「日本で一番、若者を応援する街」に向けて全国で初めて設置された福岡・北九州市の「Z世代課」。都市のさらなる成長へと本格始動する。中心となって担うのは1995年以降に生まれた、いわゆる「Z世代」の若者たちだ。

職員の16人中14人がZ世代

全国で初めて北九州市が立ち上げたZ世代課。職員は16人中14人がZ世代で、課長も含めて平均年齢は29歳。若手職員たちが掲げるのは、日本一若者を応援する街の実現だ。

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若者を支援する政策の推進を目的に日本初のZ世代課が設置されたのは2024年4月。北九州市の武内和久市長も「Z世代の若い人たちが、しっかりとこの街、北九州市の未来をつくっていく、明るくしていく、力を合わせて新しい時代、新しい歴史を作る」と大きな期待を寄せている。

市は特に、15歳から29歳までを対象に行動の傾向やニーズを把握し、若者が挑戦できる街、住みたくなる街の実現を後押しするという。

「“エモい”スポット」で発信

Z世代課が力を入れている取り組みのひとつが、市内7つの区役所が若者の力とアイデアでそれぞれの地域の活性化を目指す「区役所創造プロジェクト」。このうち八幡西区役所が進めているのは、地域の交通を支える筑豊電気鉄道、通称「ちくてつ」沿線を盛り上げるプロジェクトだ。

心を動かされるエモーショナルを意味する「エモいスポット」や写真映えを意味する「映え」を若い視点で発掘しSNSに投稿。

Z世代課の柏木佳奈子課長は「沿線の新しい魅力を知って頂きたいというのはもちろんですが、若い人の力によって地域が、もっと盛り上がっていることを市民の皆さんに実感してもらいたい」と話す。

プロジェクトの実働部隊ももちろんZ世代だ。この日は、八幡西区の産業医科大学1年の3人が、ちくてつ穴生駅周辺を巡る。早速、スマートフォンで撮影開始。撮っていたのは「道順です」(小浦博春さん)、「見てくれる人が行きやすいように撮るようにしています」(岩嵜菜々花さん)とのことだった。

魅力の八幡西区「ちくてつ」沿線

若い視点の3人がピックアップしたのは、焼き芋カフェ「イモミル」。山口県産の「紅はるか」と「安納芋」を使ったスイーツや福岡・うきは市の牧場から取り寄せたソフトクリーム。そしてフルーツたっぷりの「アサイーボウル」がZ世代に大人気だという。

「映え」写真の撮影開始
「映え」写真の撮影開始

続いて訪れたのは生ハムを量り売りしている「デリカコッタ」。店内には国内外から取り寄せたハムや手作りの総菜が並ぶ。知る人ぞ知る地域のディープスポットで、県外から通うファンもいるそうだ。

サポートする八幡西区役所の後藤彩さんは「感覚が若いな、新しいなと思うことがあって、ちくてつ沿線に来たことがない人も来てもらって盛り上がって欲しい」と若者ならではの視点に驚きや発見があると話す。

取材を終えると動画の編集に取りかかる。スマートフォンやSNSの扱いは「お手のもの」のZ世代。1時間ほどで30秒の動画が完成した。店の雰囲気に合わせたテロップや音楽も付けて、Z世代ならではの感性で筑鉄沿線の魅力をアピールする。

60年ぶりに転入者が転出者上回る

「これからも若者が『この街だからチャレンジできた』『この街だからこそできた』という雰囲気をどんどんと作っていきたい」(Z世代課・柏木佳奈子課長)と期待が高まる区役所創造プロジェクトは、八幡西区以外でも取り組みが進められている。小倉北区では2024年11月、小倉城の石垣をスクリーンにして「太鼓の達人」の熱いバトルが繰り広げられた。挑戦したのはZ世代の高校生で、会場は熱気に包まれた。

小倉城の石垣をスクリーンに「太鼓の達人」
小倉城の石垣をスクリーンに「太鼓の達人」

またイノシシなどによる農作物や生活環境への被害が深刻化する八幡東区では、九州国際大学の学生を中心とするZ世代が自ら猟友会に弟子入りし、イノシシの捕獲にチャレンジするなど若者が起点となった取り組みが広がっている。

2024年、60年ぶりに転入者が転出者を上回り人口が社会増に転じた北九州市。若者が住みたくなる街を目指すZ世代課の取り組みが、新たな成長の鍵を握っているのかもしれない。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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