12日、コメ高騰の続く中で江藤農水相が備蓄米放出に言及した。
最大5年保管される備蓄米は、本来災害時用だが、今回は流通円滑化が目的だという。
専門家は、転売業者の買い占めが価格上昇を招き、放出で値下がりを促す可能性があると指摘する。

備蓄米放出へ…コメの価格値下がりなるか

江藤農水相が、会見で「新米が出回れば落ち着く」と言ってから半年、今もコメの価格は高止まりのままだ。
政府はようやく、保有する備蓄米の放出に向けて動き出した。

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12日のテーマは、「備蓄米放出へ!でも5年前のコメの味って?ソレってどうなの」だ。

12日公開されたのは、政府が管理する備蓄米の倉庫だ。

東中健キャスター:
備蓄米が保管されている倉庫ですが、4~5メートルはありますかね。うずたかく米袋が積まれています。この倉庫には、約2万トンのコメが備蓄されているということです。

政府は、備蓄米として毎年21万トンほど買い入れ、最大5年間保管し、合計100万トンを目安に備蓄している。倉庫ではコメ自体の温度が15度以下に保たれ、おいしさが損なわれないよう低温で保管されていた。

備蓄米を管理する倉庫会社の社長:
入り口にネズミ返しやネズミのトラップを並べて、ネズミが入ってこないように対策しています。

備蓄米は、これまで深刻な不作や災害時などに限って市場に放出されてきた。
しかし今もコメの価格高騰が続く中、政府は初めて「流通の円滑化」を目的とした備蓄米の放出に向けて動き出している。

江藤農水相は12日、「14日に公表を予定しています。対象者・数量・方法について、その時に発表します」と会見で語った。

放出されれば、スーパーなどに並ぶことになる備蓄米だが、気になるのが味だ。
数年たった古いコメの味について、「イット!」取材班は、茨城・古河市にあるコメ問屋に向かった。

ここでは、収穫から1年がたったものから、10年以上が経過した「古米」を保管している。
古いコメの味はどうなのか。

五十畑商店・五十畑秀俊さん:
10年たっても、お米として問題なく食べられると思います。

徐々に黄色く変色する古米
徐々に黄色く変色する古米

新米と見比べると、古米は時がたつにつれて、徐々に黄色く変色していくのが分かる。
新米と古米の味を食べ比べてみた。

まず、10年ものを食べた。

取材ディレクター:
鼻につーんとするにおいがします。かんでいくうちに、酸っぱいような苦いような独特の味がします。

見た目は新米とほとんど変わらない10年モノには、独特なにおいがあった。
次に4年ものを食べてみた。

取材ディレクター:
お米のいい香りは少ないですね。お米の味は感じられて、十分おいしく食べられると思います。

店主によると、古米を炊くときはお酒を入れるとにおいが消えるという。

さらに古米は、東京・目黒区にある「鮨 尚充」でも使われていた。
中国からの観光客に味を聞いた。

中国からの客:
ほんとうにおいしかった。スーパーおいしい!

この店のシャリは、新米と古米をブレンドしたものだ。
店主に、古米を使う理由を聞いた。

「鮨 尚充」安田尚充代表
古米は握りやすいです。水分量が少ないので。あとは口に入ったときにほぐれやすいです。さっぱりするので、魚の味が引き立つ感じですね。

さらに、冒頭に出てきたコメ問屋の方に聞いた。

五十畑商店・五十畑秀俊さん:
古米は水分が少ないので、リゾットや雑炊、チャーハンでもいいと思います。

転売業者が買い取り…買取在庫抱え流通が滞る

青井実キャスター:
ーーパックン、知ってましたか?

スペシャルキャスター パトリック・ハーランさん(パックン):
知りませんでした。実は日本に来るまで、新米・古米の違いに気づいたことがなかったし、意識したこともなかったです。アメリカで、お米の収穫の時期も聞いたことないんです。でも、古米のポテンシャルを知ったので、手に入れるのが逆に楽しみになりました。

専門家によると、主なコメの流通ルートは、生産者から農協などが買い取り、卸売業者を通じてスーパーや飲食店などに渡っている。
しかし最近は、生産者から転売業者が買い取り、在庫を抱えるため、コメの流通が滞っているという。

農業の流通にくわしい・松平尚也氏:
新米が下がらない理由は、利ざやを狙って投機的に買い占めている業者がいると言えます。コメの流通量が増えると、(高いうちに)売りに出す業者が出てきます。備蓄米の放出が価格の安定につながる可能性もあります。

ようやく目前に迫った備蓄米の放出に、コメの価格が下がることを期待したい。
(「イット!」2月12日放送より)

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