2025年1月に長崎県唯一の暴走族「天煌」が逮捕・送検され、解散に追い込まれた。長崎県警察によると、把握している暴走族はこれで“壊滅”させたとしているが、その後も夜の長崎市街地や住宅街近くでは、爆音を響かせる暴走車が後を絶たない。壊滅したはずなのに、なぜ?そこには「令和の暴走族」の取り締まりの難しさがあった。
解散したはず…夜に響くバイクの爆音
「悪いことをするのがかっこいい」と暴走の動機を語っていたのは暴走族「天煌」の少年たち。逮捕された当時16歳から17歳の配管工や高校生などは、スクーターなどでの暴走行為を繰り返していて、長崎県警察は防犯カメラなどから人物を特定し逮捕に至った。

今回の逮捕で長崎県警察は少年らに「誓約書」を提出させ、県内のすべての暴走族は解散したと思われていた。が、夜遅くに爆音を鳴らし長崎市街地などを走る数台のバイク。解散したはずなのになぜ?と不思議に思った人も少なくないだろう。
“令和の暴走族”は認知が難しい
そもそも暴走族とは暴走行為を繰り返し行う集団で、組織的にチームを作り暴走行為をすると警察は「暴走族」と認知するという。
長崎県警察による暴走族の認知件数は2022年は0件、2021年は2件、2020年は0件とかなり少ない。そこには「令和の暴走族」の特徴があるからだ。

警察関係者への取材によると、最近ではSNSで暴走者を募るパターンが多いという。顔も名前も知らない、つながりがない人たちがSNSを通して集まり、いつ、どこで暴走するかなどの内容もその場で共有される。暴走の活動内容を投稿しているチームもいるようだ。

その日によって、暴走する人物や人数が変わるため、警察はその実態を把握できず、「暴走族」として認知するのは難しいという。街中を爆音でバイクを数台で走らせているのは、あくまで「暴走常習者」として認知している。
少年による犯罪は増加 巧妙化も…
1000人規模の検挙者を出したこともある1970年代から1980年代は暴走族の全盛期だった。当時はもちろんスマートフォンやSNSもない時代。暴走族は人づてに仲間を増やし、そこにはほとんどの場合、組織的な“リーダー”もいた。また走る前には全員で集まって「作戦会議」なるものも行い、集会を開いていたため実態が目に見える形だった。

それがいまや暴走族も”SNS型”へ。そこにはグループなど、継続した組織としての実態はないに等しい。実態を把握するのが難しいとされる「令和の暴走族」。しかし暴走族という形であれ、SNS型の単独暴走者であれ、市民にとっては迷惑なことには変わりない。一日でも早い解決を望むばかりだ。

長崎県警察によると、半世紀以上にわたって警察と対立してきた暴走族はほぼ壊滅状態と言ってもいいが、一方で2023年の1年間に刑法犯罪で県内で検挙・補導された20歳未満の少年は県内で191人と前の年の約1.5倍となっていて、SNSを使った少年の犯罪は近年増加。さらに犯罪の「巧妙化」や「低年齢化」も問題となっている。
少年たちの犯罪は時代ともに形態を変えながら、新たな問題として社会に問いかけている。
(テレビ長崎)