」と、名もなき家事への理解を求めている。

担当の職員たちが、普及啓発のために考えついたのが、人気格闘漫画の「範馬刃牙」との異色コラボだった。
筋骨隆々の主人公親子が食卓を囲みながら、小さな家事について決め顔で語る。何度見返しても笑わずにはいられないコミカルさがある。

広告宣伝費換算で約5億円にのぼる効果

動画は、公開約1か月で55万PV。テレビやラジオ、新聞などでたびたび紹介され広告宣伝費換算で約5億円にのぼる効果を達成した。

今回の成功には地道な努力と作品への愛が関係していた。

格闘漫画「範馬刃牙」とのコラボのきっかけは、男性にも名もなき家事を知ってほしいとの願いが込められていた。

名もなき家事のキャッチコピーを都民に募集したところ、2000件を上回る応募が集まったが、その大半が女性からのものだった。男性にも知ってもらいたい、との考えから、男性に人気の漫画とのコラボを思い付き、格闘漫画「範馬刃牙」の起用が決まった。

しかし、担当する全員が読んだことがないため、その日以来、空いた時間に漫画を読み続け、全巻を読破。どこのシーンを使うか、キャラクターや作品の世界観を壊さないようにセリフを考えるなどした。

池野谷晃子・女性活躍推進担当課長「この漫画は、親と子の物語を大事にしている作品なんだなと感じたのでその点を踏まえてセリフを考えました。」

そうして生まれたストーリーの1つが、父・勇次郎が刃牙に対して、ゴミ捨てについて指導するシーン。ゴミ収集日を意識すること、ゴミを集めること、ゴミ袋をセットすることなど、細かい名もなき家事に気づくことの大切さを息子に説く。

動画は3月末まで公開されている。

https://www.namonakikaji-kekka.metro.tokyo.lg.jp/ 

大塚隆広
大塚隆広

フジテレビ報道局社会部
1995年フジテレビ入社。カメラマン、社会部記者として都庁を2年、国土交通省を計8年間担当。ベルリン支局長、国際取材部デスクなどを歴任。
ドキュメントシリーズ『環境クライシス』を企画・プロデュースも継続。第1弾の2017年「環境クライシス〜沈みゆく大陸の環境難民〜」は同年のCOP23(ドイツ・ボン)で上映。2022年には「第64次 南極地域観測隊」に同行し南極大陸に132日間滞在し取材を行う。